大きな公園の隣に住んでいる。


川が流れ、珍しい鳥がやってくる。


田舎育ちの私から見ると

歪に切り取られた自然…という名を借りた

《ツクリモノ》

に感じてしまうのだが

東京の人達からすると、憩いの場なのだそうだ。


けれど…実は

みんな《ツクリモノ》だと思いながら

ココにいるのかもしれない。



水辺が側にないと苦しい。

海と川がある街に長く暮らした私にとって

今住んでいる場所は、とても乾いた場所な気がして、息苦しい。


縁とは不思議なモノで、若い頃に、元交際相手に拉致られて

置き去りにされた場所も、この公園だった。

相手が戻って来る前に、バスが私を迎えに来てくれるのを必死で願っていた思い出がある。

あの時、どこか分かっていなかったので、暮らしてから数年経ってから気付いた。

あの時の場所だった…って。

木樹が呼んでくれたのかもしれない。



去年の夏は、元同僚の若い男の子と、よく語らった。

彼は才能あるジュエリーデザイナーで、元の道に戻ったのだが。

芸術家である彼の言葉は、美しかった。

彼の言葉にとても護られた。


彼が欠かさずつけている日記帳。

そこに綴られる青いインク。

単色であるのに螺鈿の輝きを秘めていた。

何故だろう。

私には重なり合う色が見えた気がした。


夜の公園は、黒のグラデーション。


私の脳の中の映像と、とても近い。

残念ながら私の脳内には、色彩がない。

思い出す記憶

夢を描く妄想

全て、モノクロームな世界でしかない。


そういう人間には色彩センスが無いらしい。

とても分かる気がする。


脳の中に思い描いたモノの色を聞かれれば、何色か言葉で答えられるのだが

私の頭の中で再生される映像は、白黒。


むしろ、黒が多い。


いつかその黒に、全て飲み込まれる気もする。

夜の公園は、そんな私の頭の中の世界が具現化された様だ。



お酒を飲んでは

トイレに付き合わせたのが、懐かしい。

待ってくれているのだが

大抵彼は、木にしがみついていた。


もっともっと話したかった。


今でも思う。

もっと語り合いたい。


きっと、彼は

年齢を重ねれば重なるほど、ステキになると思う。

隣で彼を愛してくれる彼女のチカラもあって。

もっと色気が出ると思う。

楽しみだな。



少し離れた場所に行くけれど。

重ねた夜の公園は、決して忘れない。



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