2024.9.01 (京都新聞) - Yahoo!ニュース
国民に便利な健康保険証を、政府は 3カ月後に 本気で廃止するつもりなのだろうか。
マイナンバーカードに 保険証機能を持たせた「マイナ保険証」の利用率は、全国で 1割程度に
とどまっている。個人情報の扱いなど トラブルの多発もあり、国民の信頼を得られていない証左
だろう。
だが、国は 12月2日に保険証の新規発行を停止し、実質的に廃止する方針を押し通そうとしている。このままでは、医療現場の混乱や受診への影響が生じかねない。 改めて、マイナ保険証の一本化は
延期することを求めたい。
巨費を投じたポイント付与など 政府を挙げての普及活動にもかかわらず、マイナカードの保有は
7割台にとどまる。 昨年、別人情報をひも付けるなどのミスが 次々と発覚し、制度への信用を失った
ことは 大きく影響していよう。
現場の自治体負担を度外視した 政府の拙速な導入が、根本原因だったとの見方は強い。
だが、十分な調査や反省もないまま、唐突に マイナ保険証への一元化も打ち出した。医療を人質に
「任意」であるカード取得を 事実上強制する手法だ。
主導した河野太郎デジタル相は、問題を矮小化するような説明を繰り返した上、マイナ保険証を
利用できない医療機関があれば「通報」するよう促す文書を 自民党国会議員に配るなど、強引さが
目に余る。
厚生労働省も、マイナ保険証の利用者を増やした医療機関に対する支援金を倍増させた。
来月からは、利用率に応じた診療報酬の加算まで打ち出す。
会計検査院の調査では、多くの自治体が マイナンバーで 情報照会できるシステムを十分に活用
していなかった。 国は 利点を強調するが、扱う現場の対応は追いついてない。
河野氏は もとより、近づく自民党総裁選に立つ候補は、健保証廃止を含むマイナ施策への考えを
明確にすべきだ。年内にも取りざたされる衆院の解散・総選挙でも 論点の一つとなろう。
政府は 12月2日以降も 最長1年間は現行の保険証を有効とし、カードを持たない人は 5年間有効
の「資格確認証」を発行するとしている。将来的には、マイナ保険証機能を スマホに入れられる
ようにするともいう。
だが、高齢者ら「デジタル弱者」が取り残されたり、個人の医療情報が流出したりといった懸念は
つきまとう。 偽造マイナンバーカードで 他人になりすまして スマホを乗っ取り、高級品などが購入
される詐欺被害も表面化した。
無駄な検査や投薬を防ぐといったマイナ保険証の目的に、国民の理解が広がる。自治体、病院など
関係機関の体制が整って 利便性や安全性が高まる。そうした環境を整える正攻法でこそ 普及が進む
のではないか。
2024年4月25日 東京新聞
武見敬三厚生労働相が、マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」
の利用率に関係なく、閣議決定通り、現行の健康保険証を 12月に廃止すると言明した。
マイナ保険証の利用率は 3月も 5・47%と低迷している。
背景には マイナカードへの国民の疑問や不安があり、誠実に対応しないまま 現行保険証を
廃止すれば、混乱は避けられまい。 政府には 廃止方針の撤回を求めたい。
政府は、マイナ保険証の利用率低迷を「 現行保険証を前提とした(医療機関の)対応 」(武見氏)
のためと分析。 5~7月を利用促進集中取り組み月間に定め、利用者を増やした病院に最大20万円、
診療所や薬局にも 同じく10万円の一時金を支給するという。
河野太郎デジタル相も 自民党の国会議員に、支援者らが マイナ保険証の使えない医療機関を
見つけた際、政府窓口へ連絡するよう求める文書を配った。
しかし、利用率低迷の原因は 不安を顧みずマイナカードの普及を強引に進める政府にある。
医療機関への責任転嫁は 筋違いだ。
昨年、約1万6千件もの「ひも付け」ミス や 負担割合の誤表示が発覚したが、政府は
「不安払拭のための措置」を講じることを前提に 現行保険証の廃止を決めた。
しかし、システムの不具合は いまだ解消されていない。千葉県保険医協会は 昨年12月の調査に
応じた医療機関のうち 53%でトラブルがあったと発表。沖縄県や島根県の国民健康保険組合も 2月、
マイナポータルで 医療費情報が閲覧できないトラブルを公表した。
現行保険証を維持すれば、暗証番号のないマイナ保険証や保険証に代わる資格確認書も不要だ。
政府が 現行保険証の廃止に固執する背景には、医療分野の個人情報を集積し、活用したいという
経済界の要請があるが、人命に優先する 経済政策などあり得ない。
河野氏らは 保険証を「人質」に任意であるマイナカード取得を 事実上強制。「密告」を奨励して
医療機関に圧力を強めるが、こうした手法こそが マイナカード不信を増幅させたと気付くべきだ。