貿易赤字解消のため、原発再稼働を 神田財務官の私的懇談会が報告書 

                                                     2024/7/2        毎日新聞

       財務省の神田真人財務官は 2日、日本経済の課題を巡る 私的懇談会の報告書を発表した。

    輸出産業の国際競争力低下や、新しい少額投資非課税制度(NISA)の影響もあって 

    個人金融資産の海外流出が増加している現状を示した上で、こうした状況を打破するため、

    産業の新陳代謝や成長分野への労働移動の円滑化を提言した。

 

     報告書は「 国際収支から見た日本経済の課題と処方箋 」と題した懇談会の議論をまとめた。

    ここ数年の円安進行は 日米の金利差のほかに、海外との資金のやり取りを示す 国際収支の

    構造変化が背景にあるため、学者やエコノミスト20人を集めて議論してきた。

 

       2023年度の国際収支(速報)は 経常収支が 25兆3390億円の黒字となり、過去最大だった。

     ただし、内訳を見ると、製品の輸出入の収支を表す貿易収支と知的財産権などのサービス収支

     の合計は 6兆230億円の赤字だった。

 

      報告書は、自動車産業に匹敵する貿易黒字の担い手が不在の中、さらなる発展が見込まれる

     IT分野で海外プラットフォーマーに頼り、利用料の支払いで「デジタル赤字」が拡大している

  と指摘。日本企業が 海外での事業や投資で得た利益の多くは 国内にもたらされることなく

      海外で再投資されており、国内投資が低迷する現状を問題視した。

 

         エネルギーの輸入依存も 貿易赤字の一因になっており、報告書は「 安全確保を大前提に

      原発の再稼働を進めることが喫緊の課題 」と踏み込んだ。

 

 

神田財務官、金利一段高で国債格付け動向に注意-私的懇談会で報告書

            2024年7月2日    Bloomberg

  神田真人財務官は2日、自身の私的懇談会での議論を取りまとめた。報告書の公表に際し、

   報道各社の取材に対して、今後、長期金利が一段と上昇する可能性があるとし、日本国債

   について「 気をつけなければいけないのは格付けだ 」との見解を示した。

  神田財務官は、財政危機に直面した ギリシャやポルトガルを例に挙げ、「 いったん格下げが

   始まるとものすごく動きが速い 」と指摘。ひとたび変調をきたせば 投資適格を失う動きに

   拍車がかかると語った。

  報告書では、日本国債は「 直ちに格下げが生じる状況にはないと思われる 」と記している。

   ただ、こうした状況に備えて 財政を強靭化する必要性を訴えた。

 

  赤字基調の貿易収支など日本経済が抱える課題に対する処方箋として、生産性の向上、

   人的資本への投資、国内投資の促進、財政健全化の四つの柱を指摘。日本が 化石燃料依存から

   脱却するための技術活用では、「 再エネの拡大や安全確保を大前提にした原発の再稼働を進める

   ことが喫緊の課題 」とした。

  懇談会は 神田財務官が3月に立ち上げたもので、大学教授や金融機関の専門家20人で構成

   貿易収支の基調変化や海外ネットサービスの利用増に伴う「デジタル赤字」の拡大などを踏まえ、

   課題克服に向けた政策の在り方を議論してきた。現職の財務官が懇談会を主催して政策の改善策

   を示すのは珍しい。

  為替相場では 円安傾向が続いているが、神田財務官は 今回の議論は為替とは切り離したものだ

   とした上で、足元の動きは「 投機で動いている部分が大きい 」との認識を示した。