2023年度の倒産、9年ぶり高水準 増加率は過去30年で最も高い30.6%
4月8日 全国企業倒産集計2023年度報(帝国データバンク) - Yahoo!ニュース
「ゾンビ企業」淘汰進み、2024年度は 1万件突破も視野
2023年度の倒産件数は 8881件(前年度6799件、30.6%増)と、前年度から2082件増えた。
2年連続で 前年度を上回り、2014年度(9044件)に迫る 9年ぶりの高水準となった。
前年度からの増加率が 30.6%となり、過去30年で最も高かった。
負債総額は 2兆4344億7400万円(前年度2兆3385億9100万円、4.1%増)だった。
パナソニック液晶ディスプレイ㈱ や ユニゾホールディングス㈱など、負債100億円以上の大型倒産
が 19件(同12件)発生し、10年ぶりに2年連続で2兆円を超えた。
「実抜計画」の策定猶予が終了、リスケ実行率低下の可能性
政府は 3月8日、「 再生支援の総合的対策 」を発表した。 4月に到来する民間ゼロゼロ融資の
返済開始の最後のピークに万全を期すべく、コロナ対策の各種資金繰り支援制度を6月末まで延長する
とともに、官民金融機関等による再生支援を強化する。
7月以降は “コロナ前の支援水準” に戻していき、事業者の経営改善・再生支援に支援の軸足を
移す方針を明らかにした。
数ある施策の中で注目されるのが、金融機関に対して求めた取引先企業における「 実現可能性の
高い抜本的な経営再建計画(実抜計画) 」の策定促進だ。本来、金融機関は 返済条件を変更
(リスケジュール、以下リスケ)した企業への貸出金を不良債権に分類しないためには 実抜計画の
策定が必須だが、コロナ禍で事実上猶予されていた。
ポストコロナ局面の2024年度からは 原則、計画策定が必要となる。これにより、金融機関による
「企業選別」の動きが進む可能性がある。現状、実行率99%のリスケのハードルが一段上がることで、
今後は 金融機関がリスケに応じる比率が低下し、事業継続が難しくなる企業がさらに増えるおそれが
ある。
当面は「短期プライムレート」引き上げの動きを注視
日本銀行は 3月19日、マイナス金利政策を含めた 大規模な金融緩和の解除を決めた。賃金と物価
の好循環の強まりが確認されたとして、17年ぶりの利上げに踏み切った。
植田総裁は記者会見で「 2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至ったと
判断した 」と説明した。 今のところ、今回の政策転換が倒産件数に影響を及ぼすのは もう少し先に
なりそうだ。住宅ローンの変動型金利 や 企業向け貸出金利に影響を与える「短期プライムレート」
が据え置かれているためである。当面は、各金融機関が この短プラの引き上げにいつ動くのか注視
していきたい。
コロナ禍に実施されたゼロゼロ融資では、都道府県の利子補給により 当初3年間は実質無利子
だったものの、多くの借り入れ企業で 3年が経過し、すでに 利払いはスタートしている。
今回のマイナス金利解除を受けて 借入金利が上昇すれば、企業にとっては 借り換えのタイミングなど
で 支払い利息がさらに上乗せされる。
ゼロゼロ融資で膨らんだ過剰債務を抱える中小企業には死活問題となりかねない。
「ゾンビ企業」淘汰進み、2024年度は 1万件突破も視野
こうした影響を最も受けるのは、低金利下におけるリスケ等の支援策を受けながらも 収益改善が
進まず、本業の利益で借入金の利払いができない状態に陥っている「ゾンビ企業」だろう。
帝国データバンクの推計では 2022年度決算時点で 25万1000社にのぼるが、物価高や人手不足、
賃上げ等にともなうコスト増もあり、この1年でさらに増えた可能性が高い。
金融政策が正常化に向かう中で、金融機関によるリスケも、金融円滑化法の施行(2009年)以前
とはいかないまでも、当たり前に受けられるものではなくなり “正常化”へ少しずつ向かう過程で、
ゾンビ企業の淘汰が進むはずだ。
「淘汰」というと ネガティブな響きはあるが、産業の「新陳代謝」を進めるうえで必要なプロセス
ともいえる。むしろ、生産性の低いビジネスモデルや企業を温存させることによる弊害の方が問題
だろう。幸い、過去の倒産増加局面とは異なり、雇用関連の指標は そこまで悪化していない。
2024年度の倒産件数は 1万件突破も視野に、引き続き増加が見込まれるが、今すぐ 経済危機に
つながる状況にはない。 多くの企業が 人手不足の解消に頭を悩ませる中で、事業や雇用を別会社に
承継するスキームも目立つ。今こそ「 倒産=すべて悪 」という固定観念から脱し、新陳代謝を促す
ツールやバロメーターの側面もあると、認識を改めるべき時かもしれない。