「核のごみ」の処分地選定 国が玄海町に「文献調査」申し入れ

                   2024年05月01日   NHK

 

 原子力発電で出る いわゆる「核のごみ」の処分地選定に向けて、経済産業省は、1日、

佐賀県玄海町に対し、第1段階にあたる「文献調査」の実施を申し入れました。

   高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」は、長期間強い放射線を出し続けることから、

地下300メートルより深くに埋めて 最終処分することが法律で決まっていて、処分地の選定に

向けた調査は3段階で行われます。

   佐賀県の玄海町では、4月、町内の3つの団体から第1段階の「文献調査」受け入れを求める

請願が 町議会に提出され、審議の結果、賛成多数で採択されました。
    こうした状況を踏まえ、1日午後、経済産業省の 松山泰浩首席最終処分政策統括調整官

玄海町役場を訪れて 脇山伸太郎町長と面会し、「文献調査」の実施を申し入れる齋藤経済産業大臣

からの文書を手渡しました。

   調査は、自治体が 公募に応じるか国の申し入れを受け入れることで実施が決まることになっていて、

国が申し入れを行うのは、4年前に調査を受け入れた 北海道神恵内村に続き 2例目です。
   申し入れを受けた脇山町長は、「 議会の請願採択は重たいものと感じている。今後 検討して対応

していきたい 」と述べました。

   全国では、4年前から、北海道の神恵内村と寿都町を対象に初めての「文献調査」が行われて

きましたが、その後は 調査を受け入れる自治体が現れず、国は 調査地点の拡大を目指しています。
玄海町には 九州電力の玄海原発が立地していて、原発の立地自治体で調査が行われれば初めてです。

【近隣の唐津市などの受け入れ反対の人たちが 1日も抗議活動】
   玄海町役場では連日、「文献調査」の受け入れに反対する人たちが抗議活動を行っていて、

1日も 近隣の唐津市や福岡県糸島市などの住民20人余りが集まり「 危険なものを田舎に

押し付けるな 」などと訴えました。

   抗議活動に参加した唐津市の男性は「 原発立地自治体に 日本全国から核のごみを持ち込み

地下に埋めるなんて 考えられないし、町民に意向を聞く時間が 全く与えられていない 」

と話していました。
    集まった人たちは、1日、行われた国による申し入れの会場に入ることを求めましたが、

認められず、町の職員に抗議する場面もありました。

【玄海町の脇山町長「申し入れ大事に」】
    国から「文献調査」の申し入れを受けたあと、玄海町の脇山町長は「 国から申し入れにきている

ので大事にしなければならない 」と述べました。
   その上で、調査を受け入れるかどうか判断する時期については「 本会議で採択され、議会が決めた

中で あまり先延ばしにするのは失礼だろうと考えていて 5月中には判断したい 」と述べ、改めて

今月中に態度を明らかにする考えを示しました。

【経産省の統括調整官「地域の理解なしには進められない」】
   玄海町への文献調査を申し入れのあと、経済産業省の松山泰浩首席最終処分政策統括調整官は、

「 調査の取り組みは 地域の理解なしには進められないものだ。玄海町では、地域で議論が進んでいて、

議会で請願が採択されたことなども踏まえ、できる限り多くの地域で 調査を実施したいという国の

思いに、理解と協力を求めるべきだと判断した 」と述べました。

   そのうえで、原発の立地自治体である玄海町で「文献調査」の受け入れが議論されていること

ついては、「 立地地域でこうした議論が行われたことは敬意と感謝を申し上げたいが、最終処分

問題は特定の地域ではなく、国全体で考えていくべき課題だ。より多くの地域で関心を持って

もらえるよう、引き続き全力で取り組む 」と話しました。

   また、申し入れのあと非公開で行った会談で、脇山町長に対し、齋藤経済産業大臣と面会して

直接考えを伝えることを持ちかけた ということで、脇山町長も応じる考えを示したことから

今後、面会の日程を調整する考えを示しました。