島根原発と地震 避難計画の実効性あるのか

             2月20日   中国新聞デジタル

 

 8月に予定される中国電力島根原発(松江市鹿島町)2号機の再稼働まで、半年となった。

2012年の運転停止以来、12年ぶりの運転再開となる。

 だが、このまま再稼働していいのだろうか。元日に起きた能登半島地震では、北陸電力志賀原発

(石川県志賀町)で 外部電源を一部喪失するなどトラブルが相次いだ。運転停止中で 放射性物質を

放出するような重大事故には至らなかったが、家屋の倒壊や道路の寸断などで、住民の避難計画が

「絵に描いた餅」であることが浮き彫りになった。

 

 島根半島に立地する島根原発の周辺住民にとって人ごとではない。国と立地自治体は 能登で起きた

ことを 地元に当てはめ、万全の対策を取る必要がある。とりわけ 避難計画の見直しは絶対だ。

 原子力規制委員会が 東京電力福島第1原発事故を受け、重大事故が起きた場合の 住民避難や

被曝防護策を 原子力災害対策指針にまとめている。それによると 放射性物質が放出された場合、

5キロ圏内の住民は すぐに避難。5~30キロ圏内は いったん屋内退避し、放射線量を見極めながら

移動する段階的避難を原則とする。

 

 ところが 能登半島地震では 石川県が定める避難ルートの大半が通行止めになり、孤立集落が

相次いだ。多くの住宅が倒れ、屋内退避もままならない状況に。原発事故が重なれば到底、住民を

守れまい。

 島根半島も、道路事情は似通う。島根原発2号機の再稼働に向けて 国と自治体がまとめた避難計画

では、住民が マイカーや専用バスで 県内外の避難先へ逃げる手順を決めてはいるが、実効性を

疑う声は 住民の間でかねてあった。

 地震などで 避難ルートが断たれた場合は、道路管理者が復旧作業を速やかに進め、難しければ

自衛隊などに支援を要請する運びだ。しかし、能登では 現場に重機が入れない状況が何日も続いた。

海路や空路も 津波や放射線量を警戒しながら どれだけ柔軟に対応できるのか、見通せない。

 

 島根原発は 全国で唯一、県庁所在地にあり、30キロ圏内に 約45万人が住む。混乱の中で住民が

計画通り動けるとは思えない。寝たきりの高齢者や障害者ら 1人で避難できない要支援者への対応

も十分に示されているとは言い難い。

 避難の受け入れ先となる 広島や山口などの自治体の備えは万全だろうか。能登では、長期に及ぶ

広域避難の困難さも露呈した。

 

 規制委は、能登半島地震後、原子力災害対策指針を見直す議論を始めた。来年3月までに結果を

得るという。ただ 段階的避難の原則は変えず、屋内退避の期間や避難の判断基準などに論点は

とどまる見通しだ。そんな問題意識で 大丈夫なのか。

 島根県や松江市は 国の対応を待つことなく、地域防災計画の見直しに着手することが求められよう。

避難計画の実効性が 確認されるまで、再稼働をすべきではない。