Feb. 18, 2024,
Rebecca Rommen [原文] Business Insider Japan
・チェルノブイリのオオカミは、かなりの放射線にさらされているにもかかわらず、
がんに対する抵抗力を高めているようだ。
・オオカミは、人間にとっての法定安全基準の6倍以上の放射線を浴びている。
・原発事故から40年近くが経ち、オオカミはがんになりにくい遺伝的性質を示すように
なっている。
ウクライナのチェルノブイリに生息するオオカミが、がんに対する抵抗力を身につけている
ことが、統合比較生物学会(Society for Integrative and Comparative Biology)での報告によって
明らかになった。
1986年4月、当時 ソビエト連邦の一部だったウクライナ北部のチェルノブイリ原子力発電所で
爆発事故が発生し、がんを引き起こす放射性物質が大量に放出された。
ドイツ・バイエルン州でイノシシだけが高濃度の放射性物質に汚染されている理由
その負の遺産である放射性物質は 今日でも、ベラルーシ、ウクライナ、ロシア西部の土壌と水
に残っている。
高濃度の放射線に汚染された地域のオオカミは、毎日 11.28ミリレム(0.1128m㏜)の放射線
を浴びている。これは平均的な人間の労働者の法定安全基準値の6倍以上だ。
オオカミが このような環境に どのように適応して生き延びてきたのかが プリンストン大学の
進化生物学者で生態トキシコロジスト(毒性研究者)のカーラ・ラブ(Cara Love)が行った研究
で明らかにされている。
それによると、チェルノブイリに生息するオオカミの免疫システムが「 放射線治療を受けている
がん患者と同じように 」変化していることがわかった。
科学的な研究によって 放射線耐性が明らかになることで、がんに対する革新的な治療法や予防法が
開発される可能性が高まるかもしれず、この研究成果は重要だ。
2014年、ラブと研究チームは チェルノブイリ原子力発電所から30km以内の立入禁止区域(CEZ)
を訪れ、オオカミに発信機付き首輪を装着して動きを追跡し、リアルタイムで放射線被ばくの
モニタリングを行った。
史上最悪の原発事故で、がんを引き起こす 放射線やそれに汚染された瓦礫が放出され、
この区域は 人間が住めなくなり、約35万人が避難した。
しかし、事故から40年近くが経ち、馬、オオカミ、森林、菌類などが このCEZに戻ってきた。
人間がいないため 動物たちがこの区域で繁栄していることが、多くの調査によって報告されている。
「 CEZは、劣化から立ち直る自然の力を示す、すばらしい事例になっている 」と、国連環境計画(UNEP)の「 気候変動対策による自然の保護・回復(Nature for Climate Branch)部門 」の責任者
であるティム・クリストファーソン(Tim Christophersen)が述べている。
また、環境科学者のジム・スミスは、「 世界最悪の原発事故の後でも、(自然を表す)方程式から
人間が取り除かれれば、自然は繁栄する 」とナショナル・ジオグラフィックに語った。
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Mar. 14, 2023, Isobel van Hagen [原文]