北海道2町村、次段階調査候補に=核ごみ処分で報告書案―経産省

                                    2024-02-13          時事通信ニュース

 

核ごみ「文献調査」実施自治体

核ごみ「文献調査」実施自治体

 

  経済産業省は 13日、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分場を選定

するため、北海道の寿都町と神恵内村で実施している 第1段階の「文献調査」に関する報告書案を

公表した。2町村とも 第2段階の「概要調査」に進む候補地になり得ると判断。

審議会を複数回開いて正式決定する。
 処分場の選定は、文献、概要、精密の3段階の調査で行われ、概要調査以降は 地元市町村に加え、

新たに知事の同意が必要になる。鈴木直道知事は 同日、「 概要調査に移行する場合は 現時点で

反対の意見を述べる考えだ 」とのコメントを発表した。
 報告書案によると、寿都町は 全域と沿岸から15キロ程度以内の大陸棚が、神恵内村では 火山の

積丹岳の半径15キロ以内を除いた 約3~4平方キロメートルの地域がそれぞれ概要調査の対象

となる。噴火の影響 や 鉱物資源の有無などについては 文献調査だけでは確認できないため、

概要調査で詳しく調べる。 


 報告書案は13日、総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の作業部会で審議された。

委員からは「 概要調査で調べたいことを明確にし、地域住民に示すべきだ 」といった声が上がった。
 2町村では 2020年11月、全国で初めて 文献調査が開始された。

 

 調査を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)が活断層や火山などに関する 延べ1500点以上

の資料から、最終処分場として避けるべき地点を明確にした。

 

      PowerPoint プレゼンテーション

        地層処分事業の考え方と進め方 ~高レベル放射性廃棄物の地層処分~ 

            2015年11月8日 原子力発電環境整備機構(NUMO) 技術部 山本 陽一

          現在原子力発電所などで保管されている 約17,000トンの使用済燃料を 

       今後リサイクルすると、既に リサイクルされた分も合わせ、約25,000 本の

       ガラス固化体となる。

 

 

「核のごみ」最終処分地選定 文献調査要件案まとめる 経産省

                 2023年6月22日    NHK 

 

 原子力発電で出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分地の選定について、

活断層や火山の活動記録など 第1段階の「文献調査」で評価すべき要件の案が、国の専門家会議

でまとまりました。これを受けて、全国で 初めて北海道の2つの自治体で行われている調査は、

報告書を取りまとめる作業に入ることになります。

 「核のごみ」は、地下300mより深くに最終処分場を設けて埋める「地層処分」をすることが

法律で定められています。

   処分地の選定に向けて、事業主体のNUMO=原子力発電環境整備機構は、3年前から全国で初めて、

北海道寿都町神恵内村第1段階にあたる「文献調査」を進めていて、文献やデータの収集は

終わり、分析作業も 終盤を迎えています。   北海道寿都郡寿都町 - Yahoo!マップ

                       北海道古宇郡神恵内村 - Yahoo!マップ

 調査結果の報告を受ける経済産業省は、22日、専門家による会議を開き、現地でボーリングなどを

行う 次の段階の「概要調査」に進めるかどうか判断する際に評価すべき要件の案をまとめました。

具体的な要件としては、
   ▽ 活断層や火山の活動記録があるなど、明らかに 不適切な場所は避けること

や、
   ▽ 都市計画や環境保護などの観点から 土地利用に制限がある場合は、それを踏まえる

といった内容が盛り込まれています。

    評価の要件は、今後、一般からの意見募集を経て 正式に決定される見通しですが、NUMOは、

案が まとまったことを受け、北海道の2つの町と村を対象にした「文献調査」の報告書を

取りまとめる作業に入ることになりました。
   報告書がまとまれば、NUMOは、「概要調査」の計画を策定したうえで、地元の町村長や知事に

意見を聞き、次の段階に進むか判断することになります。

   ただ、北海道の鈴木知事は、処分場を受け入れないとする道の条例や、核のごみが「北海道の問題」

にされてしまう懸念などを理由に反対する意向を示していて、国 や NUMOが 北海道以外の地域でも

調査を行うなどして 取り組みを全国に広げられるかが課題となっています。

 

北海道 寿都町長・神恵内村長は

  「文献調査」で評価すべき要件の案が、国の専門家会議でまとまったことについて、寿都町の

片岡春雄町長は NHKの取材に対し「 国の方でしっかりと決めてもらうことなので、いち自治体の

首長として コメントすることは控えたいが、われわれとしては、国が責任を持って最終処分に

向けた取り組みを進め、1日も早く文献調査に協力する自治体が増えることを願うほかない 」

と話しています。

    また、神恵内村の高橋昌幸村長は NHKの取材に対し「 詳しい情報が入ってきていないので、

現時点でコメントすることは控えたい 」と話しています。

 

北海道 鈴木知事「 道の条例趣旨と相いれない 」

    鈴木知事は 22日の記者会見で「 道の条例は 道内に処分場を受け入れる意思がない という考え

に立ち、制定されたものだ。『概要調査』は、最終処分場の選定プロセスの1つの段階であり、

条例の趣旨とは相いれない。『文献調査』の終了後に仮に『概要調査』に移行しようという場合には、

条例制定の趣旨を踏まえ、現時点で 反対の意見を述べる考えだ 」と述べました。

   そのうえで、北海道は 高レベル放射性廃棄物を安全に処分するための技術研究を北部の幌延町

で受け入れているとして「 最終処分の問題は 北海道だけで考える問題ではない。北海道が幌延での

深地層研究を受け入れ、全国で 唯一の役割を果たしている地域だということを全国の皆さんに 

まずは知ってほしい 」と述べました。

 

北海道2町村 経緯と今後

 核のごみの最終処分地を選定する手続きで はじめの段階にあたる「文献調査」は、全国で初めて、

3年前に 北海道の寿都町と神恵内村を対象に始まり、現在は 実質的な調査が ほぼ終わって事業主体

のNUMOが結果を取りまとめる作業に着手しています。

【2町村の経緯】

  「核のごみ」は、地下300mより深くに最終処分場を設けて埋める「地層処分」を行うことが

法律で決まっていて、処分地の選定に向けた調査は 20年程度かけて3段階で行われます。
調査は、自治体が公募に応じるか 国の申し入れを受け入れることで実施されますが、
   ▽寿都町では
町長が判断して公募に応じることを決めた

一方、
   ▽神恵内村では、
村の商工会が 議会に応募の検討を求める請願を提出し、これが採択されたことを

受け、国が申し入れを行って村長が受け入れる形で調査が始まりました。

    調査は 始まって 2年半余りたち、「文献調査」の段階で得られるデータはほとんどそろっていて、

NUMOは いずれの町と村についても 次の段階の「概要調査」に進むことは可能だとする見解を

示しています。

【見通しと政府のねらい】

    今後、調査結果を評価する要件が正式に決まるのを待って、NUMOは「文献調査」の報告書を

まとめ、次の「概要調査」の計画を策定することになりますが、この調査に進むには 地元の町村長

に加えて 北海道の知事から同意を得る必要があります。

    北海道の鈴木知事は、2000年に定められた最終処分場を受け入れないとする道の条例などを

理由に、今月9日の会見でも「概要調査」に進むことには反対すると述べています。

    こうした中、新たな調査地域が現れないことに 寿都町と神恵内村の住民からは「 全国で議論して

答えを出すべき問題が、2つの町と村の住民に押しつけられている 」といった声が上がるようになり、

鈴木知事や両町村のトップからは、最終処分地の選定が「北海道の問題」とされてしまわないよう、

全国的に関心を広げることを求める声が上がっています。

   加えて、海外で 処分地の選定が進んでいる国では、10近くの複数の地点で調査を行ったうえで

候補地が決まった経緯を踏まえ、政府は、ことし 4月に改定した取り組みの基本方針において、

「複数の地域での調査の実施を目指す」としています。

 

最終処分地選定の経緯

    いわゆる「核のごみ」は、日本で 原子力発電が始まってから およそ60年がたつ今も、

最終的な処分の見通しが立たず、原子力政策における 最大の課題とも指摘されてきました。

  「核のごみ」は、原子力発電所で発生する使用済み核燃料から 再び使用するプルトニウムなどを

取り出したあとに残る廃液をガラスで固めたもので、人が近づくと 10数秒で死に至るレベルの

強い放射線を出します。

   放射線を出す能力は 時間とともに弱まりますが、天然のウラン鉱石などと同じレベルになるまで

には数万年かかるため、専用の容器に入れて 地下300mより深い場所に埋める「地層処分」を行う

方針が、2000年に成立した法律で定められています。

 海への投棄は 国際法によって禁止され、地上で 数万年以上保管するのは自然災害などのリスクが

大きくなるため、数万年単位で環境が変わらないと考えられる地下深くの地層に隔離することで、

人が管理しなくても 安全上のリスクを十分小さくできるという考え方です。

   最終処分場は 全国に 1か所建設されることになっていて、事業を担う国の認可法人、NUMOが、

2002年から処分場の適地があるか調べる調査を受け入れる自治体を公募しています。

  調査は、20年程度かけ3段階で実施され、
   ▽はじめに、文献をもとに火山や断層の活動状況などを調べる「文献調査」に2年程度、
   ▽次に、現地でボーリングなどを行って地質や地下水の状況を調べる「概要調査」に

    4年程度かける

  ことが想定され、
   ▽その後、地下に調査用の施設を作って 岩盤や地下水の特性などが処分場に適しているか

    調べる「精密調査」を 14年程度かけて行います。

     段階に応じて、対象の自治体には 交付金が支払われ、はじめの「文献調査」で最大20億円、

次の「概要調査」では 最大70億円が支払われます。

   この公募をめぐっては、2000年代半ば以降に 鹿児島県や長崎県、秋田県などの自治体で勉強会

を開くなどして応募を検討する動きがありましたが、それが表面化するたびに 住民や周辺自治体

などから反発を招き、断念するケースが続きました。

   2007年には、高知県の東洋町が 全国で初めて調査に応募しましたが、賛成派と反対派の対立の末、

その後の選挙で 町長が落選し調査が始まる前に 応募は撤回されました。
  その後、2011年の東京電力福島第一原発の事故などを経て、調査の受け入れが表立って議論される

機会はなくなっていきました。

   このため政府は、2017年に文献などをもとに 火山や活断層の有無などを確認し、調査対象の

有望地を色分けして示した「科学的特性マップ」を公表して、全国で説明会を開くなどして、

改めて調査への理解を求めてきました。
   こうした中、3年前に北海道の寿都町と神恵内村が調査受け入れを決め、この2つの町と村を対象に、

第一段階の「文献調査」が全国で初めて進められています。