2024年01月14日 鐙麻樹 - エキスパート - Yahoo!ニュース
ノルウェーの複数の環境団体は、フォルデ・フィヨルドへの採掘廃棄物の堆積許可において、
国相手に裁判を起こしていた。
フィヨルド=海を「処分場」とすることに対しては、環境派が強い反発をしており、この争いは
2008年から続いている。ノルウェーの歴史上で 大規模な環境紛争のひとつでもある。
2022年に 環境団体らが国を提訴し、裁判は オスロ地方裁判所で2023年9月18日から10月4日
まで行われた。
反対の意見は 国外でも広まり、2016年には 世界自然保護連合の53カ国が 鉱山廃棄物の海洋投棄
を止める決議を支持した。この時に 反対票を投じたのは ノルウェーとトルコだけだった。
オスロ地方裁判所が 国側の主張を支持したことは、環境派にとっては衝撃的な通告となった。
加えて、訴訟に費やした 約300万ノルウェークローネに加えて、140万ノルウェークローネの
訴訟費用を 国に支払わなければならないことは、「予想外だった」と衝撃を与えた。
環境側の主張は、「 フィヨルドの広範囲の汚染が認可され、環境への影響が過小評価されている 」
ことだったが、「 採掘会社ノルディック・マイニング社に付与されたライセンスは無効になるべき 」
という主張は裁判所に受け入れられなかった。
採掘会社は「 操業許可は 健全かつ合法的な根拠に基づいて付与された 」と判決を喜んだ。
国は 最大1億7000万トンの掘削廃棄物の投棄を許可した。
「 鉱山廃棄物の海洋(フィヨルド)投棄 」は イメージしにくいかもしれないが、下の環境団体
の動画を見ると 想像がしやすい(音声はノルウェー語だが、動画を見るるだけでも理解できる)。
法的な紆余曲折が続いたノルウェーで、今回の裁判の結果は 今後の海洋投棄の問題に影響を与える
ことになるだろう。
国を提訴した環境団体らの中心団体のひとつとなったのは、ノルウェー最大級の若者の団体
「自然と青年」(Natur og Ungdom)だ。
リーダーである ギーティス・ブレジャヴィチョスさん(23)は、今回の結果に落胆はしても、
闘い続ける希望は失っていなかった。
人類を相手に、負けるのは 常に環境
「 気候と環境は そもそも勝利することに慣れていません。だからこそ、これほど 自然や気候破壊
が深刻化している 」
今回の記者会見でもそうだが、ブレジャヴィチョスさんや関係者が 「環境」「気候」を 人と
同じように「主語」で話しているのが 筆者には印象的だった。最近の取材で、フィンランド元大統領
も「地球」を「女性」として語っていた。
敗訴しても、闘う意欲は失われない
活動家として モチベーションは失わないが、「 怒りと戸惑いを感じるからこそ、その解消の助け
になるのは活動し続けること 」だ。ブレジャヴィチョスさんは 取材でそう話した。
国際的には ノルウェーは「良い国」「環境・気候対策の最先端を行く国」という印象を抱かれて
いることに違和感を感じているという。
「 まるで 自分たちは フィヨルドと山と共にあるかのように宣伝しているけれど、実際は
そうではない。自然保護においても 気候排出量対策においても、ノルウェーは最悪だし、偽善的
だと感じています 」
また北欧他国のスウェーデンやデンマークと比較して、自然保護のための裁判費用がノルウェー
は格段に高いことにも警報を鳴らした。
それでも 国を批判・提訴することにためらうことは、今後もないという。
「 物事を変えるための唯一の方法は、挑戦し続けることですから。今回の裁判の結果で 私が
恐れを抱くことはありません。むしろ 全身の一歩だと考えています 」