日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える

「衝撃の未来」(現代新書編集部)

         2023.12.27   現代新書 | 講談社

 

 国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し、大きな話題になった。

50年後の2070年には 総人口が 約8700万人、100年後の2120年には 5000万人を割るという。

ただ、多くの人が「 人口減少日本で何が起こるのか 」を本当の意味では理解していない。

そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

   ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で

起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。

 

2030年には 百貨店も銀行も地方から消える

  「 日曜日の初耳学 」では、林修氏の熱烈オファーにより、人口減少問題の第一人者として河合氏

登場。少子高齢化による人口減少で 沈没の危機にある日本社会の未来 と その解決策について

語り合った。

    まず、『未来の年表』では 未来をどう予測しているのか――。

2030年(7年後)には 百貨店も 銀行も 老人ホームも 地方から消えることや、今後 東京で高齢者が

増えることで 手術が半年待ちになることが紹介された。

「 人口は 予測ではない、過去に行ったことの投影なんです。だから、外れる外れないではなくて、

過去を見ればわかるんです 」(河合氏)

   この国の出生数が 100万人を切ったのが 2016年のこと。それから急激なペースで減り、

今年上半期の出生数は 38万人となり、1年間では 75万人ほどになるのではないかとも言われる。

これは 国の予想より 11年前倒しで少子化が進行していることになる

 

        図表1-1-7 出生数、合計特殊出生率の推移|令和2年版厚生労働白書

 

「ポツンと5軒家」はやめるべき

   東京一極集中が進み、「 地方消滅 」が叫ばれている政府は 過疎地域への移住を推奨し、

空き家を安く貸すなどの対応をしている。

だが、「 こうした移住政策はやめるべき 」だと河合氏は言う。さらには、「 この先、『ポツンと

5軒家』はやめるべきだ 」と主張する。どういうことだろうか。

 

   山里に行くと 90代 1人暮らしの人だらけ という光景が珍しくない。そこに 30代の家族が移住した

とする。10年後には 高齢者が亡くなり、若い移住者だけが残ることになる。

「 ポツンと5軒家 」から「 ポツンと1軒家 」の状態になるのだ。すると、わざわざ 1軒のために、

電気やガスや水道を提供しないといけなくなり、他地域のインラフの料金もアップする。

実際、2043年には 水道代が 1.4倍以上になるという予測も出ている。

 

地方集住」という可能性

   しかし、地方移住にも 希望はある と河合氏は言う。

現状の移住政策では 一極集中を是正できていないが、「地方集住」という形であれば 可能性がある

のではないか、と。

人が住む地域 と 住まない地域を明確に分けることができれば、そこには 民間事業を残すことが

できるという。最低10万人の商圏を維持できれば、そのエリアは 持続可能と言われている。

 

     ※ 2023年 4月調査 市町村別 人口・世帯数 (含。外国人)

         2023年1月1日現在 市町村別人口 住民基本台帳人口(確定値)        

 

   番組では 秋田県が例として取り上げられた。2015年には 約102万人だった人口が 2045年には

約60万人に減少。60万人ということは 10万人の商圏が 6つしかない。

そうした状況となる秋田県の生き残り策は「 秋田市に全部移住するか 」「 秋田県を 秋田市と

名乗るか 」だという。

   仙台と並ぶ 100万都市にするために、多少の痛みを伴ってでも 大胆な変化をしていかないと

この先の変化には対応していけない。

 

ショッピングモールの閉店ラッシュ

   人口減少による影響は、生活に欠かせない場所に すでに現れている。

具体的には、「 2030年には 大型ショッピングモールは維持できなくなる 」という事態が起こる。

見込んだお客さんが来ず、場所によっては 閉店が始まっており、今年だけで 25店が閉店している

という。想定以上に 人口減少が進んでいるのだろう。

 

   これから何が起きるのか といえば、既存の商店街が壊滅し、ショッピングモールが閉店し、

地方には何も残らない未来の到来だ

しかし、政治(家)は 解決してくれなさそうだ。人口減少は 10年単位で取り組まなければいけない

問題なのだが、票にならない政策は 食いつきが悪いのだという。それでも、今からやれば、正しく

対応すれば、豊かな日本は続けられると河合氏は語った。

 

高品質なものを 高付加価値で売る

   日本では 2042年から本格的な人口減少が始まる。

人口を増加させることは 難しいため、人口減少を前提にどうしていくのかを考えなければいけない

人口減少時代において、生産性・成長を維持していく経済モデルを作ることが大事になってくる。

 

  「 まだ 日本が経済大国でいられるうちに、戦略的に縮める必要があります。これまでの産業を

維持していこうと思うと、どこの分野も 人材不足になってきて維持できません。日本は 各分野に

産業があるので、捨てるものは捨てて 残すものは徹底してよくしていくべきでしょう 」(河合氏)

 

  具体的には、日本より人口が少ない ドイツやフランスなどのヨーロッパ型を目指すべきだと

河合氏は提言する。例として挙げるのは、自動車会社フォルクスワーゲンのポルシェという

ブランドだ。

ポルシェの昨年の売上げは 約28万台で 約50億ユーロの営業利益があった一方、フォルクスワーゲン

の売り上げは 約457万台で営業利益は 約25億ユーロだった。フォルクスワーゲンが ポルシェと

同じ利益を生み出すには、900万台近く売らねばならない。

   ここから言えることは何か。

   生産量も 労働者も 消費者も激減する日本にとって、「 高品質なものを高付加価値で売る 」

というモデルを築き上げることが急務となるということだ。