KAKEN — | 秋田県のカドミウム汚染地に対する全県的拡大調査

               2020.4.1~23.3.31

  秋田県の北部・中部・南部のCd汚染地域の農業従事者は現在でもCd体内蓄積量は高く、

 健康影響が危惧される。これまでに 北部Cd汚染地域での住民健康調査と各Cd汚染地域での

 医療機関におけるCd腎症スクリーニングにより 多くのCd腎症患者や「イタイイタイ病」疑い患者

   を見出したが、調査対象を中部・南部のCd汚染地域まで拡大し、北部地域での追跡調査、湛水管理

   の米中ヒ素濃度への影響の観察なども実施する。それにより 秋田県Cd汚染地域全体の実態把握、

   高齢でのCdの健康影響の解明、ヒ素に関する湛水管理の有効性と安全性の検討などを行い、

   地域住民のCdに関する健康問題の根本的な解決を目指す。

  ・・・

  これまでに 秋田県北地域(大館、鹿角、小坂)で実施した住民健康調査及び医療機関での

   Cd腎症スクリーニングにより、これらの地域の農業従事者を中心とする住民における Cd曝露

   とその健康影響についての全体像がほぼ明らかになってきた。

      すなわち、現在では 種々の対策により 米中Cd濃度は低減しているが、住民のCd曝露レベルは

   過去の摂取量を反映して高く、特に 小坂鉱山尾去沢鉱山の周囲で 高度のCd曝露を受けて

   Cd腎症を発症している人がいることが判明した。・・・
  一方、県南部の横手市には 成瀬川流域に 吉乃鉱山に由来するCd汚染地域が広がっているが、

   現時点では 住民健康調査を実施できたのは 鉱山に近い一部の集落に留まっており、いまだ

   住民のCd曝露とその健康影響についての全体像は明らかではない。今後は 住民健康調査の対象を

   成瀬川下流のCd汚染地域に位置する集落に拡大して実施することを計画している。

   そして、県南部の対照としての東成瀬村では、現時点で住民健康診断の受診者が80名得られて

   いるが、さらに継続して村内の他の集落で住民健康を実施して対照群の数の増加を図る。

     秋田県各地の医療機関でのCd腎症スクリーニングも 住民健康調査と並行して今後も継続して

   実施する。

 

忘れられたカドミウム汚染地

 ─秋田県の農家におけるカドミウム経口曝露とその健康影響の現状 2016年

  20世紀後半の我が国には 鉱山や製錬所に由来するカドミウム(Cd)汚染地域が各地に存在し、

   地元産米摂取などにより Cd経口曝露を受けて 腎尿細管機能障害(カドミウム腎症)を発症した人

   が住民健康調査などによって 多数見つかった。最も高度のCd汚染地域は

   カドミウム腎症のみならずイタイイタイ病も多発した 富山県神通川流域であったが、

   石川県梯川流域 や 長崎県対馬などのCd汚染地域においても 住民健康調査などによって

   多数のカドミウム腎症患者の存在が明らかにされてきた。
    ところで、環境省の農用地土壌汚染防止法の施行状況によれば、
秋田県には 基準値を越える

   Cd濃度の米が生産された農用地土壌汚染対策地域が全県にわたって散在しており、その指定面積

   と件数はともに全国第一位である。

     それは、かつて 県内に 125カ所も存在した非鉄金属鉱山に由来すると考えられる。

   しかし、1960年代に 県北地域の一部で実施された疫学研究以外には 住民健康調査の報告は

   20世紀中には ほとんどなく、住民におけるCdの健康影響の実態は長らく不明であった。

   すなわち、秋田県は「忘れられたカドミウム汚染地」であったと言える。
    21世紀に入って ようやく県北のCd汚染地域において広範囲に住民健康調査が実施されたところ、

   自家産米を摂取してきた農家は 県内対照地域と比較して 年齢依存性の高度の血中・尿中Cdレベル

   を示し、特に 70歳以上の女性では 腎尿細管機能への影響が現れており、カドミウム腎症と

   考えられる人も見つかってきた。 従って、県中・県南の未調査のCd汚染地域においても

   同様の状態であることが推測される。
    これらの結果は、Cdの非常に長い生物学的半減期と国民の長寿化のために、富山県や秋田県

   などのCd汚染地域では 高齢者の中から将来にわたって カドミウム腎症やイタイイタイ病が発生

   する危険性があること、そして 今後も 継続的な住民健康調査と保健対策が必要であることを

   示している。      Cd の生物学的半減期:10~30 年

 

    カドミウム汚染地図 - 金沢医科大学

 
                                                  平成30年(2018) 10月1日更新
 
      2022年08月19日     - 国立大学法人 岡山大学