ALPS処理水は、海水で希釈するという。
海にある水の全量は、希釈して放水した前後では、
希釈する前の「処理水」の量だけ増える。
つまり、
「処理水」をそのまま流したのと、希釈して流したのとの違いは、
希釈せずにそのまま流したら、
「処理水」の放出口付近で、放射性物質が 他の場所よりも目立って濃度が高くなる。
――― ということ。
しかし、放出が 1回きりなら、
その希釈スピードは、核種によって異なるだろうが、
いつまでも、同じところに 放射性物質がとどまっていることはない。
やがて 自然に 或は 海流などによって希釈して、他の場所と濃度の差がなくなる。
気象庁 | 海洋の健康診断表 参考図 【日本近海の海流(7月概況)】
ただし、処理水は その放出口から 毎日 継続的に流すのであるから、
自然or海流などによる希釈スピードより 放出が早いので、
当然、放出口付近では 放射性物質の濃度は だんだん高くなるだろう。
東電は、自然の希釈スピード と 毎日の放出量とを計算して、
この濃度の高まりが 目立たないようにしたのが、
いわゆる 「何倍の希釈」というものである。
この間、海洋には ひきつづき
正味の放射性物質は 投入し続けられるのであるから、
トリチウムの場合は、まずは プランクトンを通して、
やがて、生態系の食物連鎖を上に登るにつれて起きる「生物濃縮」による
生態系攪乱の規模が 問題になる⊛。
しかして、この規模は、海洋に放出された トリチウムの総量に大きく依存する。
つまり、これは、
国内外のトリチウムに関する指標値
排水に関する国の安全規制の基準 60,000Bq/L
WHOの飲料水の基準 10,000Bq/L
――― というリットル当たりの値ではないのである。
⊛ IAEAは、原発などの原子力の利用を推進する機関なので、
原発や、さらに再処理工場から出る膨大なトリチウムの量を
問題視したくない立場をとってきたため、
この「生物濃縮」による生態系の攪乱は ないことにしたがる。
ゆえに、IAEAの事務局長は、⇩のように、
ALPS処理水による「人体への影響はない」と言って、
「生物濃縮」には言及しないのである。
福島第1原発の処理水、有害ではない IAEA事務局長(AFPBB News) - Yahoo!ニュース
※グロッシ事務局長:「 海洋放出された処理水のトリチウム濃度は想定された値
を下回っていると指摘し、人体への影響はないとの見解を示した。」
――― と述べたという。
デブリ冷却水を、ALPSで処理するにせよ、全量 海洋に流すということであれば、
「人体への影響はない」のは、➀ 10年後20年後に影響が出るかもしれないが、
「ただちに影響はない」(放射能の多くがこれである!)のか、
② それとも、数十年にわたる生物濃縮によって「影響が顕在化しくる」ことは
保障しないが、今影響が出ないことは保障する、
というのか、その両方を含意しているのである。
参考までに。
東京電力福島第一原発事故で 格納容器外に放出されたセシウム137は、
日本政府は、1.5×1016㏃(北米やヨーロッパに到達した膨大な量の放射性物質は考慮外)
としている。これは セシウム何グラムに当たるだろうか?
1 gのセシウム137は 3.215× 1012 Bqなので、
1.5×1016 / 3.215× 1012 = 約4.7kg
これは、
水の量に置き換えると、
1リットル入りのペットボトル約5本分の重さに当たる。
たったこれだけを 関東・東北一円の自然環境中にぶちまけて⊛、
⊛ つまり、希釈したわけである!
人の住めない広大な土地ができたのである!
放射性物質は 我々の日常感覚とは違って、
それがほんの微量であっても、
こんなすごいことになるので恐ろしいのだ!
合掌