大きな期待を寄せない方がいい 上昌広
2023/02/28 日刊ゲンダイDIGITAL
マスクの着用を巡る議論が盛り上がっている。政府が、5月8日から 新型コロナの扱いを
2類相当から5類に変更し、室内でのマスクの着用が義務ではなくなるからだ。
マスコミは 規制緩和に否定的だ。1月28日、朝日新聞は「マスク着用 対策の見直し 総合的に」
という社説を掲載し、マスク不要論への反論として、「人口比でみれば コロナの死者数が日本より
多い欧米を “標準”とするのは、いかがなものか」と批判する。
この論理は間違いだ。データベース「Our World in Data」によれば、1月27日の日本の人口
100万人あたりの死亡者(1週間平均)は 2.77人で、主要先進7カ国(G7)で最も多い。米国は
1.48人で日本の約半分だ。マスクを外しても、欧米では 死者は急増していない。
朝日新聞が マスクを推奨するのは、専門家の意見を踏襲しているためだろう。
2月8日、西浦博・京大教授ら25人の専門家は 「マスク着用の有効性に関する科学的知見」という
文章を発表した。この中で、2月に北京大学の研究者たちが「トランスレーショナル精神医学誌」に
発表したメタ解析を引用した。
この研究では、マスク着用により、感染リスクは 16%低下し、その差は統計的に有意だった。
メタ解析とは、それまでに発表されている医学論文をまとめて分析したもので、医学的エビデンスレベル
は最も高い。マスクは有用と言ってもよさそうだ。
ところが、そうとは言い切れない。マスクの効用について、否定的な研究も存在するからだ。
昨年2月、韓国のサムスンメディカルセンターの医師たちが、マスクの効果を検証したメタ解析を
「医療ウイルス学」誌に発表したが、この研究では、一般人がマスクを着用した場合、予防効果は
約20%で、その差は 統計的に有意ではなかった。
つまり、効果は証明されていないことになる。
さらに、1月30日に公開されたマスクに関するコクランレビューの結果は、もっと否定的だった。
11の大規模臨床試験をまとめたメタ解析では、マスク着用群で感染が 5%減っていたが、これは
統計的に有意ではなかった。
コクランレビューは、国際団体コクランが作成する医学論文の総括で、信頼度は極めて高い。
西浦氏たちは、なぜ、コクランレビューに言及しなかったのだろうか。
かくのごとく、マスクの効果は限定的で、しかも 医学的に証明されていない。今後の研究が必要だ。
ただ、マスクに大きな期待を寄せない方がいい。それは コロナ流行前からの医学界のコンセンサス
だからだ。だからこそ、海外では 流行期の公共施設などを除き、マスクの装着を個人の判断に任せて
いる。厚労省や専門家は、国民が自ら判断できるように、正確な情報を伝えねばならない。
新型コロナ5類に移行…高齢者はワクチンを打って、普段通りの生活を
2023/01/31
コロナ感染による死者数が急増している。昨年10月には 全国での死者数は1864人だったが、
11月には 2985人、12月には 7622人とうなぎ上りだ。
この時期に 政府は感染症法でのコロナの位置付けを 2類相当から5類に変更すると発表した
のだから、マスコミは大反対だ。
朝日新聞は 1月20日の「天声人語」で「いま緩和に動いて本当に大丈夫なのか。第8波は続き、
高齢者を中心に死者数も過去最多レベルだ。誰かに犠牲を強いることにならないか」と記している。
私は、このような論調に賛同できない。今こそ、高齢者は ワクチンを打って、普段通りの生活を送る
ことを勧めたい。感染症を恐れて、自粛を続けることは 高齢者のためにならないからだ。
医療ガバナンス研究所の山下えりか医師は、厚労省の「人口動態統計」を用いて、2019年と
2021年の死因の変化を調べた。
驚くべきことに、19年と比べて、21年に人口10万人あたりの死亡数が 最も増えたのは
老衰(25人増、25%増)だった。 次いで、コロナ(14人増)、誤嚥性肺炎(7人増、23%増)、
心疾患(6人増、3.4%増)、悪性新生物(4人増、1.3%増)、アルツハイマー病(2人増、10.8%増)
と続いていた。
逆に肺炎(18人減、23%減)、脳血管疾患(2人減、1.8%減)、不慮の事故(1人減、2.1%減)
は減っていた。
厚労省やマスコミは、コロナによる医療逼迫が 死者増に影響しているというが、どうやら、
それは的外れのようだ。もし、そうなら 心筋梗塞や脳卒中などの急性疾患での死者が増えているが、
心疾患は微増、脳血管疾患に至っては減っている。
■老衰、誤嚥性肺炎、アルツハイマー病の死者が増加
老衰、誤嚥性肺炎、アルツハイマー病による死者数の増加は、コロナの2.4倍だ。
このような疾患は、老化による身体や認知機能の低下が原因だ。 自粛による運動不足や、社会的な
孤立が影響したと考えるのが自然だ。
これは 隔離一辺倒の感染症対策が、国民に過剰な恐怖心を植え付け、国民を過剰に自粛させた
ためだ。ところが、専門家は、このような事実には言及しない。そして、いまだに国民を脅し続ける。
西浦博・京都大学教授は、「社会全体で緩和に伴う自由を手に入れることは、ヨーロッパの規模
の感染や死亡を受け入れることにも通じるものです(12月31日、バズフィード)」と語る始末だ。
私は、コロナから我が身を守るために、ワクチンを打って、日常生活に戻ることをお勧めしたい。
オミクロン株以降、世界の感染の中心は 日本や韓国などの東アジアだ。完全に感染を避けることは
できない。幸い、オミクロン株は弱毒だ。ワクチンを打ち、体力が維持されていれば、高齢者が感染
しても問題なく治癒する。実は、これこそが 世界のコロナ対策の標準だ。そろそろ まともな対応を
取らねばならない。
厚労省の音声データ入手で分かったこと!【大石が深掘り解説】 - YouTube
2022/07/15 CBCニュース