10月14日 〈週刊朝日〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース
会見で「献金が信者の生活を圧迫することが決してないよう指導を徹底する」と表明した
旧統一教会。「改革」は 実行されるのか。韓国の本部との関係を考えると、疑問が浮上する。
【画像】旧統一教会が使っていた「霊感商法カタログ」商品の内容と価格表(全6枚)
「メディアを黙らせろ。そんな韓国の世界本部からの指示を踏まえた提訴だと思います」
全国霊感商法対策弁護士連絡会の代表世話人を務める山口広弁護士は、そう指摘する。
旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)は 9月29日、読売 テレビ とTBS、2社の情報番組の
コメンテーターを務めた弁護士3人に名誉を傷つけられたとして 計6600万円の損害賠償など
を求めて東京地裁に提訴した。
山口弁護士が続ける。「 教団は近年、信者が減り、資金収集力が減退しています。教団は
5年以上前から危機感を抱いていましたが、現在のメディアの追及で いっそう体制維持が
危ぶまれている。その焦りの表れでしょう 」
教団は一方で、「教会改革推進本部」を設置。 勅使河原秀行本部長は9月22日の会見で
「 生活を圧迫するような過度な献金とならないように十分配慮する 」と語った。
また、韓国の世界本部を通じて海外の宣教活動に送金している額も大幅に減らすと言及した。
改革の骨子は 日本の教団で決定し、世界本部も了承したという。 勅使河原氏は
「(教会運営の)責任と権限は日本教会にある」と強調したが、改革は実行できるのか。
前参院議員で ジャーナリストの有田芳生氏が言う。
「 日本人に教団の方針は決められません。日本教会の田中富広会長もお飾りです。田中会長
の上に韓国人幹部の方相逸(パン・サンイル)・神日本大陸会長がいて、日本の教団を牛耳っている。
地方のブロック長の上にも韓国人幹部がいます。教団の韓国支配が続く限り、問題の核心は
残ったままです 」
会見では明かされなかったが、どれほどのお金が韓国に渡っているのか。『自民党の
統一教会汚染追跡3000日』の著者で、ジャーナリストの鈴木エイト氏がこう話す。
「 韓国の本部が献金ノルマを決め、日本の教団に指示しています。1990年代後半から
2000年代初頭は、毎年、1千億円くらいだったのですが、それが 10年前後には 600億円
くらいに減り、ここ数年は 200億~300億円にまで落ち込んでいるようです。資金源の
7割が日本からの献金ですから、韓国の本部としても 死活問題です 」
不特定多数の人を相手に不安をあおって高額な印鑑や壺を売りつける「霊感商法」に
ついては、会見で勅使河原氏が「2009年以降は1件もないはず」と主張した。全くなくなった
とはいえないが、確かに 警察が特定商取引法による取り締まりを強化し、05~10年に全国で
13件が摘発されて以降、「霊感商法」は下火になったようだ。
ただ、その後、教団は 信者に多額の献金を払わせる方針をとった。このため 献金総額は
下がったが、個々の“被害額”が大きくなっている。 安倍晋三元首相銃撃事件を起こした
山上徹也容疑者の母親は 1億円以上献金したとみられているが、何億円も取られた例が
ザラにあるというのだ。
山口弁護士が憤る。
「 手口は 1987年当時の霊感商法と変わりません。先祖が地獄で苦しんでいて、地上の子孫
である あなたに救いを求めている。霊界から来る先祖の霊が悪さをするから 病気に
なったり、交通事故に遭ったり、愛情に恵まれない人生を送ることになる ──などと殊更に
不安をあおって、お金を出させるのです 」
新たな“献金指令”もすでに出ている。鈴木氏が関係者から得た情報によれば、
教団は 来年5月までに、信者 1家庭あたり 183万円の「目標金額」が設定されている
というのだ。韓国・清平で建設中の聖殿「天苑宮」が来年5月に完成するため、その費用に
充てられるという。
韓鶴子総裁は 来年、80歳を迎え、創設者の文鮮明氏が生きていれば 103歳。足して183歳
になるから183万円なのだという。
「 結局、信者からお金を集めるしかないので、今後も 自己破産や家庭崩壊はなくならない
と思います。信者たちは献金すれば、日本が韓国を植民地支配した時代にひどいことをした
罪滅ぼしになる、困窮すればするほど功徳が積めるなどと思い込まされています」(鈴木氏)
■政治との接近は韓国や米国でも
本当に 送金の大幅減額が可能か、ノルマの有無などについて教団に質問したが、期限までに
回答はなかった。 一方で 韓国の本部は、国内の信者には 多額の献金など強要していない。
自民党への浸透が明らかになった旧統一教会だが、自国内でも 時の政権に巧みに接近し、
米政界をも 手玉に取った。
韓国で 統一教会が創設されたのは、朝鮮戦争休戦の翌年の1954年。61年、軍事クーデター
で朴正煕氏が権力を掌握すると(63年から大統領)、多くの宗教団体が抗議するなか、
統一教会は「反共」を掲げ支持に回る。 コリア・レポート編集長の辺真一氏が説明する。
「 韓国正教会から異端視されていた統一教会が成長を遂げたのは、朴正煕政権が全面的に
庇護したからです。その後、統一教会は 米国にも進出して 75年にマンハッタンの
ニューヨーカーホテルを買収しています 」
76年には 米下院フレイザー委員会で、韓国政府による米政界工作スキャンダルの
「コリアゲート事件」が発覚した。
「 北朝鮮を “サタン”扱いする文鮮明氏は、ニクソン政権が 在韓米軍を撤退させようと
していることに危機感を抱き、KCIA(韓国中央情報部)と結託。在米韓国人実業家の
トンソン・パク(朴東宣)と連携して 米国会議員にロビー活動を行い、撤退を阻みます。
冷戦終結後の91年には 一転して北朝鮮を訪問し、金日成主席と会談。北朝鮮と太いパイプ
を持つに至ります。98年に 大統領に就任した金大中氏の対北融和政策を支持し、文氏は国内
での政治基盤を確立していったのです 」
前出・山口弁護士がこう語る。
「 何のことはない。文氏は 右でも左でも政治的に結びついて、統一教会を国教にすること
を目指したのです。『天一国』と称して、文鮮明氏や韓鶴子氏の御言葉が そのまま国の方針
になる。これこそが 文鮮明の夢想した地上天国の実現なのです 」
全財産をなげうって付き合わされた日本の信者たちは、たまったものではない。