2022/3/26 有年 由貴子 - 産経ニュース
新型コロナウイルス対策で適用されていた蔓延(まんえん)防止等重点措置が 今月21日で解除
されたが、既に 次の第7波への警戒が強まりつつある。 現在の主流株に比べ 感染力が高い
オミクロン株の系統株「BA・2」への置き換わりが進み、4月中に 国内での検出割合が ほぼ100%に
達するとみられるためだ。
ウイルス特性の解明が進むが、ワクチンや治療薬の効果はあるのか。影響を探った。
国内で流行するオミクロン株は、当初は 系統株 「BA・1」と、その表面のスパイクタンパク質に
1カ所変異が入った 「BA・1・1」があったが、感染が広がるにつれて BA・1・1が主流になった。
オミクロン株の解析を行っている東京大の佐藤佳(けい)准教授(ウイルス学)によると、BA・1・1 は
BA・1より やや感染力が高いが、特性は ほぼ同じと考えられている。
一方、BA・2は スパイクの塩基配列が BA・1と大きく異なっており、より感染性を高めていると
みられる。すでに デンマークや英国では 主流株が BA・2にほぼ置き換わり、フィリピンなどの
東南アジア地域でも顕著な増加傾向にある。
デンマークにおける新型コロナウイルスの感染状況・グラフ* (reuters.com)
英国における新型コロナウイルスの感染状況・グラフ* (reuters.com)
フィリピンにおける新型コロナウイルスの感染状況・グラフ* (reuters.com)
佐藤准教授は「 BA・2は BA・1・1よりも さらに感染力が高い。BA・2の割合が増えている他国
で 感染の再拡大が起きているように、置き換わりが進む中で 人流が活発になると、日本でも 感染
が拡大するだろう 」と指摘する。
蔓延防止等重点措置の解除で 街に人波が戻り、BA・2の感染拡大が 第6波より高い波を
引き起こす可能性も懸念されている。 23日に行われた厚労省の専門家組織の会合で示された
資料によると、BA・2は BA・1・1を含む BA・1と比べ、感染後 他の人にうつるまでの日数を示す
世代時間が 15%短く、感染者1人が何人に感染を広げるかを示す実効再生産数が26%高い。
また、国立感染症研究所の予測では、検出割合は 4月第1週時点で 72%、5月第1週時点で
97%に達する。 座長の脇田隆字(たかじ)感染研所長は BA・2への置き換わりに関し、
「 感染拡大の圧力になるだろう。今後、感染者数が再度増加に転じる可能性がある 」と語った。
病原性をめぐり、英国保健当局は BA・2感染後の入院リスクが「 BA・1より高まっているとは
いえない 」と報告している。 ただ、東大などの研究チームの動物実験の結果によると、肺組織に
早く広がりやすく、BA・1への感染による免疫が BA・2には 効きづらい可能性もあるという。
海外では BA・1感染者のBA・2への再感染も報告されている。
一方、ワクチン効果に関しては、英国のデータによると、発症予防効果は、2回接種から25週以降
で BA・1は10%、BA・2は 18%。 3回目接種だと、2~4週後で BA・1が69%、BA・2は 74%
に高まり、10週以降は BA・1が49%、BA・2は 46%に減少するなど同様の傾向を示している。
国内で承認されている治療薬については、東大や感染研などの研究グループが、中和抗体薬の
効果が 従来株よりも低い懸念があるものの、細胞実験で 一定の効果を確認。 レムデシビルや
モルヌピラビルなどの抗ウイルス薬は高い効果を維持していると発表した。