「提出した検体が、まるまる登録されていないことも…」 

  ――― 五輪組織委“ザルPCR検査”の大問題 

   なぜ陽性認定された審判員は“脱走”したのか? 

                          8月12日     文春オンライン 

 

 

 「 五輪の大会期間中の新型コロナの検査体制は、驚くほど杜撰でした。 “あの騒動”も、

起こるべくして起こったと思います…… 」

    【画像】五輪閉会間際、お台場の商業施設にお土産を求めて長蛇の列を作る関係者たち  

 

そう訴えるのは、五輪のある競技種目で技術役員を務める男性だ。  

五輪開幕に先立って来日した IOCのトーマス・バッハ会長が  「 しっかり執行され、効力を発揮し、

そして 成功している 」と胸を張ってみせた検査体制。   実際には 何が起こっていたのか――。

 

審判員男性2名がホテルから外出したワケ

  “あの騒動”とは 7月29日、新型コロナの陽性が確認されたボート競技の審判員男性2名が、

独自に医療機関で検査を受けるために、宿泊療養先のホテルから外出したこと。

翌30日に テレビ朝日が 〈 新型コロナ陽性の審判員2人 宿泊療養施設から無断外出 〉と報じ、

明るみに出た。  「 2人は 療養先のホテルに 陰圧車を呼び、ホテルの職員に施錠を解除してもらって、

医療機関へ向かったのです。大会の規則集であるプレーブックでは、陽性となった関係者には、

宿泊療養施設での隔離か入院が求められている。そのため、2人の行動はプレーブック違反では

ないかと報じられましたが、 組織委員会側の見解は 『 施設を抜け出したという行為ではない 』

という曖昧なものでした 」(五輪担当記者)  

 

   では、なぜ2人はわざわざ医療機関へ向かったのか――。  

背景には、検査体制への不信感があったという。 「 2人のうち 1人は日本人、もう1人は オランダ人の

審判員でした。 このオランダ人審判員は、奥さんが医師なのですが、自身が受けた検査について

奥さんに説明すると 『 その検査はおかしい。正確な検査を受けるべきだ 』と促されたそうなのです 」

                                                                                    (オランダ大使館関係者)

 

プレーブックに定められた二段階のPCR検査には 「杜撰な点が多い」

 プレーブックによれば、選手と定期的に接触する審判員は、毎日、唾液を用いた検査を受ける必要

がある。 唾液で 陽性反応が出た場合には、鼻咽頭による PCR検査を受ける。綿棒を鼻から喉の奥に

入れて検体を採取するもので、唾液よりも精度が高いとされる検査。鼻咽頭検査でも 陽性となれば、

隔離施設に移動することが定められている。

  ところが、この検査について、関係者の間で疑義が広がっている。前出の技術役員は こう訴える

のだ。 「 五輪関係者の検査を請け負っている民間業者の検査には、杜撰な点が多いのです 」

 

木下工務店で知られる木下グループが PCR検査事業にも注力

 今回 “脱走”した2人の審判員が受けた検査は、木下グループのものだったという。  

住宅メーカーの木下工務店のイメージが強い木下グループだが、同社は かねてより PCR検査事業

にも注力してきた。 昨年12月に 東京・新橋駅前に新型コロナPCR検査センターを開設。

仕事の出張前や帰省前に、陰性を確認して安心感を得たいという人々が連日詰めかけた。

    「 木下グループは、五輪やパラリンピックに向けて需要が増えるのを見込んで、体制強化を進めて

いたそうです。現在、検査センターは 都内5カ所に拡充。さらに、政府が この夏、羽田空港などからの

出発便に搭乗する人を対象に行っている無料のPCR・抗原検査も、同社が受注しています 」

                                                                                      (経済部記者)  

  五輪では 1日で 最大5~6万件の検査が行われるというが、実際には どのように検査を行っている

のだろうか?

 

自分が提出した検体の登録がない?!

  「 唾液検査では、各自、配布された透明の容器に唾液検体を入れて提出します。このとき、専用の

ウェブサイトに、容器に貼られた11桁のバーコード番号と、自身のアクレディテーション(参加資格証)番号、

生年月日を入力します。検査結果を 個人と紐付けるためです 」(前出・技術役員) 

 だが、そこであるトラブルが起きたという。 「 大会開幕からしばらくして、私の周囲で コロナ陽性者

が出たため、専用サイトで 自分の検体の登録状況を確認してみたのです。すると、提出したはずの

5日間分の検体が、まるまる登録されていないことが分かった。 私の入力にミスがあったのか、

サイト側の不備なのかは分からずじまい。 ただ、検体が登録されていないなら 注意喚起を促すような

仕組みがなければ、気付きようがありません 」(同前)  

   実際、組織委員会は 8月4日、検査で陽性が確認されながら 個人が特定できていないケースが

8件あると発表した。専用サイトへの登録ミスが原因とみられるという。 陽性でありながら、それに

気付かず 業務に従事していた関係者が 複数いる可能性があるのだ。

 

30分で結果が出る鼻咽頭PCR検査

   それだけではない。 唾液検査で 陽性反応が出たため、鼻咽頭PCR検査を受けたある競技関係者

は、こう語るのだ。 「 私が受けた鼻咽頭PCR検査も、正直、疑わしいものでした。陰圧車の中で検査を

受けるのですが、そこにいるのは 看護師とドライバーのみで、医師とは iPad越しに会話をするだけ。

そこでは『 検査結果が出るのは 30分ほど後になる 』と説明されました。 そして 実際に約30分後に、

鼻咽頭検査でも陽性だったと連絡があり、隔離措置となりました 」  

   じつは、この 「 30分 」 というのは驚くべきスピードなのだという。PCR検査を行う都内の医療機関

の関係者が語る。 「 ウチでは 結果が出るまで 最短でも 100分はかかります。陽性なら 早く反応が

出ることもありますが、『 恒常的に 30分で結果が出る 』のだとすれば、相当に簡易的な検査なのだと

推測されます。   そもそも 民間の検査は 簡易的なものなので、民間検査で陽性反応が出たら、

医療機関を受診するようにと指導されています。民間の検査結果で いきなり隔離というのは、かなり

乱暴な印象を受けます 」  

 

   無断外出とされたオランダ人審判員も、検査体制に疑いを抱くきっかけとなったのは、検査スピード

だったという。 「 彼の場合は、組織委に求められた鼻咽頭PCR検査の結果が 42分で出た。医師

である彼の奥さんは、結果が出るのが早すぎることに 『 それは 本当にPCR検査なのか? 』と疑問を

抱いた。 それで、医療機関による正確な診断を受けるべきだと助言したそうです。

  彼は 母国のボート関連のサイトに ブログを寄稿していますが、そこでも 検査への不信感を滲ませ

ています 」(前出・大使館関係者)

 

早く検査結果が出るのは 「五輪に向けて最新機器を導入したから」

 前出の競技関係者も言う。 「 なぜ こんなに早く検査結果が出るのか尋ねても、陰圧車のドライバー

が『 五輪に向けて 最新機器を導入したから 』と言うばかり。 医師による合理的な説明もありません

でした。 

 ホテルから外出した審判員2人について、プレーブックで定められている継続的な隔離というルール

から逸脱することには賛成できませんが、検査結果に納得が行かないという気持ちは理解できます 」

  木下グループに検査システムについて聞いたが「 組織委員会との契約上、五輪の検査に関しては

コメントできない 」との回答だった。また、検査体制の不備について 組織委員会に見解を問うたが、

期日までに返答はなかった。  

 

  前出の技術役員が嘆息する。 「 これから、パラリンピックも始まります。パラでは 基礎疾患を抱える

選手も多い上、介助者などの大会関係者も増える。より一層正確な検査体制が求められるはずなの

ですが、いまのままで果たして大丈夫なのでしょうか 」 

 パラリンピックの開幕は 8月24日。選手や関係者、さらには 国民が安心できる検査体制の整備が

求められる。

 

 

 

 

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                                        2021/05/29