6月30日

白熱するユーロの裏側。注意喚起はあったものの観客数100%のブダペストでは

                                了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko       Sportiva

 

  ユーロ2020は 決勝トーナメント 1回戦が終了した。 白熱する試合もさることながら、久々に観客を

入れたスタジアムが、コロナ禍での無観客に慣れてしまった目には刺激的だったのではないだろうか。

分散開催となった 今回のユーロは、10カ国11会場で行なわれているが、観客数の制限は開催地

によって異なる。 

  そんな中で、ハンガリーの首都ブダペストのプスカーシュ・アレーナでは、唯一、満員の観客収容が

認められていた。 プスカーシュ・アレーナで行なわれたのは グループリーグ3試合と決勝トーナメント

1回戦の計4試合だ。

  1試合目は 6月15日(現地時間)。地元ハンガリーが 前大会王者ポルトガル0-3で敗れたが、

この時の観客数は 5万5662人だった。2試合目は 同じくハンガリーが優勝候補フランスを迎えて

観客は 5万5998人。 3試合目ポルトガル対フランスで 5万4886人。

最後は チェコ オランダを 2-0で破った決勝トーナメント1回戦で、5万2834人だった。  

 グループリーグの2試合、ホーム戦となったハンガリーの観客は、圧倒的な迫力で試合をサポートした。

選手たちも、本来の姿に戻ったスタジアムに喜んだ。  

  初戦のポルトガル戦後、ハンガリーのマルコ・ロッシ監督は こうコメントした。 「 今日のような観客の

声援があれば、もっと多くの試合に勝つことができるだろう。選手たちは 全力を尽くしたが、試合最後

の10分間に起こったことは 分析が必要だ(ハンガリーは84分からたて続けに3失点した) 」  

  また、控えGKディブス・デーネシュは 雰囲気を感じる余裕があったようで、スタジアムの様子を こう

語っている。 「 スタジアムに近づくと、何万人ものファンが出迎えてくれて、誰にとっても 高揚感を

もたらしてくれた。試合中のファンの声援は、大きな力になった。負けはしたが、チームは 全力を尽く

したからこそ ファンは試合後にも声援を送ってくれたのだろう 」  

    続く第2戦では、世界王者フランスと1-1で引き分け、勝ち点1をもぎ取った。もし 満員の観客の

後押しがなかったら、この結果がもたらされたかどうか。

ロッシ監督は試合後、「 代表では 魂を込めてサッカーをしてほしいと選手たちには話をした。ポルトガル

には敗れたが、フランスとは引き分けた。ハートが 一番大事なんだ 」と語っている。気持ちで戦うこと

を大事にする熱いチームだからこそ、ホームの大声援は 大きな後押しになったはずだ。  

  一方、同点ゴールを決めたフランスのアントワーヌ・グリーズマンは「 満員の観客で自分たちを失って

しまった 」と告白。 ディディエ・デシャン監督は「 ハンガリーの選手は 人生をかけて戦っていた 」と、

対戦相手を称えた。  

 

  満員のスタジアムが可能になったのは、ハンガリー人の観客については ワクチン接種が完了している

ことが条件だったためだ。国外から来た観客の場合は、PCR検査で陰性が証明できればよかった。

欧州の中でも ワクチン接種が進んでいるハンガリーでは、独自のワクチンパスポートが普及しており

(プラスチックのカードの形状)、カフェなどに入店する際も当然のように提示を求められる。  

 

  それでも、満員のスタジアムに 誰もが賛成していたわけではない。グループリーグでハンガリーと

同組だった ドイツは、グループリーグを ミュンヘンで戦ったためにブダペストには行かなかったが、

アンゲラ・メルケル首相は「 気をつけるように 」と、注意を喚起。  また、ドイツで 中継を行なっていた

インターネット放送局では、バイエルンのウリ・ヘーネス元会長が「 悪いシグナルを感じる。何事も

起きないことを祈るしかない 」と、懸念を表明していた。  ドイツの政治家で疫学の専門家でもある

  カール・ラウターバッハ氏は「 欧州の半分と世界の貧しい国の95%が ワクチン接種していないのに、

まるでパンデミックが終わったかのような振る舞い。無謀でスポーツマンシップに反する 」と、SNSで

大批判を展開した。  

 

   筆者は 実際に、ポルトガル対フランスの一戦を観戦するために プスカーシュ・アレーナを訪れた。

満員のスタジアムでは、ほとんどの観客がマスクをしていない。場内アナウンスでは、「 人との距離を

とりましょう 」「 マスクをしましょう 」などと呼びかけていたが、誰も耳を傾けていない

 

◆ポルトガルのユーロ敗因は ロナウドか。36歳の絶対的エースをどう向き合うべきか  

 

   ポルトガルとフランスからのサポーターも目立ったが、やはり多いのは 地元ハンガリーの観客。

試合当日は 気温が36度にまで上がり、上半身 裸になり、大声で声援する人が増えていく。さらに この

スタジアムでは アルコール類も販売されていたこともあって、場内の興奮度は時間とともに恐ろしい

ほど上がっていった。 

   ちなみに、場内が もっとも盛り上がったのは、ミュンヘンで同時刻に行なわれている ドイツ対

ハンガリー戦で、ハンガリーが得点を挙げた時だった。  各スタジアムでは、決勝トーナメントに入って

から観客数の拡大を認めるところも増えている。グループリーグは 定員の25%までの観客でスタート

したロンドンのウェンブリースタジアムだが、準決勝と決勝の3試合は 定員の75%まで入ることが

認められ、いずれも 6万人以上が観戦に訪れる見込みだという。  

   スタジアムの観客の声援が 選手たちを鼓舞し、試合を白熱したものにしているのは確か。

ユーロでサッカーを観戦する楽しみは 復活した。だが、場外では まだ懸念する声が絶えない。開催地

のひとつ ロシアのサンクトペテルブルクでは、訪れたフィンランドのサポーターに数百人レベルの

クラスターが発生したと報道されている。 

  完全に安心して 観戦できる状況にはまだ程遠い、ということは明らかだ。

 

 

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         スコットランドでもコロナが猛威…約1500人の感染者がユーロ観戦と判明

                                                 6月30日        超ワールドサッカー 

      ユーロ2020を観戦したファンが 新型コロナウイルス(COVID-19)に感染するケースが報告

     されている中、スコットランドでも大きな問題となっているようだ。 イギリス『スカイ・スポーツ』

     が報じた。

 

      先日は、フィンランド代表を応援するために ロシアのサンクトペテルブルクへと旅行した

     ファンたちが、新型コロナウイルスに感染。 ロシアは デルタ株(インド株)が流行していた中、

     フィンランド国内で 約300件の感染が確認されたと発表されていた。
           ロシアからフィンランドに戻る約3000人の内約800人のコロナウイルス検査を行っていなかった

     という報告もあり、大きな問題となった中、スコットランドでは それを超える報告があるようだ。

            スコットランド公衆衛生局(PHS)によると、確認されている1991件の新型コロナウイルスの感染

     のうち、2/3にあたる人が 18日に行われたユーロ2020ののイングランド代表vsスコットランド

     代表を観戦していたと答えているとのことだ。
      また、そのうちの397人は
ウェンブリー・スタジアムを実際に訪れたファンとのことだ。

      PHSの報告によると、55件はグラスゴーでのファンゾーン、38件はハムデン・パークでの

     スコットランド代表vsクロアチア代表、37件はスコットランド代表vsチェコ代表に関連している

     という。
      また、スタジアムやファンゾーンのみならず、パブや家でのパーティなど非公式な集まりで

     試合を観戦した人も多くいるという。

                            ※ 当時の画像    日テレNEWS24
      その結果、1470件がユーロ2020に関連しており、20歳から39歳で9割が男性だということ

     もわかったようだ。

      なお、このイングランドvsスコットランドでは、チェルシーに所属するスコットランド代表

     MFビリー・ギルモアが新型コロナウイルスの陽性判定を受け、隔離措置をとることとなっていた。