【時視各角】今のコロナ対策ではダメだ

                    中央日報 /中央日報日本語版 2020.03.03 

 

  2014年初め、西アフリカでは致命的なエボラ出血熱が流行り、1年で1万700人余

が亡くなった。これといった治療薬がなく、感染すれば40%以上が出血の後に死ぬ

という原因不明の病気だった。だが、この病気の本当に恐ろしさは 別のところに

あった。エボラで亡くなった患者よりも、医療システムの崩壊で犠牲になった死亡者

のほうが多かったのだ。

  当時、医者や看護師そして 病床など、ほぼすべての医療資産が エボラに集中したため

他の患者は後回しにされた。このため、前年に比べて マラリアによる死亡者だけで

1万900人余りも増えた。 アフリカでは マラリアだけでなく、はしかや肺炎、下痢病、栄養失調

および出産などで亡くなる ケース が多い。 このことを考慮すると、医療システムの崩壊に

伴う 犠牲者は エボラ死亡者の数倍に達する というのが 専門家の分析だ。

 

  あえて 5~6年前のアフリカ事例を引き合いに出したのは、今、韓国社会が同じような

危機に直面しているためだ。 信じたくないが、現在の韓国は 新型コロナウイルス感染症

(新型肺炎)にかかっても、どこで どのように感染したのか分からない「地域社会(市中)

感染」段階に入った。 無症状者が多いうえ、発病初期でも 感染力が強い特性のため、

近い将来 全国的に原因不明の病気が吹き荒れる公算が大きい


  大邱(テグ)・慶尚北道(キョンサンブクド)で感染者があふれ、ここだけ防げば 大丈夫と思う

のは 大きな間違いだ。 これまで、この地域の新天地教徒を集中的に検査したため 

このような結果が出ただけのことだ。 他の場所で 同じように調査していたなら、感染者

の分布は変わっていただろう。


  昔から感染病が広がれば 対策は 大きく2つだった。 

1つ目は封鎖・隔離だ。汚染地域は外部から孤立させて、感染も 医療スタッフ以外は 

誰とも接触できないようにするか、いっそ閉じ込めてしまうやり方だ。 今回 中国政府が

取ったのが 強力な封鎖・隔離措置だった。 

2つ目は 感染病の流行を 既成事実として受け止めた後、重症者だけを治療するやり方だ

症状が 概して致命的ではない風邪などに対応するやり方で、日本がこのやり方を選んだ

ようだ。


  韓国は どちらか。 我々は 中国の凄じい感染状況と混乱に恐れをなしたためか、最初

から症状の軽重とは関係なく、とにかく 感染者を捜し出して隔離した。全体的な病床規模

や医療陣状況などを綿密に考慮することもせずにだ。 その結果、格別な症状のない

軽症者は 病院の食事を食い減らして 重症者用陰圧病室に 横になっている場合が多い。

当の重傷者には 病床がなく 自家隔離中に死んでいくということだ。

 

 世界保健機関(WHO)では称賛が高いといっても、中国式の封鎖・隔離モデルは 韓国

では 到底使うことはできない。 「大邱封鎖」云々するだけでも 与党報道官が追出される

というところなのに。 自家隔離中の感染者や感染が疑われる人が 外に出るため完全に

防ぐ方法がない。


  だから 今は 韓国の状況に合うように 誰彼構わない感染者探しや隔離ではない、

新たな方法を探さなければならない。 病床不足もそうだが、今のように医者や看護師が

多忙を極める状況で この先 どれほど持ちこたえられるというのか。マラソン競争を100m

短距離走のように走ってはいけない。


 米国と日本では、相当期間の高熱と乾いたせき および咽喉痛などがないと コロナ検査

は行わない。これに対して 「 米国大統領選挙と日本オリンピック(五輪)開催を意識した

消極的対応 」という陰謀説も出ているが、それぞれ 明確な論理がある。

「 手当たり次第に 軽症コロナ患者まで入院治療すれば医療システムが崩壊して、寸刻を

争う急病患者が治療できなくなる 」という主張だ。


  実際、韓国社会では 毎日のように急病患者があふれている。交通事故だけでも 昨年 

21万件余りが発生して 32万人余りが ケガして 3700人余りが亡くなった

産業現場でも 10万人余りのケガ人が出ているし、このうち 2100人余りが犠牲になった

今のように新型コロナだけに オールイン していれば、このようなケガ人は もちろん、心臓まひ

など急病患者さえも まともに治療受けられないまま犠牲になってしまう。 今からでも 

大きい絵を見るようにして、新型コロナに対抗することが 全社会的な犠牲を減らすことが

できる正しい道だ。


ナム・ジョンホ/論説委員

 

                                           

 

  ■  まぐまぐニュース   2020.03.04

 

 原発事故と同じ構図。新型肺炎に官僚システムが太刀打ちできぬ訳

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