インフルエンザは、かぜ症候群を構成する感染症の一つであり、症状の程度によっては 普通のかぜと

見分けにくいことから、特に 我が国においては、一般のかぜと混同されることが多い。

  しかしながら、一般に インフルエンザの症状は重く、特に高齢者や心臓病などの基礎疾患がある場合には

重症化しやすい傾向があると言われ、肺炎や脳症などの合併症も問題となっている。

 

  インフルエンザは、時に大流行して 多くの犠牲者を出すこともあり、過去の世界的大流行としては、

1918(大7)年に始まった「スペインかぜ」、1957(昭32)年の「アジアかぜ」、1968(昭43)年の「香港かぜ」など

がある。中でも、スペインかぜによる被害は甚大で、死亡者数は 全世界で 2,000万人とも 4,000万人とも

言われている。(厚生白書平成12年版)

                                    死者数(人)    致死率

     1918年 スペイン風邪 H1N1型    4000万    2.0%

       1957年 アジア風邪  H2N2型       200万     0.5%

          1968年  香港風邪   H3N3型      100万      0.5%

        ※ 季節性インフルエンザは 日本で 1万人前後の死者数  (致死率 0.1%)

     ※ スペイン風邪: 当時の世界人口は 18~20億人と推定されているため、全人類の3割近くが

       スペイン風邪に感染したことになる。感染者が最も多かった高齢者では 基本的にほとんどが

       生き残った一方で、青年層では大量の死者が出ている。 1918年1月 ~ 1920年12月

      日本では、39万人が死亡(全人口 5,500万人)、アメリカでも 50万人が死亡した。

   

日本におけるスペインインフルエンザの被害
流行 患者 死者 致死率
1918(大正7)年8月-1919(大正8)年7月 2116万8398人  25万7363人 1.22%
1919(大正8)年8月-1920(大正9)年7月 241万2097人   12万7666人 5.29%
1920(大正9)年8月-1921(大正10)年7月 22万4178人     3698人 1.65%
合計 2380万4673人  38万8,727人 1.63%

    

  高齢者を中心とする慢性疾患を有する者が罹患すると、肺炎を併発するなど重症化する場合が多く、

特別養護老人ホームにおける集団感染の問題や、インフルエンザによる死亡者の約80%以上を 高齢者が

占めることなど、高齢化が進行している我が国にとって インフルエンザはますます大きな脅威となっている。

さらに、近年、乳幼児において、インフルエンザに関連していると考えられる急性脳症が年間100~200例

報告されている(現在研究が行われている。)。 (厚生労働白書平成16年版)

 

 

 日本における インフルエンザ死亡数

          

  1957年の「アジアかぜ」による ピーク 7,735人から、1970年代まで インフルエンザ死亡者数は、

おおむね、減少傾向をたどり、1980年代~90年代前半は、千人以下の少ないレベルに止まっていた。

ところが90年代後半から 大きく増加する年が目立つようになり、2010年以降は 増勢の傾向が認められる

 気候変動国際観光流動高齢化栄養状態検査法など、何らかの傾向的な変化と連動しているか

どうか、気になるところである。なお、近年の死亡者の8割以上は 65歳以上の高齢者である
 

 

           

    ※ インフルエンザによる死亡については、直接の死因がインフルエンザではなく、肺炎等の

    他の疾患による場合は、死因別死亡数にはあらわれない。従って、WTOや厚生労働省では、

    超過死亡(excess death, excess mortality)の概念でインフルエンザによる死亡数を推計している。

    これは、インフルエンザが流行した年に 通常年と比較して 死亡者数が多くなった場合、

    それをインフルエンザによる死亡と見なす考え方である ( 具体的には インフルエンザ 以外の諸要因

     による死亡者数をベースラインとして推計し、実際の死亡者数との差を インフルエンザ による超過死亡とする)。

      図には 国立感染症研究所による超過死亡概念による推計死亡者数を掲げたが、当然とはいえ、
    直接インフルエンザを死因とする死亡者数をかなり上回っている

 

 
         
         
         
         
 
 

 

     新型インフル:ウイルスは弱毒性 田代WHO委員

                                  毎日新聞 2009年4月30日

ジュネーブ澤田克己】感染が広がる新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の世界的大流行
(パンデミック)への警戒レベル引き上げを討議した世界保健機関(WHO)緊急委員会委員の
田代真人・国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長は28日、記者会見し、今回の
ウイルスは「弱毒性」との見解を示した。強毒性のH5N1型鳥インフルエンザが新型に変異した
場合に比べ「それほど大きな被害は出ない」とみられ、「全く同じ対策を機械的に取るのは妥当
でない」と述べた。
 田代氏は毒性について「今後、遺伝子の突然変異で病原性を獲得しないという保証はない」
としたうえで、遺伝子解析の「予備的データ」の結果として、現段階で「強い病原性を示唆する
ような遺伝子はない」と「弱毒性」との認識を示した。
 被害については、現在の毒性が変わらなければ、パンデミックを起こしても、約200万人が死亡
した57年の「アジア風邪くらいかもしれない」とした。数千万人規模の死者が想定される強毒性
H5N1型と「全く横並びに判断していいものではない」と話した。
 致死率などについては、疫学的調査が終わっていないため「実際の数字は分からない」と説明。
その上で、メキシコで感染が疑われる患者が1000人を超える一方、同国以外は 数十人規模である
ことから「 割合からすれば(他の国で多くの)重症者が出なくても当たり前かもしれない 」と
述べた。
 対策については H5N1型に比べ「 健康被害や社会的影響は大きく異なる。全く同じ対策を
機械的に取ることは必ずしも妥当ではない。フレキシブル(柔軟)に考えていく必要がある」と述べた。
 日本の対策については「 少しナーバスになり過ぎている所があるかもしれないが、後手後手に
なって大きな被害が出るよりは、やり過ぎの方がいいかもしれない 」とした。
また、「 風邪というような判断で特別な検査に至らない状況がある 」と発見の遅れに憂慮を
示した。
 また 同氏は、新型インフルエンザ ウイルス は、北米型とユーラシア型の豚インフルエンザウイルスに、
人と鳥のインフルエンザウイルスを加えた4種類の遺伝子が混合したものと説明。「H5N1型に
よる大流行のリスクが減ったわけではない」と、警戒を怠ることは危険だと警告した。

 

 

   参考:  毎年4000人近くの人が交通事故で亡くなっているという事実は、極めて深刻である。

 

 

   自殺者数の推移

自殺者数の推移