わたしが動くと音が響くだけ…
少し開いてる扉の向こうで一体何をしてるのだろう……
赤ちゃんはどこにいるの…
泣き声も聞こえない…
何かあったのかな…
誰かに聞きたいけれど誰もいない…
嫌な予感がして、心臓がどきどきする…
その時、看護婦さんの声が聞こえてきた。
「こちら⚪⚪産婦人科です………………………………
搬送できますか?」
えっ………?
搬送………?
誰を………?
どこに………?
よく聞こえない………。
だけど、心臓がもう飛び出してしまいそうな程、ドクドクいってる………
また、同じ看護婦さんの声…
「こちら⚪⚪産婦人科です………………………」
どこに電話してるの………?
誰の話をしてるの………?
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
と、同時に扉が
バタンッ❗
と、閉まった………
その後、直ぐに
ピーポー!ピーポー!
救急車の音?
静かな夜に、救急車が鳴り響いてる………
もしかして、段々音が大きくなってる?
なってる?
なってるかも?
なってるよっ!
病院の前で止まった………
救急隊員の人が入ってくるのが聞こえる…
看護婦さんの声
「よろしくお願いします」
「待ってください!誰か来てください!お願いします!お願い…」
慌てて看護婦さんが来てくれました。
「どうしました?」
「救急車来てますよね?わたしの赤ちゃんですよね?運ばれるの?違いますか!違いますか?」
「誰に聞いたんですか!?」
「ごめんなさい、電話の声を聞いてしまいまし た…」
「そうでしたか……」
と、看護婦さんは考えた様子で
「赤ちゃん、熱があります。そして、お母さんも。お母さんはこのまま安静にしていれば大丈夫だと思うのですが、赤ちゃんは羊水をお腹の中で沢山飲んでしまっていて、今から大学病院に救急搬送することになりました。」
わたしは、よくわからなかったけれど、理解しようと必死でした……
「赤ちゃん、もう救急車に乗ってますか……?」
「今、乗るところですよ」
「赤ちゃんに、逢わせていただけますか?」
「えっ?今ですか?お母さん……大丈夫ですか?」
「わたしは、大丈夫です!だから、お願いします!救急車に乗る前に一目だけ!」
また少し考えた様子で
「わかりました。車椅子持ってくるのでお待ちくださいね」
数分だったはずなのに……
まだかな?……
救急車行っちゃう……
赤ちゃん、待って……
「お待たせしました。ゆっくり座ってください。本当は会わせてはあげられないんだけど、特別ですよ。お母さん本当に大丈夫?」
「大丈夫です。」
扉を開けると……
そこには、保育器に入って寝てるように見える赤ちゃん……
「かわいい……かわいい……頑張ってね……一緒に行けなくてごめんね……」
救急隊員の方もギリギリまで待ってくださいました……
看護婦さんは、わたしの手をぎゅっと握っててくれました……
「では、搬送します………」
エレベーターまで見送って………
だけど、笑顔で見送れなかった………
わたし、お母さんなのに………
涙がとまらなかった………
つづきます…