薄暗い林道沿いの小さな公園で静かに揺れるブランコ
ある有名温泉地から少し降りた場所に、あまり車の通りがない古い林道がある。林道を進むとゴルフ場があり、その横を通り過ぎると景色は一変する、道は狭くなり薄暗く通り抜ける者を拒絶するかのような圧迫感がある。そんな林道を程なく進むと、あまり日の当たらない場所に小さな公園があり、山の北面にある林道の為、比較的日当たりは良くないのだが、わざわざ薄暗い場所に公園はと思う。そこには1つだけの簡易トイレと、奥に小さな手作りの古ぼけたブランコがある。そのブランコは、夕暮れから深夜にかけてゆっくり〝ゆらゆら〟とまるで人が乗っているかのように揺れているのです。はるか昔、この場所に炭焼き小屋があったそうです、そこには実直な若者が毎日近くの山で木を伐り、まあるい手作りの炭焼き窯で炭を作り知り合いの温泉旅館に卸していたそうです。そんな若者は、今日も温泉旅館に炭を卸しにやってきた。そこに都会から対人関係に疲れ、この地方にやすらぎを求めて来た女と偶然出会うのです。2人はまもなく恋に落ち、一緒に暮らし始め、しばらくして一人娘を授かり3人で仲良くほそぼそと暮らしていました。家族は幸せだったが、生活は苦しく炭焼きだけでは食べていくことは大変でしたある時、母親は近所の農家にいつものように手伝いに出掛けていました、そこには隣村から若い農夫が大きな農機具を動かして広い畑を耕していたのです、母親はその光景を見つめていました。母親はこの村に来て自分より年齢の若い人を見るのは久しぶりで、体の中の血が騒ぐのを抑えきれませんでした。何日か農家で出会う事で自然と男と女の関係になり、母親は家族の事を忘れ若い男にのめり込んでいったのです。母親の帰りを待つ父と娘は、農家が忙しく帰ってこられないのだろうと親子二人で過ごしていたのです、しかし父親は炭焼きに没頭し炭焼き小屋に寝泊まりし、娘は1人家にいる事が多くなりました。それはそれは寂しく、1人ずっとブランコに乗って両親の帰りを待っている生活が続いたのです。ある寒い冬の夜、風邪を拗らせたのか?熱もありフラフラしていたが、寂しさが勝りいつものように表のブランコで1人両親の帰りを信じて待っていたのです。しかし両親は帰るはずもなく、娘は冬の凍える夜、短くさみしい一生を終えたのです。それからというもの、夜になると凍るような風と共にブランコは揺れ、今でも両親を待つ娘さんが現れるという。