ホテルダイニングが変わり始めていると思う今日この頃。

通常ホテルでは、仕入れは購買部を通して行うことが多い中、ホテル直営でありながら、独自の仕入れを保つ、そんな寿司店が、武蔵byアマンです。

 

親方の武蔵弘幸さんは2018年9月まで、ミシュランで一つ星を獲得した青山の寿司店「武蔵」の店主として活躍。その味に惚れ込んだアマン東京が数年かけて口説き落とした末に、12年間続けた店を閉め、同年10月からアマン東京内に新しくオープンする寿司屋の親方として迎え入れられたのです。

 

武蔵さんは元々、山梨県・中央市で寿司屋の二代目として生まれ、甲府の店から数えると35年のキャリア。現在も、昔から付き合いのある豊洲(当時は築地)の店を使っています。

 

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箸は、吉野杉の八角箸、長めで適度な重量感があり、安定して使える、なんとも贅沢な作り。

 

檜のカウンターは元の店のものと新しく継ぎ足したもの。元のカウンターは14年使っているのにピカピカ。お手入れの秘訣は牛乳で磨くことだとか。

 

暑かったので、まずはシャンパンでスタート。デュヴァル・ルロワの、ブリュット・レゼルヴ。

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本日は、ランチのコース(通常は握りのみ)に、特別にお願いしてつまみも数品出していただきました。

 

毛蟹、蟹味噌、ミニオクラ、ミョウガ、ラディッシュ。

 

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蟹というと甘い蟹酢を合わせるイメージがありますが、塩気も酸味もしっかりした、ポン酢のような味のバランスで甘くないのが印象的でした。

 

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アペタイザーの3種盛りは、

左から

・ホシガレイの昆布締め、利尻昆布でかなりしっかりしめたもので「はだて」の生うにを巻いたもの。

・土佐清水のカツオに紫蘇、ねぎ、生姜、茗荷と4種類の薬味を合わせて。

・芽ジソを巻いた生のノドグロ。ノドグロの鮮度の良さが印象的。

 

こちらも、醤油を少しつけていただくスタイル、この醤油も、ごく少量の煮切り酒とみりんを足しているだけとのこと。甘味が舌に残らない醤油でした。

 

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大豆の甘味が感じられる湯葉、大トロのあぶり、同じホテル内のイタリアン「アルヴァ」の平木シェフが香川のキャビア会社と共同開発した、アマンオリジナルキャビア。塩分2%未満の優しい味わい、非加熱だけあって、とろりとした食感。

 

器は、陶土から自分で作っている奈良県の田中さんという作家の方のもの。

 

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続いては、穴子ときゅうりを丸山海苔で巻いた、あなきゅう。

焼き立ての穴子とひんやりとしたきゅうりの温度の対比、そして上質な海苔の旨味が楽しめます。

ピリッとしたアクセントは、黒七味。その山椒の香りが、穴子にもきゅうりにもよく合います。

 

ここからは、武蔵オリジナルの日本酒。宮城県の新澤醸造で若い女性杜氏が作ったという日本酒は、バナナのようなイソアミル系の果実感を感じる、えぐみの少なく優しい味わいのもの。

 

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お猪口は堀口切子のもので、好きなデザインを選べます。

 

ここから握りに入ります。

酢飯は粒感を感じるもので、米酢のすっきりとした味わい。握りはやや小ぶりの流線型。今年は山梨県大泉町で、オリジナルのお米を育てているそう。

 

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キスは青柚子でさっぱりと。



ホシガレイはプリッとした身質を活かして、ポン酢と、山葵の代わりに一味、ちょっとふぐ刺を食べているようなバランス。

 

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つまみと同じカツオは、生姜醤油に軽く漬けてもっちりとした食感を際立たせて。

魚に味をあまり加えすぎず、塩の効いた酢飯で魚本来の甘味を感じさせるスタイル。

煮切りも甘味控えめ。「みりんは使っているけれども、普通の店の半分くらいの量ですよ」と武蔵さん。

 

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コハダは2日間寝かせ、しっかりと塩気を抜いてから酢に漬けたもの。酢が立ちすぎることもなく、後味に脂の乗り始めたコハダの脂の余韻と、香りがふんわりと感じられます。コクがあり、バランスの良いコハダでした。

8月の熱帯夜続きから、朝夕がひんやりと感じられるようになった今日この頃、そんな今の季節を感じる味わいでした。

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仕込み終わったコハダを見せていただきましたが、きっちりと腹の部分の皮まで活かして捌いてあり、香りを逃さない理由はこの辺りにもあるのかも、と感じます。

 

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本マグロは釜石の170キロ、7日前に上がったもの。赤身ですが、ヅケにせず、軽くツメを塗ったもの。ツメといっても、醤油に煮切り酒、ごくわずかなみりんを加えただけのもの。夏らしいほのかな酸味、滑らかな身質、繊細な味わいを堪能できます。

 

中トロも、やや赤身よりの上品な味わいのもの。

 

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脂の乗ったシマアジは、身に塩味をあまり加えず、間に挟んだ醤油とネギのペーストで塩分を加えます。仕上げにレモン汁を絞って。

 

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蒲郡の車海老。甘味を感じるものを、常温で。

 

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大トロ。独特のナッティさはこれからでしたが、しっかりと上質な脂が乗っていて、楽しめました。

 

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九州のスミイカとはだてのウニ。シャキッとしたイカと、とろりとしたウニのコントラスト。噛むたびにイカとウニの濃厚な味わいが広がります。

 

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とろける穴子。他のものよりはやや甘いものの、あっさりしたツメ。

 

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酢〆にした大阪湾のいわし。腹側の脂の乗った部分、磯の香りが楽しめます。

 

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とても気に入ったものの一つ、イクラ。味を入れすぎないので、まるで卵黄のような自然なコクをそのまま楽しめます。

 

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アジの胡麻醤油、スダチのアクセント。

 

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印籠風にしたスミイカ。こちらにも穴子と同じツメを。

 

しじみの味噌汁。

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卵焼きは甘く、山芋がたっぷり。

 

デザートはシャインマスカット。

 

お椀のお出汁も味見させていただきましたが、利尻昆布、本枯れ節に宗田節、干し椎茸を入れたこっくりとした出汁でした。「一時期蕎麦屋で働いていた時期もあって、その出汁を参考に、しっかりと旨味のある出汁にしようと思いました」一番出汁ではなく、20分ほど煮出しているそう。

 

夜の営業後、毎朝5時には豊洲に行くのだとか。

 

びっくりしたのは、板場の中を見せていただいた時。下がなんと、絨毯敷。そして、その下の白木のスノコまでピカピカなこと。

水を流して掃除するというイメージを覆される清潔さ、もちろん魚臭さは皆無。

「前は営業後に妻と2人で掃除していたので、もっと大変でした」と事もなげにいう武蔵さん。

 

マグロやクエなど、大型の魚はエイジングするものの、基本的に鮮度の良い魚の旨味や甘味を塩を効かせた米酢の酢飯と共に味わって欲しいという武蔵さん。全国約10箇所の市場から直接取り寄せた魚が楽しめます。

 

しっかりと香りの残ったコハダなどの光り物、そして新もののイクラが特に印象的でした。

 

ランチ握り8貫1万1000円、15貫2万円。贅沢なひと時が楽しめます!

 

 

 

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■武蔵 by アマン
営業時間:ランチ 12:00〜13:00(L.O.) ディナー 17:30~20:30(L.O.)、

当面の間、日〜水曜休
住所:〒100-0004 東京都千代田区 大手町1-5-6 大手町タワー アマン東京内(34階)
電話:03-5224-3333 
URL : https://www.aman.com/ja-jp/resorts/aman-tokyo/musashi-sushi-restaurant