2009.03.16(月)| 仲山今日子アナのblog一覧≫


  

キーワードは「カエル!ジャパン!」

私のプロフィールにある、「神奈川県ワークライフバランス委員」を見て、なんじゃそりゃ?と思われた方もいらっしゃると思います。

そもそも、「ワークライフバランス」って何?という疑問から。

例えば。
残業続きだったり、通勤時間が長すぎたりなど、仕事が忙しすぎて、出会いがない、とか。
子どもが生まれて、家族と過ごす時間を大切にしたいけれど、そんな余裕がなく、一人で子育てをしなくてはならない奥さんから、大変だから2人目は無理、と言われた…、とか。
非正規雇用で働いていて、仕事を失ってしまい、結婚どころではない、・・・とか。

最近問題となっている少子化も、仕事と、それを取り巻く環境が、大きな原因になっているんじゃない?

と、いうことで。簡単にいうと、雇用形態を含めた、これまでの仕事のあり方を、みんなで見直しましょう、というお話です。

そこで、内閣府と厚生労働省が「カエル!ジャパン!」という言葉をキーワードに、より働きやすい社会のため、どうしたらいいのかを考える委員会を発足させたのです。具体的には、新しい雇用を創ることを含め、仕事を多くの人で分け合って、一人当たりの負担を減らしたり、働く人みんなが、仕事の仕方自体を見直したりして、プライベートの時間を取れるようにする、など。

もちろん、地域ごとに特性は違うので、県単位で、具体的な数値を含め、どのような目標を立てればいいのかを提言しようと始まったのが、今回の神奈川労働局ワークライフバランス委員会。私が務めているのは、その委員です。

最初お話をいただいたときは、労働法の有名な大学教授や、元横浜市副市長の前田正子さん、銀行の総合研究所の研究員の方に混ざって、私の名前が「学識経験者など」という肩書きに納まっていて、驚くと同時に、すごく緊張しました。大学では国際経済を勉強していたし、ワークライフバランスとはまったく縁のない世界の私が、「学識」でいいのかなあ・・・と、周りのみんなに相談したら、「学識経験者」じゃなく、仲山は「など」に入るんだよ、と言われて、なんだか安心しました。



「など」仲山

 

それでも、いったい何が言えるんだろう?と、ドキドキしながら参加した委員会。


 

悩みつつ、たどり着いた結論は、私は専門家じゃないからこそ、普通の、子どもを持ち、働く母親の代表として発言しよう、ということ。
神奈川の特徴として、30代の、いわゆる子育て期の女性の就職率が低いことがあげられます。



↓ちょっと拡大↓

例えば、35~39歳の女性就業率は、全国58.9%に対し、神奈川は52.3%

 

でも、周りの専業主婦の友人に聞いてみると、仕事をしたくないのか、というと、そう言う訳でもないようなのです。

では、「働かない」のはどうしてなのか。その答えは、「働けないから」という部分もあるのではないでしょうか?

自分自身の経験の中に、そのヒントがあるような気がしました。女性はいったん仕事を辞めてしまうと、就職活動しようにも、その間に子どもを預ける場所がなくて苦労するのです。私も、国の一定の基準を満たした、「認可」と呼ばれる、いわゆる公立の保育園は、待機児童がいっぱいで入園できず、無認可の保育園をやっとの思いで見つけて子どもを預けた経験があります。今は、運よく、理解ある会社に恵まれて、仕事との両立で悩むことはありませんが、そんな現状について、お話させていただきました。

それに対し、横浜市の元副市長で、実際に保育園の設置に関わってきた前田さんより、高額な費用がかかるため、自治体の今の財政状況では難しいという説明がありました。

とはいえ、前田さんも指摘されていたのですが、他の先進国と比べ、日本の子育て支援の費用は、圧倒的に少ないのです。(ヨーロッパ諸国がGDP比約2%に対し、日本は0.8%)
また、国や自治体の支援が、すべての事業所にいきわたる段階にないことは、問題だと思います。

厚生労働省も、コンサルタントの派遣などを通して両立を支援する、モデル事業を始め、県内では横浜銀行と日揮が選ばれました。どちらも、社員数が4000を超える、大きな企業です。

もちろん、スタートしたばかりなので、受け入れる基盤も人材もそろっている規模の大きな企業を最初に、というのは分かります。しかし、本当は、大きな企業が取り入れるのを助けるだけでなく、経済的な基盤がしっかりしない、中小企業を積極的に援助しなければ、格差は広がるばかりではないでしょうか?

他の委員の方からも、「むしろ中小企業に対する支援が必要」という声が上がり、担当の方は、今後はそれも視野に入れて考えたいと話されていました。

そして、今年度3回にわたり行われた話し合いの結果、中小企業への支援や、女性や若者、高齢者を積極的に雇用すること、などが盛り込まれた「神奈川の指針」が、事務局を通して厚生労働省に報告されることになりました。

私が、今回の委員会で気づかされたのは、ワークライフバランスは、「=子育て支援」ということでは決してなく、子育てをしていない人にも深く関わってくる問題だということ。その中でも、今後更に問題になってくると予想されているのは、介護です。

現在、同居する介護者の4人に1人が男性。今後、男性の非婚率が上がっていくと、独身男性の介護者がますます増え、15年後には、育児で休業する女性よりも親の介護で休業する男性のほうが多くなるという試算もあるということです。
現在、独り立ちできるほどの給料がないなど、経済的な事情も含め、実家の親に頼って生活している人たちが、介護のために仕事を減らしたり辞めたりすると、福祉費用のますますの増大にも繋がり、少子化とあいまって、日本の経済は先細る一方とも考えられます。

1970年代に生まれた、最後のベビーブーマーたちが、今、結婚・出産期の30代中盤を迎えています。「希望する人が、普通に結婚できて、子どもを育てられる社会にする」という当たり前の社会を創ること。
全国平均と比べて、通勤時間も労働時間も長い神奈川の場合、特に、未婚の人への支援も必要でしょう。
ここ数年が最後のチャンスだと思って、しっかりと対応しなくてはいけない問題だと、強く感じました。

森岡神奈川労働局長の、「これは、“コスト“ではなく、企業の活力の為の“投資“と捉えて欲しい」という言葉が印象に残りました。

一人ひとりが、その人にあった働き方で、いきいきと働ける社会へ。

誰か一人だけが頑張るのではなく、お互いに助け合い、支えあう。家庭も、地域も、職場も。そんな柔軟性が、この不況の時代を乗り切るキーワードなのではないでしょうか。