いつも極上の日本料理を食べられる葵匠。春のメニューをいただきに、お邪魔してきました!
今回まずは登場したのが、オリジナルのお酒。
斗瓶で空気に触れさせずに味と香りを保った上で、1年間氷温熟成したという日本酒。透明の瓶が亀の尾、水色の瓶が山田錦を使っています。
亀の尾は、ふんわりと米の旨みとほのかな甘みが広がる丸みのある味わい。山田錦は、すっきりとした綺麗さと、どこか硬質なシャープさを感じる味わいでした。
最初に出てきた料理は、イカの煮付けのようなバランスの、甘みの強いだしに2日間つけたというホタルイカに生姜を乗せて。
もちろん、煮ていない、肝も旨味がたっぷりと入った、生の上質なホタルイカだけに、とても上品な仕上がり。煮汁が甘すぎないのは、トレハロースを使っているから。
シグネチャーのウニとキャビア。
今回から北イタリア産のオシェトラに替えたそうで、コクも塩分も上がり、よりまったりとした味わいに。
岩牡蠣
クリーミーな岩牡蠣は、先ほどの葵匠オリジナルの山田錦とのペアリングが抜群。牡蠣本来が持つ、海水の塩の味わい、特にマグネシウムのようなミネラル感が、この山田錦にあっている気がしました。また、お酒の後味がふわっと甘くなって、印象が変わったのが面白かったです。
佐賀のアワビは、岐阜の白扇酒造の3年熟成のみりんで真空調理をして。
一番上には筋肉質なところ、下に行くにつれて柔らかく。
調理中に出たあわびの出汁がたっぷり溶け込んだみりんを煮詰めて作ったあわびの肝の出汁。
卵黄は使っていませんが、旨味が加わったみりんのコクで、しっかりと濃厚な味。
トウモロコシのような甘みのある、フレッシュな山城産の筍とともに。
そして、シグネチャーの一つ、初鰹の藁焼き。
濱本シェフの出身地、和歌山で行われている「ケンケン釣り」。トロール漁の一種で、網の中のカツオを一匹づつ釣り上げてイケジメにするので、鮮度がよいのが特徴だとか。いただいてみると、もっちりとした身質、血の臭みがないカツオでした。皮は炭焼きでカリカリに、ほのかに米藁の香り。春先なのに、噛むと脂が染み出してくる、美味しいカツオでした。
そして、真珠貝色の器を開けると、キラキラした白アスパラガスの泡が目に飛び込んでくる茶碗蒸し。
ハマグリと白アスパラという、季節感も味わいも王道のコンビネーション。刻んだはまぐりが入った茶碗蒸しの中には食感のアクセントにワラビが、そして甘いアスパラのピュレ、シャキシャキ感を残した刻んだ白アスパラ。昆布とはまぐりの出汁だけ、ということですが、たっぷりの旨味の重なり方は、胡麻は使っていないのに、まるで胡麻和えを食べているような濃厚さ。
そして、葵匠でいつも食べたくなるのが、皮をカリカリに、身をふっくらと仕上げたうなぎ。
この日は三河産でした。ちょっと多めに3切れ焼いてくださって、厚みのあるジューシーな所から、尾のカリカリのところまで、一口ごとに違う、食感のグラデーションが楽しめるように。熱々のうなぎに、山椒はつきもの。ただの三章ではなく、今が旬の花山椒で。3年熟成みりんと日本酒と塩だけで甘めの下味をつけてあります。
毛ガニの真丈に、蟹味噌のソース、蟹のあん。大黒しめじ、マコモダケ、銀杏なども入っています。
ここからがお寿司。
サヨリ
一週間寝かせたというサヨリは上品な味わい。
唐津産で合わせた、塩、三年熟成のみりんだけを加えて作ったという、赤ウニの塩辛と釣りのスミイカ。
ねっとりとした味わいに、凝縮した赤うにの味わいがよく合います。
シマエビ
上に乗っているのはシマエビの卵。地中海産の赤えびに近い、濃厚なテクスチャーです。
これには、しっかりとしたボティと、アルコール感のある弁天娘の槽搾りあらばしりを。
ほのかに濁りがあり、米の旨みがたっぷり。肉にも合わせられそうな、力強い日本酒です。
そして、先日鳥取に食材探しに行ってきたという濱本シェフが、1本だけ譲り受けてきたという貴重な日本酒、日置桜の純米大吟醸「強力」。
鳥取県大山の、黒い火山灰土「黒ボク」で育った、多心白の酒造公的米、強力という品種の米を使っています。どこか、シングルオリジンのチョコレートを食べた時に感じるような、酸味とミネラル感。個人的には香りにバニラのようなニュアンスも感じました。
黒龍の純吟三十八号。独特のメロンのような香りはそのままに、きりりと綺麗な、すっきりとしたお酒。
春先で脂の乗り始めた鯵。
焼いて柚庵地につけた日本海産のサクラマスは、しっとりとした食感と上品な味わい。
銚子ではシーズンが終わりに近いという金目鯛。皮目をカリッと炙ってあります。
3年熟成の純米酒、神亀に。
香りをかいだだけで、濃厚な旨みを感じるお酒。糖分が熟成で変化したキャラメリゼしたニュアンスもあります。これが、濃厚な味わいのマグロ、赤酢の寿司酢にぴったりでした。
千葉・銚子のマグロの中トロ。
「南に下がって身質が柔らかくなってきましたね」と濱本シェフ。
脂に臭みがなく、赤みの所に複雑な旨味がぎっちりと詰まっているのがわかります。
同じマグロの大トロ
同じマグロのカマトロ。
筋を感じない滑らかさ。脂の質がよく、食べ疲れない味わい。
一回コハダのすっきりとした酸と塩気でしめて。
程よい酸味と塩気、コハダらしい魚の香りが楽しめます。
もう一度脂の多い魚に。この日お寿司で一番気に入った、のどぐろ。
クリーミーな食感に、カボスがあいます。脂だけでなく、水分も多い繊細な身質。炙った皮にえびのような香ばしさがあるのも気に入りました。
鯖寿司は、中にご飯を入れて、上を少しだけ炭で炙り、海苔で巻いて。中には紫蘇が入っていて、さっぱりと。
タラバガニは、炭火で焼いて甘みを引き出し、人肌ほどにあたたかくふわふわの状態に。
炭火で焼いたタイラ貝に、1年熟成させた生カラスミを挟み、海苔で包んだもの。
そして、ここからが葵匠で忘れてはいけない、スペシャルウニ。
赤ウニ(左)は2種類。昔は6月くらいがシーズンだったものの、赤ウニ人気もあって年々早くなっているのだとか。小粒な富夫と、粒の大きいものを食べ比べ。
スペシャルウニの登場!市場で一番のウニで、同じ生産者からの中でもトップクオリティのものだけが「スペシャル」と呼ばれます。
ダイセンは、私の好きなナッツっぽさが強いタイプで、この日にいただいたウニの中で一番気に入りました。
東沢は、今回はうまみが強く、身のテクスチャがしっかりしている印象でした。
大間の新根のうには少し苦味がありますが、濃厚な味わい。
バフンウニは、ミルキーなムラサキウニに比べて、より卵黄のようなニュアンスが強く感じます。
最後は、飛騨牛の薄切りに、卵黄のようなコクのバフンウニと花山椒をたっぷりとのせて。
すき焼きのようなタレとともに。花山椒のすき焼き風で。牛肉の質の良い脂と、熟成みりんの甘み、花山椒のすっきりとした味。ピエモンテ産の冬トリュフもありましたが、やはり花山椒がしっくり来ます。最近お店で使う醤油を全て、故郷和歌山の三ツ星醤油に替えたそうで、コクが一層増したように思います。
味噌汁は、赤味噌ベースに粉山椒を効かせ、胡麻豆腐を浮かべたもの。
定番のマスクメロンのグラニテのかかったマスクメロン、オレンジ、いちご。
そして、ほうじ茶のソルベが入ったもなか、抹茶の生チョコレート、わらび餅。
日本に帰らなくても、日本の極上食材を使ったオリジナル料理が楽しめる葵匠。通う度に、好みを把握してくれて、好みにあった食材・食べ方で提案してくれます。春の味わいを堪能したひとときでした!
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■Ki-sho(葵匠)
営業時間:ランチ 12:00〜14:00(平日のみ)、ディナー 18:00〜 22:30、日曜休
住所:29 Scotts Road Singapore 228224
電話: +65 6733 5251
アクセス:MRTオーチャード駅から徒歩11分ほど