リゾートワールドセントーサに、アムステルダムの一ツ星レストラン、212 が ”Table 65” という新しい名前のレストランをオープン。65とは、シンガポールの国番号から。
Thomas Grootシェフと、Richard van Oostenbruggeシェフによるレストランです。
(シグネチャーの、林檎のプレデザート)
「ルールを減らし、もっと冒険を」というテーマのファインダイニング、エントランスは以前あったジョエル・ロブションと変わりませんが、足を踏み入れると、厨房と客席の境がなく、キッチンスタッフとのコミュニケーションがインタラクティブに取れるスタイル。
この日はRichard シェフが厨房に。
Experiential Menu($218)をいただきました。
まずは、小さなアミューズが並びます。
最初は海藻のパウダーシメジ、サワークリームと紫蘇のエマルジョンをディップのようにしてつけて食べるグリッシーニ。
Welcomeの文字とTable 65、皿の周りに炎の映像というウェルカムメッセージが浮かび上がります。
スタッフの中には、Joel Robuchonからのメンバーも。ソムリエのSashiさんもその一人。もう一人のソムリエは、St.Regis にいた、Viknes Dorgaさんで、初めての店ながら、とてもくつろいだスタートに。
最初は、食欲を増進させる、酸味のある味わいから。青背の魚をテーマにした前菜です。
コールドスモークした鯵とパッションフルーツのセビーチェ、ココナッツとカフィライム(combava)、ディルとカラマンシーのエマルジョン。
オランダ産のトマトを使った、トマトコンソメのゼリーとラビッジオイル、酢漬けにしたアンチョビのマリネ、魚と相性の良い、甘い香りのフェンネルの花。
鯵のマリネとキヌアに唐辛子の効いた苺とトマトのヴィネグレット、クリーミーなタラゴン。苺とトマトの組み合わせは、以前、同じくオランダ人のシェフ、リチャード・エッケバスシェフのアンバーでいただいたことがありましたが、こんな風に鯵と合わせるというのは意外だったものの、甘酢の甘みをフルーツに置き換えたような印象です。フレッシュでクリアな味わいのバランスは、とても馴染みのあるもの。実は、色々な料理の隠し味として、日本の三杯酢を使っているそうです。
ここで自家製サワードゥのパンに、エシレバター、スモークペッパー。焼きたてのパンは、やっぱり美味しい。「こういったシンプルな良いものを堪能して欲しい」とRichardシェフ。
ミネラル感のある、ペトロールや青リンゴの香りのリースリングと合わせたのは、
“Os a moelle”
os a moelleとは、フランス語でボーンマロー(骨髄)のこと。スモークしたニシンの出汁で作った、柔らかい骨髄の形のゼリーの中に子牛のタルタルを詰め、サワークリームで蓋をし、ハマグリの出汁と刻んだボーンマロー、カリッとしたサワードゥのクルトンを混ぜたソースをかけていただきます。上にはたっぷりのベルーガ・キャビア。
ベルーガならではの滑らかな口どけ、子牛のタルタルの優しい食感、そして海のミネラル感とフレッシュなグリーンの香りを加える生の赤貝。
続いては、少し旨味のニュアンスとランシオのニュアンスのあるシャブリ。旨味感がオイスターに合いそう、と思ったらやはり良いコンビネーション。
Ravioli of Belon oyster with briny veal shank and shellfish velour, hazelnut and BBQ salted lemon
オランダ産の牡蠣が乗ったラビオリ。中にはケールとヘーゼルナッツを使っていて、ソースはヘーゼルナッツオイル、レモンオイルの酸味が効いています。ハマグリのジュに、加熱する際にでた牡蠣のジュース、子牛のすね肉の出汁などを混ぜた優しいクリームソースと共に。
Mozambique langoustine poached in duck fat, coffee and lemon, Albufeira style dashi
モザンビーク産のラングスティーヌを鴨の脂で火を入れ、ポルト酒、コニャックとフォワグラに日本のカツオ昆布出汁を入れ、レモンの酸味を効かせたポルトガルのアルブフェイラ風ソースで仕上げた一皿。脂と相性の良いコーヒーやコニャック、フォワグラなどを使い、ラングスティーヌの柔らかくコクのある味わいを楽しめる一皿。上から花かつおをかけて。
オーク樽の効いたムルソーには、こちらのクリーミーなソースがぴったりでした。
Turbot with choucroute, smoked eel and black truffle, oxidized wine and eel broth
魚のメインは、脂の乗った大型のヒラメの仲間、Turbotとザワークラウト。Turbotは皮を外してその代わりに黒トリュフのスライスを乗せて、ザワークラウトの上で蒸しあげ、スモークしたうなぎと黒トリュフ、鶏のもも肉からとった出汁に、黄ワインとうなぎの骨をオイルに漬けて、3ヶ月かけてコールドインフュージョンしたものを混ぜたソース。さらにソースそのものを、オークの木でスモークしてあります。最後にたっぷりと黒トリュフを削りかけます。
Turbotとうなぎ、海の脂をザワークラウトがさっぱりとまとめます。
ザワークラウトは入っているものの、先ほどのラングスティーヌよりもやや控えめな酸味です。
肉は鴨と和牛のチョイス、「どちらも食べられそう?」とRichardシェフに聞かれ、思わず両方いただいてしまいました。
鴨に合わせたワインはメルロー、タンニンはほとんどなく、まろやかで丸い味わい。ジュニパーベリーやブラックベリー、赤みの肉の血のニュアンス、スムースなテクスチャの鴨とよく合います。
Toh Thye San duck, mole madre, blueberry aigre-doux and sauce Rouennaise
鴨はマレーシア産の血を抜いた鴨。備長炭で焼いてあります。小さな紫玉ねぎのピクルス、紫のオキザリス、フォワグラやチョコレート、クミン、ピーナッツ、鬼灯の仲間のトマティーヨを加えたモレソースと共に。甘酸っぱいブルーベリーのシロップ煮、最後にダークチョコレートを削りかけて仕上げます。チョコレートと鴨の味の相性はもちろんですが、ナッツやチョコレートでコクをましたソースのテクスチャが鴨の身の質感とよく合います。
または
A5 Ohmi Wagyu, white clams and ramsons with fermented oxtail jus (+$70)
日本のA5の近江牛は備長炭で焼き、地元の「ララ」と呼ばれるハマグリと、オックステールのジュ、オックステールのビネガーのソース、シーバナナの水分でさっぱりと。脂の質がよく、A5でももたれない肉。海の味を加えたアレンジで、さっぱりととても美味しくいただきました。
Foie gras kombu-jime poached in broth of seaweed and umeboshi
フォワグラは、なんと昆布締めにしてから海藻と梅干しの出汁に入れて。
デザートには、甘みと酸味のバランスの良いリューセックを。
Apple
212のシグネチャーのデザート、林檎のソルベで芯を作り、ダークチョコレートの種、タルト生地の中には、生姜でマリネした林檎の果肉、キャラメルクリーム、そして上にはごく薄いシュガーボール。温度の幅を広げた、タルトタタンの再構築です。
デザートのチョイスは、白樺、キンカン、バルーン。おすすめされた白樺を頂きました。
「ミルフィーユに着想を得たデザートを作ろうと思った時、「葉」だけに、森林をテーマにしたいと考えて、北欧では白樺はよく見られる木ということで、白樺をテーマにしたデザートを作ろうと思い立った」と、ペストリーシェフのJurgis Asvydisさん。葉の抽出液を使ったガナッシュ、白樺の幹を焦がしてインフューズした液で作ったジェル、砂糖で作った葉は、白樺をイメージして白黒に。白樺のシロップを最後に加えて仕上げてあります。
香港"Amber"の Richard Ekkebus シェフ、オランダ・アムステルダム"RIJKS"のJoris Bijdendijkシェフなど、共通の友人もいて、話が尽きませんでした。
こちらのコースの他にも、Amuse Table 65、ラビオリ、フォワグラ、チョイスのデザートがつかない、ディスカバリーコース($148)もあります。
アジアで食べる、212の料理、そのリアリティを追い求めて行きたいとRichardシェフ。もともと食材も日本などアジアの食材が手に入りやすく、その知識を深めて行きたいと語ります。これから、アジアで根付いてどんな変化を遂げていくのかも楽しみです。
<DATA>
■Table 65
営業時間:ディナー 18:00~22:30(祝日、祝前日以外の火曜、水曜休)
住所: 26 Sentosa Gateway Hotel Michael, Level1 Singapore 098138, 098269
TEL:+65 6577 7939