今年5月に、オーチャードの店舗をクローズしたはし田寿司、現在はサンフランシスコに店舗をオープン、東京の本店もリニューアルオープンするなど、新しい話題に事欠きませんが、シンガポールでもついに店舗を再開、10月5日に、モハメドスルタンロードに、新しいコンセプトの寿司店をオープンしました。

 

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デザインは橋田さん自身の手によるもの。入り口から突き当たりの階段までが30メートル余りという、独特の形状をいかし、14人、8人、10人の個室を作りました。寿司店の白木のカウンターは、通常は直線が定番。

 

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そこを、縦に14人という大きなキャパシティということもあって、メープル材のカウンターを、緩やかにカーブさせて。カーブの角度にもこだわりが。「両端の人がお互いの顔が見られる角度」に調整しているのだそう。
 
そんな新生はし田のメニューをいただきました。
箸置きを包む紙には、小さな仕掛け。

 

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開けると、橋田さんからのトリビアやメッセージが。「納豆を食べたことがある?」「トロの意味知っている?」など、隣の人と話が盛り上がるような話題がいっぱい。

 

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常識に縛られない橋田さんらしいアプローチ、「タブーからスタートする」をコンセプトにしたおしぼり。温かいおしぼりに、緑茶ベースの香水を染み込ませ、季節ごとに変わる香りでアクセントをつけます。
 
緑茶の香りがベースで季節にあわせた香りをアクセントにしますが、今回はローズとジャスミン。どれもオーガニックのエッセンシャルオイルがベースということで、あと残りしない、自然な香りです。つい最近、和食に香りがどんどん取り入れられている、というお話を、瓢亭の15代目、高橋義弘さんからお聞きしたばかり。西洋の花々の香水をブレンドして使う、というのがとてもユニークでした。
 

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先付けは、小さな皿を盛り合わせて見せてから取り分け。まるで中国料理や西洋料理を思わせる提供方法ですが、これは、新しいこの細長い形状の造りからでた、「マイナスをプラスにする発想」から。縦に長い作りで厨房が一番奥にあるため、動線が長く、10人分の皿を一度に運ばなくてはならない。だったら、最初はまとめて盛り付けて一度見せてから、銘々皿には、個室で盛り付けるというふうに工夫しています。
 

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ナスのひんやりとしたすり流しに、昆布のピュレを少しかけたもの。
最近訪れた青島で食べたサザエの食べ方をアレンジ、サザエに角切りのきゅうり、魚のゼリー、少しごま油の効いた、冷やし中華のような味付けでいただきます。
ハマチの南蛮漬け。
 
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毛ガニの乗った、シンプルな茶碗蒸し。茶碗蒸しの中にも、毛ガニの身が隠れています。
 
徳島から来たすだちの葉を飾ったお刺身の盛り合わせ。

 

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ミズタコは自家製のノリの佃煮を添えて。
 
「酢は匂いが立つから」と、鯖は酢を使わずに醤油をベースにしたマリネ液に漬け込んだもの。
 
カジキの生ハム。カジキをソミュール液につけてドライ、スモークしたもので、まるで上品なスモークサーモンのような味わい。
 
 


箸休めは、シグネチャーにしたいと考えている、キューカンバー(きゅうり)とシーキューカンバー(ナマコ)を合わせた一皿。ナマコの腸、このわたが香り高く、きゅうりとよく合います。アクセントにほんの少し梅干しを。
 
 
長崎産の中トロ、そしてその下には17日間寝かせたという大トロが隠れています。
そして、わさびは新しいアプローチ、「サステイナブルなわさび」に。本来捨ててしまうわさびの皮を醤油で煮込んで刻んだものを混ぜてあります。食感もより複雑に、さらに味わいが増しています。
 
 
温かい季節の皿は、焼いたカマスが入った蓮根まんじゅう、ごぼうのピュレ。

 

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セロリのスプラウトを乗せて。根菜がたっぷり使っているのは、「冬に入る前に根のものたべて体をあたためる」という、この季節ならではの考えから。
 
 
かつお藁焼き。今回新しく設置したという炭焼きエリアには、特別な換気を取り入れて、煙が客席に回らないように工夫されています。

 

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やいとのカツオ、ホッキ貝を稲藁を振りかけた炭火で炙って。

 

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そしてソースは、ホッキ貝の肝に醤油、みりん、だしを加え 肝の旨味をふんだんに引き立てたもの。肝のソースは一口酢飯をいただいて、貝の旨味を無駄なくいただきました。
豆苗ときゅうりの花を添えて。
 

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シグネチャーの、表面がカリカリのブリュレのようになったあん肝。
 

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お寿司に入る前に、もう一つサステイナブルなアプローチのグラニテ。
寿司に欠かせない甘酢生姜を作った際の絞り汁をベースにしています。味はシーズンごとに変わり、今回は桃とジャスミン茶です。

 

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ねっとりとしたアオリイカには、米と塩をローストしてパウダーにした香ばしさのある塩を振りかけて。
 
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日高昆布に挟んだ鯛は、しっかりとした昆布の旨味を感じます。

 

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ボタンエビには、三重県の醤油メーカーの杉樽醤油を。

 

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120年間使い続けている醤油樽で醸し、きりん絞りという手法で手絞りされた醤油は、ほんのり杉の香り、そして昆布のような濃厚な旨味があります。濃口と薄口を橋田さんがオリジナルでブレンドしています。
 
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カンパチは二枚重ねで。

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とろける食感を好み、新鮮な魚のコリコリとした食感を好まない人が多いため、半分の薄さに切って重ねて、柔らかい食感を生み出しています。
 
 
鮫皮かれいも二枚重ねで提供。

 

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しっかりと脂が乗ってきています。
 
 炭火で炙ったカマス。

 

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マグロの漬け。

 

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あまりエイジングしていないまだ若いマグロだそうですが、まろやかでいくらでも食べられそうな味わい。橋田さんも個人的に大好きなのだとか。
 

柚子の香る大根の自家製漬物。

 

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鯛と鱈のすり身が入った甘い卵。

 

 

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エビを使わなくなったのは、シンガポールには意外と多い、エビアレルギーの人に対応するためなのだそう。
 
 
 
 
シグネチャーの大トロ。

 

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薄切りにした上に、さらに薄く切ったものを乗せて、しっかりとまとまりながら、ふんわりとした食感に仕上げてあります。

 

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かつおだしのしっかりと効いた、江戸前の味噌汁と、ウニとイクラの小さな丼。
 

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甘くて香りの良い日本のメロン。
 
最後は「小さい頃から母に連れられて武者小路千家の茶道教室に通っていた」という、橋田さんならではの慣れた手つきでのお点前。

 

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それを、自家製ミルクアイスクリームにかけた、抹茶アフォガート。
 

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また、徳島のすだち農家と三重県の醤油蔵をつなぎ、形が悪かったりして出荷できないすだちを使ったポン酢も開発中とか。
新しい場所は、屋上に菜園があり、レモンやライム、赤バジル、唐辛子、オクラなども収穫できる、と、サステイナブルな新アイデアも続々と生まれている様子です。
 
新しいスタートを切った橋田さんのこれから、ますます目が離せません!

 

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■Hashida Sushi Singapore(はし田寿司シンガポール)
営業時間:ランチ 12:00~15:00 (火曜のみ12:30〜)、ディナー 19:00~22:30(月曜休み)
住所:25  Mohammed  Sultan  Road  Singapore  238969
電話:+65 8428 8787

アクセス:MRTフォートカニング駅徒歩8分