Asia’s 50 Best Restaurantsでも2018年からランクイン、40位に入るなど、今注目のフランス料理、Belon。

 

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イギリス・ロンドン近郊に生まれたDaniel Calvertシェフは、ニューヨークの三つ星Per Se、同じく三つ星のパリのLe Bristolのメインダイニング、Epicureなどを経て、当時James Henryシェフが率いていたBelon のスーシェフに。今はヘッドシェフとして厨房を率いています。

 

店の雰囲気は、パリのビストロのような、どこか古き良き時代ののんびりとした空気を感じる空間。ソムリエとサービススタッフのうち2名はフランス人で、フランスアクセントの英語も、そんな気分を盛り上げます。

 

くつろげる雰囲気ですが、出す料理は本格派。アラカルトで好きなものを、好きなだけ、というのも、フランス風です。

 

まずは、すっきりとしたフルーツ感のある、シャルドネが中心のスパークリングワイン。

 

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アミューズの定番、グジェールは、柔らかいシュー生地に、上には砂糖をほんの少しだけまぶしていて、甘みのバランスが良いもの。こういったほんのりとした甘みは、香港の人たちの好みにも合そうですが、甘すぎない程よさが嬉しいです。

 

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コンテチーズのフィリングには少しマスタードを入れて、ミルキーな甘みを引き立てます。イギリス出身ということもあるのか、この後もポイントポイントでマスタードがアクセントになっているのが印象的です。

 

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オイスター 産地は季節などによって変わるそうですが、この日はNZ産のもの。レモンジュースの入ったクリーム、食感のアクセントに日本のパン粉、ネギビネガーを添えて。

 

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自家製パンは分厚くスライスされていて、焼きたてなので勢いよく湯気が出ていて、周りはカリッと中がとてももちもちしています。チャンネルアイランド産のバター、スライスしたフランスのサラミ、ソシソンを添えて。

 

これ位の席数の店だと、ファインダイニングであっても、ベーカリーで半焼きにしたものを、店で焼き上げる、という店や、そもそも買ってくる、という店が多い中で、小麦粉から天然酵母を起こして生地からアラミニッツで焼き上げる店はそう多くはないもの。「既製品ではなくて、一から手作り」がモットーのDanielシェフらしいです。

 

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そして、サプライズで出してもらったトマトのスープ。しっかりとコクと自然な甘みがあり、香りが良いトマトです。30秒だけ加熱したということで、とろりとしたテクスチャ、上には爽やかさをプラスするレモンタイムが乗っています。

 

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日本の甘くねっとりとしたボタンエビには、程よい苦味で、セロリとパセリの間のような印象のチャイニーズセロリを合わせて、苦味で甘みを引き立てます。一番下にはゼリーにしたもの、シャキシャキした生、ボタンエビ、そしてクリームをたっぷりと。上からパプリカとネギを散らしてあります。クリームに色々味を加えずに、そのままのクリームそのものの味で作っているのも、好感度が高かったです。

 

ワインはそんなクリームにも合う、優しいバニラの香りとバター感のあるシャルドネ、ピュリニーモンラッシェ。

 

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サラダニソワーズの再構築。

 

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ツナの代わりに日本のシマアジを使っています。

生のシマアジを塩でマリネしてから、干し草のスモークをかけています。マスタードマヨネーズと、ディル、半熟卵にオリーブ。マヨネーズのまったりとした印象と、シマアジのなめらかで、水分が抜けて少し凝縮された肉質になっているのがとてもよくあっていました。

 

 

そして、シグネチャーのフォワグラ。アイスクリームか、バターの固まりのように、口に入れるとその温度で溶けて、塩気や脂の旨味、香りと味わいのボリュームが一気に上がる、なめらかな食感のフォワグラ。そんな感想をDanielシェフに伝えると「フォワグラ味のバターのようにしたかった」のだとか。

 

サイドには普通のシャンパンよりも少しぶどうの皮のニュアンスで味に奥行きの出るシャンパンゼリーにほんの少しだけ巨峰のお酒を混ぜたもの、薄くスライスした巨峰、小さな葉はタイバジル。通常のバジルよりも、少しミントやタラゴンのようなニュアンスの強いアジアのハーブ、タイバジルをさらりと使いこなしています。こういったフォワグラの上には、アクセントで粗挽きの黒胡椒をガリっと散らすところも多いもの。胡椒は中に少し使っているだけで、食感も味わいも強いコントラストにせず、エレガントに仕上げてありました。

 

サイドの塩はブルターニュ産で、マグネシウムのえぐみの印象が少なめのもの。

 

最初に出て来たパンよりも強めに焼いて、キャラメリゼした印象を高めたトーストを添えて。

 

ペアリングは、レーズンのような味が巨峰と重なるヴィオニエと。

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ホタテのパスタ。

 

 

以前もいただいた料理ですが、ソースにポメロが加わってバージョンアップしています。北海道産のホタテの貝柱を、水の代わりに卵黄をたっぷり入れて作ったアルデンテのパスタ生地で包み、ワカメやポメロ、塩昆布を入れたブールブランソースで仕上げてあります。ほんのりスパイシーなのは、柚子胡椒をアクセントに使っているから。実は日本の鰹昆布出汁も隠し味に使っているそうですが、気づかない程度のバランスで、きちんと「隠し」味として楽しめました。

 

 

スパイシーでベリーのニュアンスの強い、赤ワインと合わせて。

 

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次の皿は、同じ赤ワインでも、より紫の濃い、カオールのマルベックに変えて。

 

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ブラックベリー、ブラックチェリーのコンフィなどの果実味の丸みがありつつ、はっきりとしたタンニンが感じられます。

 

そして、今回どうしても食べたかった、小鳩のピティヴィエ。フィグとアマレットのソース

 

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たっぷりの自家製黒イチジクのジャム、キャラメリゼオニオン、水と丸鶏と鳥の足(もみじ)で5時間かけて取った出汁にさらに丸鶏と鳥の足を加え、その出汁にもう一度丸鶏と鳥の足を加え、と、3回取った濃厚な鳥のストックを加えてあるので、とてもコクがあります。

 

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どれも5時間づつ煮出しているそうで、その手間のかかり方が想像できます。この黒イチジクの甘いソースに、凝縮した黒いフルーツ感のあるマルベックがとてもよく合います。「ソースの中にブラックフルーツのニュアンスがあるからこのワインを選んだ」とソムリエのJean Benoit Isseleさん。どのペアリングもとてもよかったのですが、特にこの組み合わせがとても気に入りました。

 

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そして、毎回機械で折ってから、最後は手で折っているという生地は、まるでコンテチーズを思わせるような濃厚な乳製品の香り。これは、バターを包む前の状態の生地に、水だけでなく、一部クリームに置き換えているからなのだとか。

 

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ほうれん草とマッシュルームのピュレで包んだ、なめらかな肉質の小鳩の火の入り方も絶妙でした。

 

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サボワの、古典的なシャンパン製法のスパークリングロゼワイン、りんごのコンフィ、ベークドアップルのような味があり、軽くしゅわしゅわとした発泡感があります。

 

こちらに合わせたのはミルフィーユ。レストランで楽しむミルフィーユらしく、のびのびとふくらんだ層は、フォークを入れるとサクサクと軽く割れます。

 

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生地は、Alain Passardシェフのレシピと同じなのだとか。Passardシェフはカスタードを入れますが、Danielシェフは生クリームを混ぜ込んだ、クレーム・ディプロマ。それも、クリームにあらかじめイチジクの葉を漬け込んであるので、ほのかに甘く青い香りがあって、濃厚でありながら、どこかヨーグルトやクリームチーズのような軽やかさがあります。イチジクのジャムと、薄くスライスした生のイチジク。そして、グレーズをかける代わりに、イチジクの葉を漬け込んで作ったキャラメルソースを添えて。

 

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生地のバターの塩気と軽さ、クリームの味、黒イチジクの甘み、バランスの取れた絶品ミルフィーユ、今年一番といっていいほど気に入りました。

 

 

皮がカリっと、中がふんわりとした、オレンジの皮の入ったマドレーヌ。

 

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「クラッシックな味を守りつつ、軽やかに仕上げる」レストラン。食べた料理を思い出すたびに、また食べたくなる、そんなお店です。

 

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■Belon(ベロン)

営業時間:ランチ 12:00~14:30(日曜のみ)、ディナー 18:00~深夜、月曜休

住所:41 Elgin St, Central, 香港

電話: +852 2152 2872

アクセス:MTR上環駅から徒歩13分

https://www.fourseasons.com/hongkong/dining/restaurants/lung_king_heen/