シンガポール郊外にあるレストラン、田Magic Square で、一風変わったコラボレーションが行われます。
そもそもこの田Magic Square とは、来年5月までの、1年間限定の若手シェフのためのプラットフォーム。アジアの著名なレストランで修業した若手シンガポール人シェフに、活躍の舞台を与えたいと、レストランオーナーのKen Loon さんが企画して始まったものです。
そして、今回コラボレーションをすることになったのが、オープン直後にミシュラン2ツ星を獲得、Asia’s 50 Best Restaurants でも16位にランクインしている、香港のレストラン、Ta Vie。
佐藤秀明シェフは、フランス料理店で修業したのち、龍吟、そして香港の龍吟を開店する際の料理長を勤めています。
コラボレーションの基本は、著名なシェフ同士が組むのが通常。しかし、今回コラボレーションをする若手シェフ3人は、有名店でのキャリアはありますが、いずれも20代の若者で、最年長のAbelも、ジュニア・スーシェフ、副料理長の次のポジション、後の二人は部門シェフの経験のみ、佐藤シェフ側からすると、ある意味「教える」という部分が大きいように見えます。
しかも、これまで試食などで2回シンガポールを訪れている佐藤シェフですが、滞在費も航空券も自腹。なぜ、有名でないシェフとのコラボレーションを、時間もお金もかけて行うのでしょうか。
今回のコラボレーションの興味深いポイントは、「シェフは料理の説明を簡単にしかしない」とあらかじめ決めているということ。それは、佐藤シェフの「最近の料理は、説明が長すぎる。説明している間に、料理の温度が変わってしまう。若いシェフたちは、ストーリーをつけることに夢中になりすぎているような気がする。そうではなく、料理はあくまでも味、自分が話すのではなく、料理に『話させる』、それを若手のシェフに知ってもらいたい」のだと言います。
佐藤シェフのシグネチャーの一つ、青海苔とウニの自家製パスタ
積極的にコラボレーションをしている佐藤シェフですが、ただ回数を重ねるのではなく、一つ一つに、自分の中でテーマを持って取り組みたい、と語ります。「今回は、シンガポールならではの、新しい食材やテクニックにも興味がある」のだそう。
佐藤シェフのシグネチャー、アワビのシヴェソース。
それを佐藤シェフは、「アンチエイジング」と呼びます。
現在42歳の佐藤シェフは「自分の尊敬するシェフが、歳を重ねるにつれて、その輝きを失ってくるのを見てきた。どうやって、新しい、今の時代の感性を取り込むのかを考えると、若手のシェフから『学ぶ』ことも大きいのです」といいます。「例えば、少し前でいうと、発酵や北欧風の料理なども、若手のシェフの方が積極的に取り入れて来た。そういったトレンドを知っておくことも大切です」この日も、若手シェフが作っていた「ミルクスキン(温めた牛乳の上に張ったオブラートを乾かしてカリカリのチップにして使う)」を興味深く見ていました。
実際のコラボレーションの料理の構成は、佐藤シェフのシグネチャーから3皿、そして今回のイベントのために作った、パエリアのような食感のマッシュルームライス。
そこに、Desmond Shen (25)、Abel Su (29)、Marcus Leow (26)の3人が2皿づつ料理を出し、合計10皿のコースとなります。
今回は、怪我で療養中のMarcusを除き、Desomond と Abelがそれぞれの料理を披露しました。試食した佐藤シェフからのアドバイスを受けて、本番に向けてさらに料理を仕上げていく予定ということです。
イベントは9月24日、25日、田Magic Squareで。佐藤シェフと若手シェフとのコラボレーション、若手シェフたちは今後の独立も視野に入れているそう。私も2人の手によるいくつかの料理を試食させてもらいましたが、アジアの食材やルーツを生かしたモダンな料理で、とても印象的でした。
有名シェフも注目する「若手シェフならではの生き生きした料理」、ぜひ試してみてください!
→発売後数時間で完売してしまったようです、オーナーのKen Loon さんは、10月にもスペシャルゲストを招いて同じようなイベントを行う予定とか。田 Magic Squareの今後にも注目です!
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■ Ta Vie x 田 Magic Square
日時:2018年9月24日、25日
開催時間 : 18:00~20:00、20:30〜22:30の二回転制
住所:5B Portsdown Road, #01-02, Singapore 139311
電話: +65 8181 0102
アクセス:MRTクイーンズタウン駅からタクシー6分ほど