ユネスコの世界遺産に指定された、シンガポール植物園の中にある、「コーナーハウス」。日本ともゆかりの深い植物学者、E J H コーナーが住んでいた家で、シンガポールの歴史的建造物でもある素敵な建物です。マリーナベイサンズにあったフレンチ、Sky on 57 の料理長などを勤めたJason Tanシェフが率いる店で、2016年から毎年ミシュランの一ツ星に輝いています。
ピノ・ノワールの濃厚さが堪能できるエグリ・ウーリエ。酸味の下に、濃厚なバターのような味が潜んでいる味わいです。
バゲットは軽やかなタイプ、ウォールナッツとレーズンのパン、ボルディエのバター。
五香粉にクミンをまぜたブリオッシュは中華系とインド系が共に住む、シンガポールらしい味わい。
海の味わいのオイスターリーフ、金柑のシロップ煮を添えて。たった一枚の葉ながら、豊かな海の香りが広がります。
インドネシアのえびせんのような、魚肉の混ざった軽やかなタピオカ粉のクラッカーに、フレッシュクリームのまろやかさと飛び子のプチプチを合わせて。
日本食材が大好きというJasonシェフ、スダチの皮のすりおろしがかかっています。
元々は賄いからスタートしたという、二種類のSPAMの缶詰を使った豚肉と玉ねぎのパテのコロッケには、グリーンマンゴーのすりおろしを乗せて。
薔薇とミルクの甘いローカルドリンク、ローズ・バンドンを思わせる
シャキシャキした食感が面白いアロエベラや、チアシードなどを加えてヘルシーに。
ホワイトチョコレートの中には、トロッとした鶏のレバーのムース、香りづけにはなんと130年もののグランマニエを使っています。甘み、香りのバランスの良い前菜です。
鴨のリエットにグリュイエールチーズを合わせた小さなスナック、ビキニトースト。
もはや定番になりつつある、スモークしたうなぎとうなぎのムース、そしてクリスタルキャビア。
花穂紫蘇と、柚子のジェルを添えて。
Carabinero prawn
タラゴンやミント、ごま油、ラー油でマリネしたカラビネロ海老に、スライスしたフェンネルの根、真ん中には日本のイチゴで作ったジャム、その下にフレッシュクリーム、上からクリームのスノーをかけて。
Queensland spanner crab
オリーブオイルとレモンでマリネしたズッキーニ、二種類のパプリカのピュレ、イカスミ入りの衣で天ぷらにしたパプリカ、そして丸いミルクスキンの下には、たっぷりのスパナクラブ。自家製マヨネーズ、トビコ、チャイブ、甘いキュウリのピクルス、リンゴの角切りが入っています。
そして、添えられているのはニンニクの花とオリーブ。パプリカやオリーブが、どこか地中海風の仕上がりです。
Tomato “Les- Jardin de Rabelais”
ルネサンス期の作家、ラブレーの庭、という名前の一皿。濃厚なバジルオイルの上に、イチゴのジャム、フレッシュクリーム、フランス産のトマト、イチゴ、一番上にバジルと柚子のソルベを添えて。
バジルシード、オリーブオイルで作った「キャビア」とともに。
Manjimup black truffle
花の中心のような盛り付けの、オーストラリア、マンジュニップ産の冬トリュフの中には、以前訪れた際に一番気に入った、イカと米粒のようなサイズのパスタ、リゾーニが。
蕎麦の実のパフが入っています。パスタと同じサイズに切ったイカは程よい火入れで、とても楽しめました。
メロン、熟したマンゴーのようなモンラッシェと共に。
この日一番気に入ったのは、New Zealand blue cod “crispy scales”
高温で焼き上げて、香ばしいスモーキーな香りをつけ、タイムを香らせたイベリコ豚、舞茸、自ロール茸。生のマッシュルームのスライス。
そして、何と言っても主役の、ニュージーランド産のブルーコッドの香りが特筆ものでした、オイスターリーフや、エビのような、青海苔のような香りがあって、それが松笠焼きにすることによって、香ばしさが増幅されています。2年熟成の紹興酒を煮詰めたものと、チキンストック、クリームを加えたソース。やや穏やかな味わいのソースを、このモンラッシェと合わせると、ちょうど良いボリューム感に。
A4 Toriyama Wagyu
旨味を追求した牛肉として、シンガポールでは「Umami Wagyu」の名でも知られる鳥山和牛は、低温の鉄板で優しく焼き上げて、ジューシーな脂と旨味を閉じ込めて。
キャラメリゼさせた醤油のタレを塗り、甘酸っぱい赤キャベツのピュレ、ガーリッククランブルを添えて。エンダイブはりんごジュース、リンゴ酢につけてからグリルしてあります。どこか日本の焼肉を思わせる味わいに、ついついJasonシェフにそう聞くと、実は焼肉の味もイメージの中にあったとか。
角切りにして薄く衣をつけて揚げた子牛の胸腺、スイートブレッド。
しっかりとしたボディと甘いスパイス、凝縮したダークベリーにほのかに緑の香りがあるラトゥールのサードラベルと共に。
Melon
プレデザートは、イタリア産のメロンのソルベ、白バルサミコのゼリー、ジンジャーエールのグラニテ。下には薄くクリームチーズが敷いてあります。
Cocoa “Pebbles”
ヴァローナのカライブを使ったチョコレートムースが詰まった「小石」には、グリーンティーパウダーを苔に見立てて。「ブラックフォレスト」を元にしたデザート。チェリーはフレッシュなものと、ラム酒に漬けたものの二種類、小石の真ん中にも一粒ラム酒漬けのチェリーが。ココアクランブルとパチパチキャンディのチョコレートコーティング、チェリーソルベ、ほのかな苦みのアスターの花を添えて。
甘みと酸のバランスの良いソーテルヌと共に。
そして、いつもアミューズ同様にプレゼンテーションでも楽しめる小菓子は、
塩漬け卵黄のマカロン、
マカデミアナッツのプラリネにジヴァラのチョコレートをコーティングしたもの、
ミロダイナサーという、ミロの粉末をミロの上にさらに山盛りにしたドリンクに着想を得たアイスクリームとバナナとライチを合わせたような香りのジャックフルーツソルベを詰めた餅、
そしてドリアンの中でも人気の高い、猫山王のクリームを使ったロールケーキ。
もっちりとした泡のカプチーノと共にいただきました。
テーブルクロスこそないものの、一軒家レストランならではの落ち着いた店内といい、いわゆるファインダイニングの落ち着きを持つ店。
家賃も人件費も、食材も高価なシンガポールでは、さらに、一食数ドルで食べられるローカルフードの充実もあり、料理の価格帯の選択肢が広いことから、地元の客だけで、利益率の低いファインダイニングを運営するのは至難の技だと言います。
しかし、このCorner Houseは、3年前に中国の国家主席が会食で訪れたこと、またAsia’s 50 Best Restaurantに名を連ねたことで、世界からの食通が3〜4割訪れるようになり、安定した経営ができているのだとか。
アミューズと小菓子のバラエティで楽しみながら、コースはきっちりと一皿ずつに絞った構成。シンガポール人シェフらしく、所々に織り込んだアジアの味わいも楽しめます。
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■Corner house
営業時間:ランチ 12:00〜15:00(日曜は11:30〜) 、ディナー 18:30〜23:00、(月曜休)
住所:1 Cluny Road, Nassim Gate, Singapore Botanic Gardens E J H Corner House Singapore 259569
TEL:+65 6469 1000
URL: http://www.cornerhouse.com.sg/
アクセス:MRTボタニック・ガーデンズ駅からタクシーで5分程