Christopher Millar シェフによるレストラン、Stellar at 1-Altitudeで、フランス・ボルドー地域で作られているキャビア、Sturiaを使ってのイベントが行われました。

 

 

SturiaのGuy De Saint Laurentさんにお話を伺いました。

ボルドーのあるアキテーヌ地方では、古くからチョウザメが川にいた地域。昔は魚の肉だけを食べて、その卵は捨ててしまっていたそうですが、ロシア革命時にロシアから逃れてきた貴族がその様子を見て、キャビアの作り方を教えたのだとか。

8歳〜20歳のメスの成魚からしか獲れないキャビア、とはいえどれがキャビアを持っているかわからず、とにかく乱獲してしまったことが原因で、この地域のチョウザメは"Sturio"種は1980年頃に絶滅してしまいます。

 

その後、1990年頃に、魚の価格が高騰し、政府が魚の養殖に着目、骨が少なくて食べやすいチョウザメを、魚肉の目的で養殖しようと考えます。そこで、もともといたSturio種に一番近い、Acipenser Baeriiという品種を輸入し、この地域でのチョウザメの養殖が始まりました。

 

しかし、1995年頃から魚が安定供給できるようになり、魚肉の価格が暴落。そこで、キャビア用のチョウザメの生産に切り替えます。

 

Sturiaも1992年から養殖を開始。1999年からキャビアの出荷をはじめ、最初は1トンだった出荷量が、今では17トンに。

 

それと同時に、多くのチョウザメが生息していたカスピ海でも、乱獲と石油の調査のための施設を作ったことで、生まれた場所で産卵する習性があるチョウザメが産卵をできなくなり、2008年には野生のキャビアを獲ることが禁止されます。

 

アキテーヌの自然の林の湖にある、15エーカーもの自社の養殖場で、魚を餌に与えながら育てたというキャビア。品種は2種類。シベリアから輸入したAcipenser Baerii種(シベリアチョウザメ)と、オシェトラ、Acipenser gueldenstaedtii 種(ロシアチョウザメ)を出荷しているそう。今は、ベルーガも育てているそうですが、収穫まで20年かかるベルーガ、今はまだ12歳ということで、あと8年経てば手に入るようになるのだとか。

フランスで一番、世界第三位(世界の全生産量の5%)の生産量を誇るSturia、10キロの成魚から1キロのキャビアが獲れるそう。

生産量から計算すると、年間1万7000匹、少なくとも出荷に8年かかるということで、少なくとも13万6000匹のチョウザメを育てているのだとか。

 

 

Stellar at 1-Altitudeのメディアイベントでは、VintageとSturia Oscietraの食べ比べを。

1-Altitudeはシンガポール唯一のDom Perignon のオフィシャル・パートナーということで、2006年ヴィンテージと共に。

こちらはSturia Oscietra(オシェトラ、Acipenser gueldenstaedtii種)。旨味が濃厚で、ナッティーさをより強く感じます。

 

こちらは、Vintage(Acipenser Baerii種)。こちらの方が、濃厚な生の卵黄を食べているような、クリーミーで繊細な印象。

どちらも3.8%と、同じ塩分濃度にも関わらず、クリーム感が強いせいか、こちらの方が塩気がマイルドに感じます。

 

「収穫したてのチョウザメの卵は味が何もなく、硬い歯ごたえ、それを塩に漬けて1Kgの缶に入れて置くことで、この柔らかい食感と味が出るのです」とGuyさん。

 

シンガポールや日本、台湾では添加物を加えることが禁止されているため輸出できないそうですが、通常の3ヶ月寝かせたものに比べて、6〜9ヶ月の長期の熟成をかけたものも、フランスでは人気が高いそうです。

 

また、塩気を控えた味を好む日本の市場向けには、塩分を3.1%に抑えたものも出荷されているのだとか。

 

「キャビアの楽しみ方は、大きさ、照り、色合いなどの見た目、テクスチャ、味わいの3つの面で楽しめる、高価なベルーガは、長い年月を経ないと収穫できないから。価格ではなくて、その3つの観点から、自分の好みのキャビアを探してみてください」とGuyさん。

 

そんなSturiaのキャビアを使ったスペシャルディナー、Chrisシェフと、ゲストシェフで、ミシュラン二つ星に相当すると言われる、Good Food guideの2ハットを獲得しているメルボルンのレストラン、EstelleのScott Pickettシェフがそれぞれ、キャビアを使ったメニューを披露しています(今日、27日まで)。

 

ここからがコースのスタートです。

 

 

同じくメルボルン出身のChris シェフにとって故郷の味、ベジマイトをイメージした海の旨味のペーストとパフペストリー。

 

 

Scottシェフは、サクサクのコーンの生地の上にオーストラリア産のTajima和牛のタルタル、ドミグラスソースをアクセントに、魚のクリームを入れたシューにわかめのパウダーをかけたもの、鴨のフォワグラのバロンティーヌにキャビア、マルメロのゼリーを乗せて。

 

 

アラン・パッサールへのオマージュ、とろりとした卵黄、卵白とクリーム、シェリービネガーを合わせたものを乗せて、キャビアをたっぷりと。上からかけたメープルシロップが、Dom Perignonの香ばしいヘーゼルナッツのような香りとクリーミーさとベストマッチでした。

 

最初のワインは、洋梨などのフルーツのニュアンスが強い、ソーヴィニョン・ブラン。

 

Chrisシェフのもう一つのキャビアメニューは、Steamed sea urchin custard.

 

クリームを加えた日本のカツオ昆布出汁のウニの茶碗蒸しに、イベリコ豚をカリカリにしたクランブル、イベリコ豚の薄いクラッカー、そこに、こちらもクリーミーさが特徴の、Vintageと同じ品種のSturia Baerriのキャビアを乗せて。

 

続いてのワインは、しっかりとしたボディ、ウールのような香りのニュアンスのあるシャルドネ。

 

Scottシェフは、フライパンで焼いた日本のホタテに、海藻バターのソース、フィンガーライム。ソースにはたっぷりと、バターの旨味を纏っても負けない旨味の、Oscietraのキャビアを。

 

下にはホワイトアスパラガスを、まるでキャビア入りのソースが贅沢なサバイヨンソースのように感じられます。

キャビアと合わせるということで、どちらのシェフも同じヨード感のある海藻をうまく取り入れていたのが印象的でした。

 

 

しっかりと鉄分のあるメルローに合わせたのは、

 

Low temperatur magret duck breast 

 

鴨は低温のオーブンで焼いてから寝かせて室温で提供しています。洋梨とマルメロのコンフィ、下には鴨リエット、後味にほのかに甘みが残る、小麦の若芽、ウィートグラス、その緑の味わいと重なるオリーブオイルという組みわせr。

 

 

 

バニラやいちごキャンディのような香りのニュアンスのある軽やかなロゼと合わせたのは、

Crispy skinned Amadai (C)

 

 

小さなアマダイ、タラコをスモークし、香ばしいブールノワゼットを加えたソース、ジョスパーオーブンで香ばしく焼き上げたズッキーニにカンボジアの緑の胡椒を入れて。

 

どっしりとした印象のカベルネ・ソーヴィニョンと合わせたのは、Tajima wagyuのフランクと呼ばれる部位。

 

オーストラリアでシーズンが始まったばかり、タスマニア産とマンジマップ産の黒トリュフを塩や酢などと共に真空バッグに入れて、8日間ほど室温で置いておいた発酵トリュフを使ったソース、焦がした人参のピュレ。

バターにさらに海藻やトリュフなどの旨味、人参の甘みを重ね、ボリューム感ある味のレイヤーを作るのが、オーストラリア料理らしい感じがします。

とてもスムースな肉質のフランク(外バラの一部)という部位は、キメが細かいものの柔らかすぎず、噛むと旨味がしっかりと出てくる部位、その魅力を再発見しました。

 

 

デザートには、ペトロール感のあるリースリングの甘口ワイン。

 

チョコレートのムース、味噌のアイスクリーム、蕎麦のクランブルという組み合わせ。

 

このメニューは、今夜まで提供されています。

 

特別メニューについて詳しくは、こちらです↓

https://www.1-altitude.com/wp/wp-content/uploads/menu-4-hands.pdf

 

 

<DATA>
■Stellar at 1-Altitude(ステラ・アット・ワン・アルティチュード)
営業時間:ランチ 11:30~13:45(平日のみ)、ディナー 17:30~21:30、(いずれもL.O.)無休
住所:1 Raffles Place, Level 62, Singapore, 048616 
電話:+65 6438 0410
アクセス:MRTラッフルズプレイス駅徒歩1分