ミシュラン一つ星のイノベーティブレストラン、MetaのSun Kimシェフが、新しく姉妹店、Kimmeをオープン。
その名も、Kim+me、より自分らしい料理を、楽しみながら作っていきたいという思いが込められています。これまでMetaのスーシェフだった、Louisシェフが店を取り仕切ります。
(オープンカウンターに立つSunシェフ)
この日はLouisシェフがお休みということで、普段はMetaにいるSun シェフが案内してくれました。
アモイストリートのショップハウス、3階建をそのまま借りていて、一階は大きな12人掛けのテーブルを囲む形、
二階は2〜4人掛けのテーブル席とバー全24席。音楽も一階と比べると、アップテンポになっています。三階はまだリノベーション中ということですが、個室となる予定だそうです。
カクテルは、コスモポリタンをアレンジした Cosmo 'Seoul' itan ($22)
クランベリージュースの代わりに、ざくろのジュースを使っています。
色々試したいということで、実際の半分くらいのポーションで出していただきました。
Kampachi Sashimi . Ginger . Gochujang ($22)
数ヶ月に一度、少しづつメニュー変えていく予定ということですが、まずは人気の、鹿児島産カンパチのカルパッチョ。
新鮮なカンパチでポメロの実や生姜のピクルス、エゴマの芽を巻き、チャイブのオイルと、コチュジャンと米酢、ニンニク、ゴマなどで作った韓国風チリソース、そして真ん中にフレッシュクリームを少し。
大葉のパウダーを散らしてあります。カンパチには、気付くか気付かないかくらいの分量で、細かく刻んだ塩昆布が使われていました。ポメロのしっかりとした粒感と自然な酸味が、カクテルの生姜の味わいともあっていました。
この味の組み合わせは、普段韓国で刺身を食べる時のもの。Metaで、余った刺身で賄いを食べている時に、スーシェフのLouisシェフと「こんなに美味しいなら、出してみよう」と話し合い、Kimmeオープニングの際のメニューとしての提供を決めたものとか。
子羊のタコス。
Taco . Lamb . Mushroom . Mint Yoghurt ($13)
通常はひき肉を使うことの多いタコスですが、甜麺醤とニンニク、梨とりんごに1日漬け込み、60度で30分間加熱した子羊のももの肉を使っています。小麦の香りが香ばしい皮で巻いて。上にはマッシュルームのプルコギソース、シャロットとシシトウガラシのピクルスが飾られています。
Spanish Octopus. Vegetable Sasa. Endive. Dill ($24)
タコはほのかに唐辛子の味がすると思ったら、コチュジャンやみりん、醤油などと一緒に真空パックに入れて、74度で6時間調理をして旨味を染み込ませています。
そこに、シャロットのドレッシング、生のエンダイブなどを添え、塩昆布パウダーとフェンネルを飾っています。
タコは柔らかく、吸盤の部分はコリコリ感を残している程よい食感。
中心に、ライムきかせたクリームチーズが忍ばせてあり、どこか、Waku GhinでSunシェフが担当していたという、シグネチャーのボタンエビとキャビア、ウニの一皿の真ん中に、冷凍卵黄が忍ばせてあったのを思い出します。
シャロットのドレッシングは、日本の酢の物を思わせる甘みと酸味、それよりやや甘めの、甘酢に漬け込んで真空パックに入れることで、酢を染み込ませたリンゴとセロリの角切り。胡椒も効いています。
Prawn . XO Sauce . Jerusalem Artichoke ($30)
ローストにしたアルゼンチン産のキングプラウンは、クアラルンプール出身の中華系のシェフから作り方を習ったという、XO醤が添えられています。
まるでスカンピのような甘さと柔らかさがあるため選んだという、アルゼンチン産のエビは、フライパンで表面を焼き上げてからオーブンで仕上げ、持ち味を引き出して。
自家製のXO醤は、干し貝柱や干しえび、干したムール貝などをスティームコンベクションオーブンで蒸しあげ、そのエキスを漉して置いてから、油で揚げて。さらに唐辛子やにんにくなどを混ぜて油を足し、3時間ほど煮詰めてから室温に6時間ほど置いて、味をならして作ったそう。
そんな自家製のXO醤に合わせたのは、ローストしたエルサレムアーティーチョーク。そのままと、出汁とクリーム、バターやイカ墨と一緒にピュレにしたものを添えて。
NZ産のムール貝は殻ごとニンニクやパセリ、セロリと白ワインで焼いた後、身だけを取り出して海老とXOソースに混ぜてあります。揚げたガーリックのチップ、そしてネギ。程よく焦がした味わいが楽しめる料理。
続いては、鳩のバーベキュー。
BBQ Britanny Pigeon . Onion & Watercress Salad ($32)
醤油、みりん、ニンニク、韓国の梨や日本のリンゴのすりおろしなどを使った韓国風のバーベキューソースに1日マリネしてから焼き上げてあります。
グリルしたブルターニュ産の鳩の胸肉は、臭みがなく、しっかりとした鉄分のある味。モモ肉は、プリプリとした食感も感じられます。
Sunシェフのお母さんのレシピだという、焼肉と定番で合わせる、韓国の伝統的なサラダのドレッシング、ねぎ、玉ねぎ、魚醤、ニンニク、米酢、乾燥唐辛子などを使っています。韓国のサラダのドレッシングというと、甘めの印象があったのですが、こちらは甘さ控えめの味わい。クレソンのシャープな辛みが加わったところに、バターとハーブとともにオーブンで焼き上げてから、フライパンでバターと脂肪分の高いクリームを加えて作った根セロリのピュレが添えられています。
Australian Wagyu Rump . Mushroom Doenjang ($33)
続いては、醤油やみりん、ネギ、ニンニク、玉ねぎなどで3日間漬け込んでからグリルしたオーストラリア、クイーンズランド産の和牛ランプ。
上には、醤油や酢、ニンニクやテンジャンで漬け込んで焼き上げたポルトベーロマッシュルームに、子牛ののジュ、シシトウガラシのピクルス、甘くキャラメリゼした玉ねぎのピュレ。
Sunシェフの考えるコンセプトは、イノベーティブ料理のMetaに対して、もっと自由にインターナショナルな料理を作るのがKimme、という位置付けのようですが、もちろん共通項が。甜麺醤や豆板醤を使ったり、全体的に甘い味わいのバランスになっているあたりに、韓国のシェフらしさを感じます。
そして、デザートは、東京ばな奈のような見た目でしょ、と出してくれたバナナ入りのシュークリーム。
Banana Cream Puff ($10、2個)
キャラメリゼしたバナナに、生のバナナ、上には、砂糖がジャリジャリいう感じのクッキー生地で、模様を出しています。
ほんの一口なので、お腹がいっぱいで一口だけ何かが食べたいという時にも良さそう。バナナとカスタードの相性の良さとクッキー生地の食感が楽しいデザートです。
Pear & Cranberry Pie . Walnut Ice Cream($20)
さらにメインのデザートとして、洋梨と干したクランベリーで、アップルパイを思わせるようなシナモンが香るパイを。上には、プラリネの入ったクルミのアイスクリーム、チョコレートのクランブル、フィリングの間にはカスタードが入っています。梨やクルミといった、韓国でも好まれる食材を使い、西洋的な味付けの一皿に仕上げています。
味わいにどことなく、Metaの雰囲気を感じると思ってお聞きすると、実は元になるソース、日本風の米酢のソースや、出汁などは、共通のものを使っているのだとか。いつもではありませんが、食材も共通で仕入れることもあるそうです。お任せコースのみ、カウンターシート中心のMetaに対して、くつろげるゆったりとした椅子、テーブル席、アラカルトでみんなで分けながら食べるコンセプトのKimme。料理自体も、構成要素を減らし、よりシンプルに食べる形です。インテリアもMetaと同じデザイナーに依頼し、共通したものを雰囲気からも感じられるようになっています。
そして、KimmeはSunシェフにとっては、より新しい素材の組み合わせや味を楽しめる、遊園地のような場所。
今はSunシェフがメニューを考えていますが、そのうちに、Louisシェフもメニューを作るようになるのだとか。S.Pellegrino Young Chefsの東南アジア予選にも出場したLouisシェフのこれからも楽しみです。
Meta も Kimmeも、イノベーティブ料理、と語るSunシェフに、どうしても使わない素材はなんですか?とお聞きすると、わさび、という答えが。「個人的にはわさびは大好きなんだけれどね。うーん、でもステーキの上にわさびバターを乗せたりしたら美味しそうだよね」との返事が。こういった料理は、まずKimmeで提供されるそうなので、そのうちにお目見えするかも。
(日本酒のペアリングも、今考えている最中なのだとか)
今、「シンプルに美味しい料理を提供する、居心地の良い店」をテーマにした店が一つのブームになりつつあるアモイストリートエリア。Kimmeの参入で、さらに熱くなりそうです。
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■Kimme(キンメ)
営業時間:ランチ 11:30 〜14:30(平日のみ)、ディナー 18:00〜23:00 、日曜休
住所:47 Amoy Street, Singapore 069873
電話: +65 6514 1588
アクセス:MRTテロック・エア駅から徒歩5分程