オーストラリアのQuayやTetsuya’sなどで修業した、シドニーの人気レストラン・AutomataのClayton Wellsエグゼクティブシェフがオーストラリア国外に初出店した店、Blackwattleにお邪魔して来ました。

 

 

Automataでスーシェフを務めていた、Joeri Timmermansヘッドシェフがシンガポールに拠点を移し、メニューは現在、共同で開発しているそう。新メニューに関しては、Joeriシェフが作ってからClaytonエグゼクティブシェフの承認をとってオンメニューにしているということで、やはり地元で食材が目の前にあるJoeriシェフに主導権が委ねられているよう。

 

Joeriシェフ

 

この日は、5皿のテイスティングコースに、アラカルトをいくつか追加したコースを作っていただきました。(メニューの後の価格はアラカルトの価格、写真のポーションはアラカルトより小さくなっています)

 

 

ワインは、南仏にしては珍しいという、遅摘みぶどうを使ったナチュラルワイン。アップルビネガーのような香りがありますが、口当たりは酸というよりも、まろやかな甘みを感じます。

 

fried cheese & tapioca, espelette pepper ($10)

 

 

チーズの焦げた味の美味しさに焦点を絞ったスナック。タピオカ粉とチーズを混ぜて揚げ、エスペレットペッパーを振りかけてスパイシーに。香ばしいチーズの旨味を感じつつ、軽く食べられます。

 

stormshell clam, rosemary dashi, aerated cream/ caviar ($14)

ニュージーランド産のストーンシェルクラムというハマグリのような貝に、昆布と鰹節を80度の水で40分抽出してから、ローズマリーを加えてさらに4分間インフューズして濾したという、ローズマリー出汁に、あわ立てたクリームを合わせ、上にオシェトラキャビアを飾ったもの。野性的な香りのローズマリーで貝の甘みを際立たせる組み合わせ、

 

 

grilled duck hearts, burnt onion mustard, smoked salt ($14)

 

 

鴨のハツをグリルにして、焦がし玉ねぎとマスタードのピュレ、スモークした塩をかけたもの。火を通しすぎず、程よいテクスチャが感じられるハツに、スモークした塩が臭みを消し、玉ねぎが甘みを、マスタードが辛味と清涼感をプラス。

 

stracciatella cheese, dried tomato, kombu, shellfish oil ($28)

 

 

ブッラータチーズの中身の部分だけを取り出したようなチーズ、ストラッチャテッラチーズに、ノルマンディで養殖されているという、最高級のムール貝、bouchotを合わせ、チェリートマトを10秒ほど湯がいて皮をむき、シェリービネガーとオリーブオイル、砂糖でマリネしてから乾燥させたセミドライトマト、昆布のピュレ、海老の頭とラングスティーヌの殻をネギと一緒にローストしてからトマトペーストを加えて火を入れ、さらに油と水を足して4時間ほどかけてゆっくりと煮込み、15分ごとにミキサーにかけたものを、布で濾して抽出したオイル、オレンジのゼストなど。

オレンジの香りのマリーゴールドの芽をあしらって。

 

自家製パンは、ねっちりとしたしっかりめのもの。バターはホイップして、鳥のジュを加えています。

 

 

 

fremantle octopus, xo, red vinegar, ink & fennel puree ($36)

 

 

乾燥唐辛子、干し貝柱、ニンニクやエシャロットなどを油の中で加熱して作った自家製のXO醤の油と一緒に真空パックに入れて、一時間ほど蒸しあげたフリーマントル産のタコ。仕上げに日本の蒸しかまどをイメージして作られたという陶器製のバーベキューグリルで、備長炭と地元産の硬質の木材を合わせて使い、バランスの良い温度で焼き上げています。タコの墨とフェンネル、そしてXO醤の固形分をミキサーにかけ、中国の赤酢と(卵黄を加えて?)乳化させたソースとともに。

 

むっちりとした食感を残したタコは、足の先はカリカリに仕上がっていて、その墨にさらに干し貝柱や干し海老の旨味を加えるという趣向。海鮮と相性の良いフェンネルで、洋の雰囲気を加えています。

 

 

ここでワインは、少し濁りのあるナチュラルワインへ。

 

 

使うぶどうの全量の3分の1の皮を樽に入れてそのまま熟成し、フィルターをかけないで作ったワイン。思っていたほど個性は強くなく、柑橘類やリンゴのようなフルーティなニュアンスを感じます。

 

WA marron, broad beans, langoustine sauce, scallion oil ($75)

 

 

西オーストラリア産の食用ザリガニ、marronは、調味料を入れた湯で1分30秒ほど湯がいてから冷やして殻などを外し、澄ましバターの中でさらに加熱して、毎朝作りたてのマヨネーズと、ネギのオイルとともに。軽く表面に火を通しただけで、ほぼ生のクレイフィッシュは、柔らかな食感と甘みが抜群。新鮮な魚介をシンプルにマヨネーズでいただくのを、さらに上品なプレゼンテーションに仕上げています。

 

Sharkskin flounder, garlic chives, curry leaf butter ($52)

 

 

魚は、シンプルに蒸した、サメガレイ。カレーリーフバターと素揚げにしたカレーリーフ、ガーリックのつぼみと茎をグリルしたものを添えて。魚のピュアな味わいを楽しんでから、ソースで旨味を加えていく一皿。

 

赤ワインはイタリアのエトナ山の斜面で作られたぶどう。

 

 

Nerello Cappuccio と Nerello Mascaleseという品種のブレンドで、しっかりとしたベリーの香りと同時に、少し枯葉のような香りも感じられます。

 

 

Duck, malt pickled onion, celeriac puree, kampot pepper ($50)

 

 

マレーシア・ジョホールバル産の鴨を、7日間ドライエイジングして

オーブンで焼いてから、ブランチャーで仕上げています。

 

 

皮目はしっかりとカリッとしています。カンボジアの胡椒と、ジュのソースでシンプルに。付け合わせは、モルトでピクルスにした玉ねぎ。

 

そして、チーズはJoeriシェフの故郷のチーズ、Reypenaer VSOP($16)。

 

 

2年間熟成したものということでしたが、コンテなどと比べるとやや水分が多めで、ねっちりした食感、それでも、コンテと同じようなコクがあり、アミノ酸成分が結晶化しています。キウイを8時間ストウブ鍋で煮て少しキャラメリゼしたジャム状になったものと、モルト入りのクラッカーを添えて。

 

そして、面白かったのがペアリング。なんと、日本酒。

 

 

蒸留酒系の、キレがある味わいとフローラルな香りと、このチーズの旨味とコクを合わせているように感じました。

 

 

jackfruit custard, oxalis ($18)

 

 

伝統的な作り方のアングレーズソースに、テッカマーケットで買ってくるというジャックフルーツを加えたもの。ジャックフルーツに卵黄とクリーム、砂糖を混ぜ合わせ、82度で加熱後、再度あわ立てて作ったカスタード。上に生のジャックフルーツ、酸味のアクセントにオキザリスを飾ったもの。ジャックフルーツのライチやバナナ、熟した桃を思わせる甘い香りを優しいテクスチャのデザートに仕上げています。

 

 

スタイルは、地元の食材を使ったコンテンポラリーオーストラリア料理、週に2回は市場に行き、新鮮な食材を調達するのだとか。

 

乳製品のコクや、ハーブの香り、焦げやスモーキーな味わいをしっかりと際立たせるのが、オーストラリア料理の印象。そのスタイルに則りつつ、自家製のXO醤やカレーリーフなどを使い、シンガポールらしい味わいを加えて提供しているレストランです。

 

 

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■Blackwattle(ブラックワトル)

営業時間:ランチ 12:00~15:00(平日のみ)、ディナー 18:00~23:00、日曜休

住所: 97 Amoy Street, Singapore 069917

電話: +65 6224 2232

アクセス:MRTテロック・エア駅から徒歩4分ほど