今年7月にオープン以来、香港の食通たちの話題を読んでいるのが「Haku」。わずか半年足らずで、すでに地元の有力グルメガイド、Tatler 誌によるT.Dining Best 20 Restaurantsに選ばれています。

 

 

Agustin Balbiシェフはアルゼンチン出身。5年間日本で修行しただけあって、お話していると時々日本語が飛び出してきます。

 

今年11月30日に発表された、ミシュランガイドの星は惜しくも逃したものの、以前ヘッドシェフをしていたThe Oceanが一ツ星を獲得するなど、その腕は高い評価を得ていて、星が輝くのも時間の問題かも。

 

こじんまりとした入り口を抜けると、黒を基調としたシックな色調の中に、開放感のある、スポットライトを浴びた寿司カウンターのようなオープンキッチンが浮かび上がるようなしつらい。寿司カウンターと違うのは、後ろに熱を使った調理キッチンも見えること。

「ライブ感を感じてもらえるよう、全てを見えるようにしておきたい」という、Agustinシェフの考えがあってこそ。

 

お店自体は、大阪の三ツ星、柏屋の松尾英明氏の監修で、「Haku」の名前は「舶来品」から。日本の心を持ちながらも、世界の影響を受けた料理、がコンセプト。日本の四季の食材と日本の料理の技法を使いつつ、香港のような人種のるつぼにふさわしい、多様性ある料理として仕上げているのだとか。「思いがけない味の組み合わせや自由な表現で、訪れた人を驚かせたい」とAgustinシェフは語ります。新しいメニューの開発などについては、毎日のように電話で話をして決めているのだとか。

 

まずは、Dom Perignon 2006からスタート。

乳製品やナッツのような香りのする味わいは、この後続くコースにぴったりでした。

 

 

メニューは、味のある手書きです。

今回は、8コースのテイスティングメニュー、HK$1380をいただきました。

 

 

最初はスナック。海苔に包んであるのは、マグロのすきみ、ホタテのピュレ入りのマヨネーズ。寿司屋のマグロのすきみの手巻きのような印象ですが、それにホタテのピュレで一捻りアレンジを入れています。

 

素揚げにしたキビナゴ。海外でキビナゴを食べるのは初めてかもしれません。

 

ブラッドソーセージのフライにマヨネーズとマリーゴールドの花を乗せたもの

 

シャンテレール茸のスープは、茸の出汁に、カツオと昆布の合わせ出汁、黒茶、リコリス、コーヒー豆、ヴァニラ、マテ茶を加えたもの。

 

 

最初のアミューズは、日本のヒオウギ貝。

 

 

生のものに、かるくコンフィしたニンニク、エスペレット少し、スペイン産のArbosanaという種類のオリーブから絞ったバージンオリーブオイルをかけて。しっかりとした緑の香りと苦味のある味わいが、ヒオウギ貝の甘みを引き立たせていただきます。

 

続いては、糖度抜群の北海道産のフルーツトマト、旨味の多いトマトに、オーブンで焼いた酒粕のクランブルと、塩昆布、異なった種類の旨味を重ねて。スモークしたイワシも散りばめてあります。エディブルフラワーは、アリッサムのようなニンニクの香りのするもの。スペインの、どんぐりを食べて育ったイベリコ豚、Bellota(べジョータ)の34ヶ月熟成の生ハムを使っています。

 

様々な旨味を使いながらも、トマトの水分と酸味でスッキリと仕上げてあるのが印象的でした。

 

オリーブオイルはヒオウギ貝に使っていたのとは少し違う、果実の丸みのあるもの。お聞きしたら、青いトマトの香りを持つと言われるシチリア島のTonda Iblea(トンダ・イブレア)種100%のPianogrilloというオリーブオイルを使っています。全てにおいて、最高級の食材を使っていることがわかります。

 

 

Agustinシェフがブリオッシュとパネトーネの間のような食感を求めて研究に研究を重ねて作ったという自家製のパンの上には、バターナッツかぼちゃのピュレ、そして昆布森産のバフンウニと合わせて。

 

 

ウニの甘み、ふっくらとした身が楽しめます。かぼちゃはきゅうりと同じ瓜の仲間。きゅうりのような香りのあるウニとの相性もよかったです。

 

 

ミキュイに仕上げた北海道産のホタテ、日本のかぼちゃのピュレと黒にんにくのピュレ、グレーシャンテレールとエリンギ、シイタケをみじん切りにしたもの、ラルドデコルナタで作った一皿。シーフードに豚の脂の旨味、海の幸と陸の幸を合わせた品。

 

 

濃厚な味わいの印象の、フォワグラのポワレ、モンブラン仕立て。仕上げにフランス産の栗のピュレを絞ってありますが、砂糖は控えめで、栗の自然な甘みだけを生かしたモンブラン、という印象。通常は酸と甘みのあるフルーツソースと合わせることの多いフォワグラですが、鶏の骨から取った出汁と、ブラウンバターとレモンのソース。

 

栗やかぼちゃなど、しっかりとした甘みのある野菜、そしてブラウンバターやラードなど、脂のボリュームも多めの、甘みと旨味のボリュームが大きい、ふくよかな味わいが特徴だと感じました。

 

長崎産の本鮪の中とろが登場。

 

 

タルタルにしていただきますが、面白いのは、ほんの少しだけ、フランスの有名な肉屋、polmard の約一週間ドライエイジングしたひき肉を混ぜ込んであります。マイナス10〜20度で120km/hの風を当て、水分を飛ばしてドライエイジングしているそう。その部分を食べてみると、酸味があり、ヨーグルトのような乳酸発酵に近い香りがあります。オリーブオイルと、甘酢生姜を細かく刻んだもので、スッキリと仕上げてあります。

卵黄の代わりに上にはたっぷりのクリスタルキャビアが乗っています。

 

 

合わせるのはジャガイモのとても薄いチップス。ジャガイモのピュレに馬鈴薯でんぷんを入れ、ディハイドレーターに入れてからオーブンで焼き上げたのだとか。

 

 

肉のメインディッシュは A4 の鹿児島和牛、その中でも野崎さんという牧場主が作っているブランド牛、野崎牛のショートリブ。

 

 

A4にしているのは、A5だと脂っこすぎる、こちらの方が、赤身の牛肉本来の味が楽しめるのという理由から。 フライパンで強火で表面だけ焦がしてから、アップルウッドのスモークをかけています。

 

 

柔らかいとろける食感を持つ和牛は、柔らかくする必要がないので、エイジングはしていないそう。

 

 

そしてソースは、玉ねぎの甘みがはっきりとある野菜のブロスを使い、デミグラスのようなものを作ってから、その中にローストしたオックステールを漬け込むことで、もっと強く牛肉の味とゼラチン感が出るということ。

 

サイドは、茹でてローストしてから バターで炒めた人参、そしてヤローの葉。

 

 

立派な活けの蟹は、コシヒカリと一緒にリゾットに。出汁は甲殻類の殻を茶色になる直前までローストして、ニンニクとねぎ、セロリを透明になるまで炒め、トマトペーストとブランデーを加えたもの。さらに削りたての5年ものの本枯節の粉を出汁に混ぜ込み、旨味をプラスしています。何と言ってもさっきまで生きていたカニの半生の食感が絶品。5分だけ蒸して、火が入りすぎないようにしているのだとか。

 

 

白ワインはボルドーの定番、セミヨンとソーヴィニョンブランを使ったオリジナルラベルのワインを。

 

 

青リンゴや白い花を思わせる香りがあります。

 

デザートは、ちょうどお誕生日を迎えたばかりの、フィリピンのメディア、Cherylさんのバースデーケーキ。

 

 

ベルコナのチョコレートをとヘーゼルナッツを使った、ゆずの香りのチョコレートケーキ。

 

そして、本来のデザートは、佐賀産の秋月という梨をそのまま使ったもの。

 

 

北海道産のヨーグルト、シナモンと生の梨の角切り、パンナコッタ。梨の余った部分で作ったグラニテという、スッキリとした組み合わせ。

 

どれも、乳脂肪を含め、動物性の油脂の旨味を多用しているのが印象的。日本の最高の食材を、和食ではなく、西洋料理に馴染んだ人たちが好む方法で提供しているような印象がありました。

 

Michel Troigros では、Guillaume Bracavalシェフの下で、日本の食材をどのようにフレンチのアプローチで使って行くかを、龍吟では規律と日本料理の技法を、La Bonne Tableでも、日本食材を西洋風に料理することを学んだとのこと。

 

そんなAgustinシェフのバックグラウンドそのままに、極上の日本食材を使ったオリジナル料理。

 

 

世界には、日本の食材の良さを知っている人たちが増えています。そんな人たちに向けて、新しい形で日本の食材の良さを提案して行く。そんな料理が、これからもっと増えて行くのかもしれません。

 

 

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■Haku(ハク)
営業時間:ランチ 12:00〜14:30、ディナー 18:00~22:00(無休)
住所:Shop OT G04B, Ground Floor, Ocean Terminal, Habour City, Tsim Sha Tsui, 香港
TEL: +852 2115 9965
URL : http://www.haku.com.hk/