スペイン・カタルーニャ地方出身のシェフ、Pepe Moncayo エグゼクティブシェフが率いる、BAM! スペインのタパスのようなアラカルトメニューと日本酒のマリアージュで注目を集めていましたが、6月からアラカルトをなくし、お任せコースと軽いバーメニューのみにコースを変えたということで、新しいメニューをいただきにお邪魔してきました。

 

 

去年の9月に、隣の店舗を買い取って店舗を拡大。プライベートルームや落ち着いたテーブル席もあります。お任せではありますが、ベジタリアンメニューもあり、幅広いシチュエーションに対応できます。

 

8コースのお任せメニュー($188)にオススメのメニューを追加で出していただきました。

 

日本酒とのペアリングを提供しているというだけあって、日本食材や出汁、なども使っています。

 

スペイン人シェフだけに、最初にカバを一口。

 

 

Pineapple Gazpacho, Compressed Watermelon, Junsai

 

 

パイナップルを使った面白いガスパチョ。日本の三杯酢を使っていて、しっかりとした酸があります。じゅんさいのつるりとした食感が面白い。

 

ペアリングの日本酒は山形の九郎左衛門 裏・雅山流 香華

International Wine Challenge 2009、2010で2年連続、本醸造部門で金賞を受賞した日本酒です。

 

やや辛口ですが、酸味があまりないので、一口目の印象はとても甘く感じます。低温発酵でじっくりと醸したというだけあって、丸みがありつつも、すっきりとした味わい。

 

 

Ankimo Tofu with Oscietra Caviar

あん肝を混ぜた豆腐を軽いスターチの衣をまぶして揚げ、オシェトラキャビアを乗せたもの。

 

Shiso & Tomato Tartar Tempura

 

 

シソの葉を二枚合わせた間にトマトとマスタードエクストラバージンオリーブオイルを混ぜたトマトのタルタルが挟まっています。

日本ではバジルの代わりに使われていたシソ、そして、中のタルタルは、ちょうど甘めの梅干しを思わせる甘酸味。

 

ここで、ペアリングは山梨、甲斐の開運、純米吟醸。

山田錦を富士山の伏流水で醸したという日本酒。さらに辛口になりますが、酸味のトーンも少し上がって、No.35酵母というりんごのような香りをだす酵母由来の豊かな香りもあり、フルーティな印象に。

 

 

Cold somen, Kyoho Grapes, Fresh Almonds

すだちの効いた、さっぱりとしたそうめん。そこに、日本の巨峰とフレッシュなアーモンドを加えて。日本酒のフルーティーな印象と巨峰がよく合います。

 

 

Green Beans, Ama Ebi & Uni, Ponzu Jelly

 

 

絹さやを湯がいて細く刻んだものに、泡だてたクリーム、そして甘エビ、ウニを乗せ、ポン酢のゼリーをかけています。

 

Cod Fish & Roots Cream, Baked Artichoke Hearts, Manjimup Black Truffles

 

 

元々、スペインの三ツ星、Santi Santamariaのレストランで働いていたPepeシェフ。Santiシェフのシグネチャーの、エルサレムアーティーチョークと鱈、ジャガイモのピュレに、さらに鱈のフリットとトリュフを加えて。

アーティーチョークの芯の部分のグリルは、Pepeシェフの母がよく作ってくれたものだとか。ほっくりとグリルされていて、シェリービネガーでマリネしてあります。鱈のフリットの中には、鱈の浮き袋が入っていて、淡白な鱈の味わいを増幅させる、ゼラチン質の食感が楽しめます。カリカリに揚げたシラスやひまわりの種も、食感のアクセントになっています。

 

Tuna Noten “Gazpachuelo”

 

 

マグロの「脳天」を使った一皿、サイドの泡のソースはガスパチョをイメージしたもの。“Gazpachuelo”とは、スペイン南部、アンダルシア・アマラガ地方でのガスパチョの呼び方。

柔らかくプルプルとしたタピオカと、粒感のしっかりしたトビコが好対比。シェリービネガーと蜂蜜、マヨネーズで味をつけてあります。

ゼラチン質の多いマグロの脳天は、低温調理してから炭火焼きのオーブンで軽くスモークの香りをつけたもの。

 

日本酒は茨城の男女川すてら

 

 

自然に落ちてくる雫を集める、雫絞りの後に、手絞りで優しく絞った無濾過の純米大吟醸。麹米は山田錦、五百万石を掛け米に使っています。辛味も酸味もバランスがとれ、果実のような豊かな香りがあります。毎年限られた量しか作られないという限定品です。

 

Sea Cucumber Congee

 

 

日本では、外側の部分が食べられているなまこですが、Pepeシェフの故郷のカタルーニャでは、なまこの内臓だけをフライパンで焼いて食べ、外側は捨ててしまっていたのだとか。そんななまこの内臓をフライパンでカリッと焼き上げ、新鮮な貝のようなサクサクした食感と甘みを楽しみます。やわからく煮込んだお粥の対比。日本の出汁に、少しだけ柑橘の酸味を加え、フライドガーリックとシンガポールらしい塩漬け卵黄、卵を油の中で細かく散らして揚げた、エッグフロスでアクセント。

 

Duck & Chinese Water Chestnut Dumpling, Foie Gras Broth, Nameko & Enoki Mushroom

 

 

鴨のリエットとくわいを入れたパスタに、フォワグラの脂が溶け込ませたクリアな鶏の出汁に、なめことえのきを加え、生姜のオイルを加えて、アジアな仕上がりに。ピクルスにしたラディッシュを添えてさっぱりと。中華の点心と、イタリアのパスタが融合したような印象の一品。

 

日本酒は、長野の真澄 辛口ゴールド。

 

 

7号酵母を生み出した酒蔵としても知られる真澄。アルコールを添加してキリッと辛口に仕上げてあります。次の皿は脂ののった和牛。赤ワインのようにタンニンではなく、切れ味の良い辛味ですっきりとした後味を生み出します。

 

Mayura Wagyu Oyster Blade, Sesame, Emperor’s Sprout

 

 

オーストラリア・マユラファームの和牛のミスジ(Oyster Blade)の部分。フライパンで焼き上げてあり、しっかりサシが入っていて、穀物で肥育された甘みがあります。そして、カタルーニャで、一年に2週間ほどしか収穫できないことから、重宝されているシーザーマッシュルーム。Santiシェフのレストランでも出していて、その時はシンプルにフライパンで焼いて出していたそうですが、その改良バージョン。歯が当たると軽く砕ける、しっとりとした食感、いわゆるブラウンマッシュルームと似ていますが、後味にほんのわずかだけ苦味と、独特の香りが残ります。帝皇苗という、少しモロヘイヤのようなぬめりのある野菜と、ゴマのソース、キャラメリゼした玉ねぎのピュレを添えて。

 

 

プレデザートは、Lemongrass, Green Apple, Soursop

 

 

レモングラスのグラニテの下に、りんごのゼリー、サワーソップ、チアシード。上には乾燥させたリンゴとライムパウダーが乗っています。

 

一つ目のデザートは、Almond Apricot

 

 

アーモンドと杏。元々近縁種だけに、味の共通点の多い二つの素材を合わせて。

 

Tarta de Santiagoと呼ばれる、スペイン・ガリシア州の伝統的なケーキにアイデアを得たというケーキ。生地の代わりに、ホワイトチョコレートで作った型の中には、アーモンドスポンジケーキに、香ばしくて甘いアーモンド、バニラとフランス産の杏のアイスクリーム、下には焦がしバターのクランブル。サイドには杏のピュレを散らして。

 

二つ目のデザートは、チョコレート。

 

 

塩キャラメルのソースで、スペイン人シェフらしく、ミロやピカソを思わせるシンプルながらもアーティスティックな線を描いた上に、カカオニブのアイスクリーム、チョコレートとマカデミアのケーキ。その上には、ほんの少しカーブをつけたチョコレートのアーチに、チョコレートで作ったビーズを飾って。ケーキの間には、プラリネや蜂蜜で作ったヌガーのような食感の層があり、良いアクセントになっています。

 

小菓子は、生クリームの乗ったフィナンシェに、コーヒークリームの入った、シュー、ヘーゼルナッツプラリネのチョコレート。ヘーゼルナッツと生クリームたっぷりのパルフェは、細かく砕いたピーナッツを添えて。

 

 

デザート2皿と小菓子のみのコースもあるだけあって、デザートも充実の内容。脂っこくない、あっさりとした料理が多いので、デザートの頃には満腹、とならないのも嬉しいところ。

 

和の食材を使いながらも、気づかない程度にさりげなくオリーブオイルを隠し味に使ったりと、要所要所でスペインの味を取り入れた料理の数々。セットランチは$40、4コースのお任せは$98〜で、ワイングラスで楽しめる日本酒のペアリングは$58〜。ぜひ気軽に試してみてくださいね!

 

 

 

 

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■BAM!(バム!)

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