世界各国から気鋭のシェフを招き、キッチンを提供するMaggie Joan’s Kitchen Takeover。今回で5回目を迎えるイベントでは、初めてロシア・モスクワからのシェフが登場。

World's Best 50 Restaurants でも、White Rabbit(23位)やTwins(92位)など、モスクワのレストランがランクインするようになり、ピロシキやボルシチだけじゃない、ロシア料理ってどんなもの?と興味を持ってお邪魔しました。

 

 

今回やってきたDelicatessen(デリカテッセン)のIvan Shishkinシェフは、科学者、デザイナー、レーシングカードライバー、フォトグラファー。Ivanシェフはマルチな才能を発揮する人でもあります。

そんなIvanシェフが料理の世界に入ったのは2008年。

 

2010年にオープンした自身のレストラン、Delicatessenは、2015年には世界のベストバーの32位にランクインするなど、注目の場所です。

 

 

Maggie Joan’s のオーナー、Daniel Ballisさんの父がモスクワで飲食店を経営していることが縁で、今回のキッチンテイクオーバーにやってきました。

 

初めてのシンガポールを楽しんでいるというIvanシェフ。ロシアの伝統の保存の発酵の技術を使った様々な食材を持ち込み、特別なコースを提供しています。

テーマは、スロベニアや東欧でよく食べられている豚肉をテーマにしたコース。

 

ディナーメニュー($95)をいただきました。

 

デリカテッセンのシグネチャーカクテルと共に。

シェリー酒、ペドロヒメネスを使ったマンハッタン($18)。

 

 

旅が大好きだというIvanシェフ。旅先のキューバマーケットで見つけたという、スペイン語圏を中心に広く食べられているチチャロン(豚の皮を揚げたスナック)に、カルダモンと山椒を振りかけてから、ロシアらしいサワークリームと一緒に提供します。

 

Gold dusted chichirron, cardamom & sansyo

 

 

モスクワから持ってきたという、塩とコリアンダー、クミン、ディル、カイエンペッパー、オールスパイスなどで漬け込んだ豚肉で、生牡蠣を包んだもの。牡蠣のエキスを濃縮させて乾燥させた、表面が少しカリッとしたヌガーのような食感のチップ、さらに海藻の灰を散らしています。

豚モモ肉を使い、塩を控えめにして2〜3週間、室温に置いてあるそう。

 

Oyster, cured pork, beurre monte & seaweed ash

 

 

フレッシュなオイスターはロシアではなかなか食べられない高級なもの。レストランだからこそ、そういった特別な味を提供したかった、とIvanシェフ。

 

Grilled pig’s heart & charred cabbage

 

 

グリルした豚の心臓に、炒めたキャベツを乗せ、キムチの粉をかけて。ロシア人にとって親しみのある乳酸発酵の味が感じられるキムチで、心臓の血の味に合わせた旨味を表現。フェンネルシードの爽やかさがアクセントになっています。

 

Malt bouillon shot

 

 

 

大麦のモルトに野菜の出汁を加えたスープは、まるでサワードゥのパンのエッセンスを飲んでいるような印象。そこに、青ネギのオイルを垂らしてアクセントに。このモルトの味が、ロシアを感じる味なんだ、とIvanシェフ。

 

それに合わせたPork fries、豚肉のフライは、さっくりした食感を出すために、卵の入った乾燥の中華麺を衣に混ぜて。根セロリのピュレ、マッシュルーム、ヴィネグレットで和えたサラダと共に。

 

Braised pork belly, green latkes & purple cabbage

 

 

豚ばら肉は、蒸し煮にした後、表面を焦がして。ほうれん草の茎は、オレンジピール、唐辛子、ごま、海苔、山椒でピクルスに、紫キャベツなどの野菜とともに。下には「ラトケ」と呼ばれる、東欧のユダヤ系の間で食べられている、ジャガイモのパンケーキ。

 

Milk curd & tonic sorbet

 

そして、一番印象的だったのが、デザートとして食べられているミルクカードに、発酵させたレモンを混ぜたもの。牛乳にサワークリームをひとさじ混ぜて、一晩置いて作ったレモンカードに、四つ割にして10%の塩、10%の砂糖を加えた水に漬け込み、3ヶ月常温に置いてから冷蔵保存しているという発酵レモンを合わせて。塩を加えるのは、雑菌の繁殖を抑え、乳酸菌だけが生きられる環境を作るため。

ロシアでは伝統的に、りんごやベリー類などを使った発酵がよく行われていて、その際にはライ麦粉を使ったスターターを使うのだそうですが、レモンの場合は必要ないのだとか。

それぞれに乳酸発酵させた要素を組み合わせることで、さっぱりしているのに深い旨味が感じられる味わいを生み出しています。

 

Bird cherry cookie & Szuchuan scented chocolate mousse

 

 

そして、ロシアで小麦粉の代わりに使われているという、バードチェリーと呼ばれるフルーツを使ったクッキー。なんと、月餅の型で形を作ってから、焼き上げてあります。

 

 

もっちりとした食感で、どこか、キャロブやシナモンを思わせるほのかに甘い素朴な味。下にはチョコレートのムースに、四川山椒を効かせたものが入っています。

 

 

 

夏が短いために、保存食の文化が発達しているというロシア料理は、まだ知られていない新しい世界。

 

ロシア人としてのバックボーンを生かしつつ、旅から受けたインプレッション(印象)を表現したい、というIvanシェフ。

 

自由なスタイルで生み出す料理は、意外性に満ちた体験を楽しみたいという方にオススメです。

 

<DATA>

■Kitchen takeover by Chef Ivan Shishkin

2017年7月11日、12日(ランチ、ディナー)
■Maggie Joan's Dining & Bar 
営業時間:ランチ 12:00~14:30(平日)、ディナー 18:00〜23:00、日曜休
住所:110 Amoy Street, #01-01,Singapore 068579(入り口は Gemmill Laneに面していますので、ご注意ください)
電話: +65 6221 5564
アクセス:MRTテロック・アヤ駅から徒歩3分