今年、Asia’s 50 Best Barsの2位に輝いた上海の有名バー、Speak Lowの後閑信吾さんが、同じく11位のレストラン・バー、Tippliing Clubでコラボレーションイベント「ONCE UPON A TIME IN JAPAN WITH SHINGO GOKAN」を行うということでお邪魔しました。会場は、Tippling Club内の2階にある、プライベートイベントなど用の特別な空間、Bin38。

 

 

 

ヘッドバーテンダーのJoe Schofield さんが、同じサヴォイ出身の後閑さんに声をかけて生まれたコラボレーション。

 

 

(写真左が後閑さん、右がJoe Schofield さん)

 

サヴォイの120年の歴史の中で、唯一ゲストバーテンダーになったのが、後閑さん。その前年には、バカルディ主催の世界の大きなコンテストで、世界ナンバーワンソムリエにも選ばれています。

 

色をテーマにした6種類のカクテル。とはいえ、カクテルがその色をしている、というわけではなく、その色のイメージから生まれたカクテル、と後閑さんから説明があります。まずは、ロングカクテルのKuroがサーブされます。

 

 

今回のスポンサー、ウォッカのElitは必ず入っていますが、こちらはそのElitにイチジクの葉を漬け込み、香りをインフューズしたものがベースになっています。

KURO - .
elit, PX, kurozu, tonic

さらに、シェリー酒のペドロ=ヒメネス、黒酢、トニックを加えて。

黒酢の酸味と、ほのかな甘みがベースになった、すっきりとしたカクテルです。

暑いシンガポールでのロングカクテルは、喉が渇いて到着した時にもぴったり。

 

 

AO - .
elit, cucumber, pineapple, lemongrass, shiso

 

 

青は、キュウリや紫蘇にシンガポールらしいパイナップルにレモングラスを使ったカクテル。ふんわりとした卵白の層の上にはディルの葉が乗っています。

 

そして、Tippling Clubといえば、Asia’s 50 Best Restaurants で27位にランクインした、イノベーティブな料理が魅力のレストラン。

 

(Ryan Clift オーナーシェフ)

 

今回は、日本にインスパイアされたメニューを作ったということで、「お通し」が。

 

“OTOSHI” - mackerel, nori roll

 

昆布でマリネした鯵、海苔巻きを揚げて、海苔の面にサクッとした食感を生み出し、マヨネーズを添えたもの、海苔の軽いせんべい。

 

後閑さんのスタイルは、モレキュラーなどの道具を使わずに、オリジナルのスタイルを表現すること。シェイクのスタイルも、 NYスタイルと日本スタイルのミックス。スピーディーに作らなくてはならないNYスタイルと、様式美を重んじる、日本スタイルの中間だと言います。

 

 

シェイクの動きを拝見すると、足元でステップを踏み、足から伝わった力を上半身につなげ、全身を使って力を無駄なくシェイカーに集中させていて、どこにも力が入っていないように見える、なめらかなシェイク。肘と手首の部分で波を作りながらひねりを入れていて、シェイカーの中で氷が八の字に素早く回るように、最適な動きをされているのがよくわかります。

 

AKA - .
elit, tomato, Amami sea salt


 

 

赤は、トマトと奄美の塩。

とてもクリアなトマトのカクテルで、料理のソースのような風にも楽しめます。

 

KOHLRABI, LANGOUSTINE, BUTTERMILK DASHI

ほのかにスモーキーな香りがあるバターミルクに、寿司酢のようなバランスの甘酸味のコールラビーのスライス、その下にはラングスティーヌとポメロがパンを添えて。

ベーコンのような、と一瞬思いましたが、実はこれは、日本の出汁から来ているのだとか。真空調理器で、昆布は70度で出汁をとり、それにさらに82度で鰹節をインフューズしたというもの。

 

 

バターミルクを味わってからカクテルを飲むと、驚くほど丸みのある味わいに。

この日のペアリングの中で一番好きでした。

 

 

MIDORI - .
elit, gyokuro, coconut

 

 

翠は、メロンと玉露という、緑の香りを重ねた味わい。

 

YAKITORI

ここに、瓜系の香りと相性の良いうなぎ、そのタレを思わせるような、香ばしい甘辛タレをまとった焼き鳥。

焼き鳥は手羽を骨を外して、真空調理器で75度で12時間以上加熱して。

 

KI - .
elit, Parmigiano Reggiano, sansho, truffle

 

 

元々はピスコサワーが基本になっているそうですが、その上にたっぷりのパルミジャーノ・レッジャーノ、花椒、トリュフを散らした旨味たっぷりのもの。下のカクテルの部分は、甘みも酸味も、他のカクテルに比べて強く、ボリューム感があります。

 

KATSUDON RISOTTO

そして、合わせたのは真空調理で極限まで柔らかくした豚肉のカツに、逆に半分食感を残した人参という組み合わせ。ラボを持ち料理を作っているTippling Club、食感を含めて、出したい方向性をピンポイントで自在に表現できてしまうレストランだと感じます。

 

SHIRO - .
elit, amazake, ginger, miso dust

 

 

甘酒は酒粕に、ほんの少し味噌のパウダーを上に散らして、まずは味噌の香ばしい香りを味わってから、甘酒と生姜の味を楽しむようになっています。

 

FUJI APPLE, WASABI, SHISO

 

デザートは、生のフジりんごに、リコッタチーズの濃厚なクリーム、青リンゴとわさびのソルベと、グリーンの味わい。リンゴの酸味が、甘酒の甘みの輪郭を引き締め、少し乳酸飲料のようなバランスに。

 

現在は4ヶ月前に上海に2店目がオープンし、コンサルティングをしているNYのお店を含めて3店を回しているため、忙しく過ごされているという後閑さん。

今後は、上海に加え、NY、日本、バンコクに自身のお店をオープンしたいと考えているのだとか。

 

 

バーテンディングの世界では、ジャパニーズバーテンディングという言葉が一つのジャンルとして確立していると聞きます。

海外での日本人バーテンダーの活躍は、文化の発信でもあるはず。海外で磨かれた、オリジナルのスタイルが、様々な形でその地域に溶け込んで行くと良いなと思います。

 

<DATA>

■ONCE UPON A TIME IN JAPAN WITH SHINGO GOKAN

イベント日時:2017年7月6日(木)19:00〜(終了)
■Tippling Club
営業時間:ランチ 12:00〜15:00(平日のみ)、ディナー 18:00〜深夜 (日曜休)
住所:38 Tanjong Pagar Road, Singapore 088461
TEL:+65 6475 2217
URL: http://www.tipplingclub.com/
アクセス:MRTタンジョンパガー駅から徒歩7分程