フランスで今人気のレストラン、Dersouの関根拓シェフが、シンガポールでポップアップレストランを行うというので、お邪魔してきました。
 
 
早稲田大学で政治経済を学んだ後、24歳で料理の世界に転身したという異色の経歴の関根シェフ。アラン・デュカスのレストラン、ベージュを経て、パリのAlan Ducasse au Plaza Atheneeへ。「スタートは遅かったけれど、英語もフランス語も勉強していたので、コミュニケーションには問題がなかった。可愛がってもらいました」とのこと。
 
5年間を過ごしたアラン・デュカスのキッチンを「第二の大学」と呼ぶ関根シェフ。料理の技術ははもちろん、どのように自分の答えを見つけるか、の手段を教えてくれる場所、と表現します。
 
そして、もう一つデュカスに教わったのは、人を育て、任せるということ。そんな中培った絆は今も生きていて、今回も、元同僚で、今は友人でもあるLe Jules Verne Restaurant の茂田尚伸シェフが、パリから休暇をとって手伝いに駆けつけていました。
 
 
クラッシックフレンチで長年過ごしたものの、そんな関根シェフの料理は、とても自由。そして、一番大切にしているのは、「自然である」ということ。「フランスに住んでいると、日本にいる時と同じように季節を感じる。その季節を表現するというのが僕にとっては一番自然なのです。」
 
だから、季節外れのものを、どこか遠くから運んでくることはしない。それは、フードマイレージなどの問題、というよりも、「自然じゃないと思うから」。
 
フランスの小さくても上質なものを作る生産者と提携し、毎日入ってくる食材で料理を作る。
 
食材に合わせた料理をする、それが僕のスタイルなのです、と語ります。料理を考える時は、素材を優先する。だから、例えば違う農場からアスパラガスが届いたとしたら、同じ日に、席によって違うアレンジの料理を出すこともあるそう。
 
いただいたのは、4コースのランチ(S$65)
 
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最初の一皿は、鱈の骨と野菜のスープにブールノワゼット、焦がしバターを加えて。香ばしいバターの香りで、軽く炒めた日本の長ネギと、ズッキーニなどの野菜のつまったラビオリをいただきます。
関根さんが個人的にも大好き、というパクチーを乗せて。
 
 
大切にしているのは、食材の新鮮さ。
そして、出汁もなるべくフレッシュなものを使います。
だから、ランチ営業はせず、ディナー営業のみなのです、朝届いた素材で、そこから仕込み始めるから。
「もちろん、寝かせることで味に丸みが出る、という事もあるのは否定はしませんが、出汁は、出来立てが美味しいと僕は思っています」。
 
素材を見て、逆算して、どんな出汁が必要かを考える。
「冷蔵庫に常に出汁のストックがあって、それを取り出して料理をする、というのは僕のスタイルではありません。
 
その日取れたもので、その場で作ることが、季節を一番反映していると思うからです。
 
だから、いつも「今日の料理です」と言ってお出しするのです。もちろん、毎日ゼロから考える大変さはありますが、何と何を組み合わせる、というルールは、たっぷり自分の引き出しにありますから」と関根シェフ。
 

 

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レモンでマリネしたチコリと立派なホワイトアスパラガスの天ぷら。アイオリソースを添えて。
 
カリッと、やや硬めの衣に包まれたアスパラガスはとってもジューシー。ほのかな苦味に、チコリの優しい苦味を重ねて、春を感じる一皿。
 
食材同士がお互いに調味料になるような、そんな構成にしたい、という関根シェフ。
 

 

 

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個人的に、肉はあまり量を食べない、という関根シェフ。魚や肉のたんぱく質の旨味で野菜を食べさせる料理も多いそう。こちらは直火焼きのオーブン、インカオーブンで香ばしく焼き上げた鶏のつくね。モモ肉の赤身の鉄分の印象もあり、しっかりと肉を食べている感じになります。多めの卵黄で、コクのあるスムースな印象。下には、アンチョビとケイパーのソース、つくねにはタマリンドのソースをかけて。
 
その地域ならではの季節感を大切にしているという関根シェフ。
シンガポールは初めての訪問だそうですが、青菜の一種、中華野菜のカイランやオクラ、ナスなどは、シンガポールのマーケットで選んだもの。気づかない程度に醤油と魚醤に漬け込んで、香ばしく焼き上げています。
 
デザートは、山羊のチーズのパルフェ。蜂蜜の入ったグラノーラと、ラズベリーを乗せて。こちらは、キッチンを提供しているMaggie Joan's のオリジナル。

 

 

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関根シェフは、自分でホタテや牡蠣を入れたオリジナルの魚醤を作ったりと、自家製の調味料にも手をかけているそうですが、それはあくまでも、「そうするのが一番美味しくて、かつ自分が作りたい『設計』に合うから」だと言います。
 
私が感じたのは、関根シェフの頭の中には、何の「先入観」もないということ。目の前に、新鮮な素材がある。それの名前が何であるか、ではなく、それがどんな味で、その魅力をどう引き出せばいいか。土地ごとに、作り手ごとに、その日その日で変わる、素材の味を先入観を持たずにまっすぐに見つめ、その設計だけに集中する。そんな料理。
 
「昨日は、僕はいられなかったんですが、ピエール・エルメ氏が食べに来てくれたんです」と、さらりと語る関根さん。パリのシェフたちの間でもその人気は高いよう。
 
「自分の料理は、どこの料理でもない、グローバルな料理」と語る関根シェフ、そのライフスタイルもまさにグローバル。
世界中のレストランとコラボレーションを行い、この後もすぐサンフランシスコに飛ぶ予定とか。こう言った地球を何周もするアクティブな活動も、これからのシェフに求められる要素の一つなのかも。
 
更には、1年後には、2号店として、ナチュラルワインとアジアの惣菜を中心にしたお店をオープン予定とか。
 
「シグネチャーを食べて、普通に美味しいね、と言われて、それで終わりになってしまうのではなく、食べた人が感動して、また明日も来たいと思ってくれるようなレストランが目標」と語ります。
 
関根拓シェフの料理が食べられるのは、
明日22日(土)のディナー(上記のコースに、マグロと鱈の2皿が加わり、S$100)のみとなっています!
 
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営業時間:ランチ 12:00~14:30(平日)、
     ディナー 18:00〜23:00、日曜休
住所:110 Amoy Street, #01-01,Singapore 068579(入り口は Gemmill Laneに面していますので、ご注意ください)
電話: +65 6221 5564
アクセス:MRTテロック・アヤ駅から徒歩3分