銀座の中央通り、ブルガリ・タワーの9階にあるレストラン、イル・ブルガリ・レストラン。アジアのベストレストランのイベントで親しくなったLucaシェフのお招きを受けて、行ってきました!

 

 

イタリア北部・トレヴィーゾ出身のLuca Fantinシェフは、ミラノのCracco(クラッコ)、ローマのグァルティエーロ・マルケージ氏のオステリア・デル・オルゾ、スペインのAkelarre(アケラッレ)、スペインのMugaritz(ムガリッツ)、ローマの三ツ星、La Pergola(ラ・ペルゴラ)でスーシェフを経て、日本へ。

 

La Pergolaに行く前に、日本には龍吟でに行く前に数ヶ月修業をしたこともあり、日本の文化が大好きになったというLucaシェフ。

 

 

2009年に日本にやってきて、2011年以来毎年、東京のミシュランガイドで1ツ星を獲得しているだけでなく、2015年に、イタリア料理ガイド「identita’ Goloseイデンティタ・ゴローゼ」から世界最高のイタリアンシェフ、と評されています。

 

料理はまず、土のように見える、トリュフがガラスの器で供されます。

 

 

実は上の部分はイタリアのパン、そして、一口食べると、トリュフの香りが広がります。あれ?と思ったら、パンの内側、ちょうど舌に当たるところに、本物のトリュフの千切りが入れてありました。

 

そして、その土の中から芽を出したばかり、とでも言うような、小さな枝とプリムラの花。グリッシーニに花が咲いたような軽いスナック。

 


そして、続いて出てきたのは、Lucaシェフの、日本の食材に対する愛情がそのままに現れた小皿で構成されたアミューズです。

 

フードマイレージの面、また特に野菜などの場合、鮮度の面からも、地元産の食材を使うことにしたのだそう。それだけではなく、旬の食材を求めて、日本全国の生産者を回るようになり、これまでに200近い生産者を回っているそうです。「実際に足を運び、どのように育てられているのか、生産者の深い愛情を知って、その魅力を引き出して、生産者の情熱と共にテーブルに届けるのが僕の仕事」と語ります。

 

(場所は、キッチンが目の前のまさにシェフズ・テーブル。Lucaシェフに気軽にお話を聞けるのが嬉しい)

 

そんな素材への敬意が感じられるのが、今年9月30日まで、期間限定で提供されている、一口サイズの前菜、ストゥッツィキーノ。

 

まずは野菜、

CONSISTENZE di verdure(コンシステンツェ 旬野菜)

 

 

Lucaシェフは、日本人は、懐石に対する理解があるために、こういった多皿料理に対する受け皿がある、と語ります。

 

こちらは、野菜の持つ様々なテクスチャをテーマにしたもので、それぞれの純粋な味を味わってほしいと、野菜ごとに器に分けられています。

中でも印象深かったのは、青森産の雪下人参と、淡路島産の新玉ねぎ。

特に、雪下人参は、ルカシェフが特に気に入っている食材。冬の間、まさに雪の下、地中深くで数ヶ月育てられた人参は、生で食べるととても甘く、衝撃を受けたそう。身が詰まっているため、調理すると肉のような食感になる特徴を生かして、蒸してから乾燥させ、別で作った雪下人参のスムージー状のジュースに入れて煮込み、さらに凝縮した味わいにしたもの。人参の形を再構築すべく、素揚げした葉を添えてあります。最初は、柑橘のジュースか何かで煮たのではないかと思うほど甘く、むちむちした食感は、独特の魅力があります。

 

 

そして、もう一つ印象深かった新玉ねぎ。

 

 

とろける柔らかさと甘み、そしてほんのりオリーブオイルの緑の香りを効かせた、キャラメリゼした苦味。こちらは、玉ねぎを丸々焼き、芯の部分だけを出しているそう。焼いた際に出たジュースのみで、砂糖を含め、調味料は何も足していないそうですが、自然な甘みの上品なバランスの良さ。シンプルなのに、抜群に美味しい。素材の味を引き出す、と言うのはこう言うことなのか、と感じさせるものでした。

 

お聞きすると、「シンプルに見えて、裏にテクニックのある料理をやっていくのが僕のスタイル」ということでした。

 

続いては、魚にテーマを変えた、小さな前菜たちのシリーズが。

CONSISTENZE di pesce(コンシステンツェ 旬魚)

 

 

右上から逆時計回りにいただきました。

トマトのメレンゲに挟まれたあん肝は、トマトの酸味と重なるバルサミコをひとたらしして。白魚の天ぷら、活イワシをスモークしたもの、マグロのフワンボワーズソースなど。アオリイカとブロッコリー、活〆のヒラメに、塩のみで発酵させた、ビーツのソース。ヒラメには旨みがたっぷり。

 

好奇心をかきたてるスタートにしたい、という思いからスタートしたこの小さな前菜のシリーズ。内容は季節により少しずつ変わるそうです。

 

そして、ここからが本格的なコースのスタート。

自家製のパンには、穏やかな味わいの、天草のオリーブオイル。

オリーブオイルに添えてあるのは、サーレ・ディ・パパ、法王の塩、と言う名前の塩で、実際にローマ法王が使った塩なのだとか。丸みのある塩味でした。

 

 

CROSTACEO asparagi(甲殻類 アスパラガス)

 

 

そして、最初の前菜としてLucaシェフが持ってきてくれたのが、一瞬メインディッシュ?と思ってしまった、三重県産の手長海老。一度蒸してからローリエやレモンの若葉、ローズマリーと共にストウブ鍋に入れ、スモークをかけてあります。

 

それを、生のグリーンアスパラガスのスライス、そして湯がいたホワイトアスパラガスと共にいただきます。

 

 

アスパラガスの野の緑の香りと重なる、スモーキーなハーブの香りをまとったスカンピ、そしてその身の甘みを強調するコクのあるベアルネーズソース。その上には、卵つながりの、プチプチ、と言うよりももちもちとしたスカンピの卵。

手長海老ともアスパラガスとも相性のいい卵黄系のベアルネーズソースが全体を優しくまとめる組み合わせでした。

 

 

RAVIOLI ricci di mare(ラヴィオリ 雲丹)

 

 

そして、なんと日本の春の味、山菜を使ったラヴィオリ。コゴミやウルイ、ふきのとう、ミントなどを使った皮に、ウニのクリームが入っています。山菜の苦味とウニの甘み、そして最後にふわりと山菜の香りが鼻に抜けます。

 

 

日本の山菜を初めて食べた時、ワイルドアスパラガスのようだと思った、と言うLucaシェフ。イタリア料理の基本は、純粋で新鮮、バランスが取れた酸味、シンプルさ。そして、苦味はイタリア全土で愛されている味だと言います。なので、山菜の苦味も、違和感のあるものではなく、イタリアにも、よくLucaシェフの祖母が作ってくれたという、野生のタンポポや人参の原種、チコリ、など野の草を煮込んだErbe Cotte(ミックスハーブを調理したもの)という料理があり、幼い頃から食べていた思い出の味だそう。

 

PESCE piselli(旬魚 グリーンピース)

 

 

魚の一皿は、ロックフィッシュ、キンキを使った一品。キンキは炭焼きになっていて、皮目に心地よいスモークの香りがあります。

 

添えられているのは、キンキとフェンネルの軽い出汁に、フレッシュなハーブを混ぜたもの。

グリーンピースは口当たりの良いように一つ一つ皮が剥いてあり、丁寧な仕事ぶりが伺えます。

 

このお料理に合わせて、淡路島の新玉ねぎを使ったフォカッチャが。優しい玉ねぎの甘みの生きたフォカッチャを、スープにつけなからいただきました。

 

 

 

RISOTTO acqua pazza(リゾット アクアパッツァ)

 

 

ネーミングに一瞬あれ?と思ったこちら、魚介のトマト煮込み、アクアパッツァをイメージしたリゾットは、リゾットの下に生の鯛の薄切りが。オリーブやパセリ、黄色いトマトをドライにし、凝縮した旨みと酸味をアクセントに。リゾットの余熱で自然に鯛に熱が入り、半生の食感が楽しめます。火を通しすぎず、日本の繊細な魚の味を生かした作りに、一方でドライにしたトマトが煮込んだ時の凝縮した旨味の印象を与えるようになっています。

 

 

メインは、蝦夷鹿。

 

 

黒胡椒が香る、赤いベリーのソースを添えて、蝦夷鹿の鉄分の味に、甘いスパイスやフルーティーさを加えています。サイドには、甘い香りのターニップと、穏やかに全体の輪郭を引き締める、ホースラディッシュのピュレ。

 

デザートは、同じくペルゴラでペストリーのスーシェフだった、Fabrizio Fioraniシェフによるもの。

 

 

オブラートの下には、誰でも大好きな、ひんやりしたクランブルやパンナコッタなど、様々なミルクのテクスチャーでゆっくりとトーンを落として。デザートモードに。

 

TIRA-MISU

 

 

ティラ・ミスは、マスカルポーネのジェラートとムースを使って、少し軽やかに仕上げたもの。「ティラミスに関しては、イタリア人は絶対に妥協できない」と笑うFabrizio Fioraniシェフのこだわりの一品。チョコレートでできた実物大の眼鏡、というのも、当然かけてみたりして、会話が弾む演出になっています。

 

そして、「もっとモダンなプレゼンテーションのものがあるんだよ」追加で出していただいたのが、千葉のピーナッツを使ったデザート。

 

 

米粉の自家製最中にキャラメルアイス、そしてピーナッツバターやバターピーナッツを添えて。ホワイトチョコのトランプとチェスも、実はチョコレート製で、イタリアらしい遊び心満点。

 

日本の繊細な食材を生かしたイタリアン、こちらのメニューは、6月末頃まで楽しめるそうです。

 

 

 

<DATA>
■ Il Ristorante Luca Fantin(イル・リストランテ ルカ・ファンティン) 
営業時間:ランチ 11:30~14:00(L.O)、ディナー 18:00~20:30(L.O)、日曜、月曜休
住所:〒104-0061 東京都中央区銀座2-7-12 ブルガリ銀座タワー9階
電話: 03 6362 0555
アクセス:地下鉄銀座一丁目駅すぐ