300年の歴史を持つ佐賀の酒蔵、天吹酒造。去年11月にも木下社長を迎えて、シンガポールでイベントが行われましたが、今回、地元のメディアや飲食関係者を招いてのテイスティングイベントが、ジャパニーズフレンチフュージョンのレストラン、 Lewin Terrace で行われました。


(左から、天吹酒造の佐藤さん、仲山、ルウィンテラス新海シェフ、日本酒を広める活動を世界で行なっている菅波さん、手前がルウィンテラス嶋マネージャー)

まずは、日本酒についての映像の上映と、簡単な説明が行われます。
酒蔵での本格的な日本酒造りを間近に見るのは初めて、という方もいて、引き込まれるようにご覧になっていました。

天吹酒造の最大の特徴は、様々な花から採れる、「花酵母」を使っていること。
花酵母の抽出が進んできたのは、11代目の木下壮太郎社長が酒造りを始めた2000年頃。「米でジューシーさを表現したい」という思いのもと、出会ったのが花酵母。花酵母との 相性が良い、上品で切れ味のいい日本酒が持ち味の、南部流の麹づくりに取り組み生まれた新しい天吹の酒を、全国に、世界に広げていくことになります。


(去年11月にシンガポールで行われたイベントで説明を行う木下社長)

日本酒に許された原料はたった3つ。米、米麹、水。これだけ。それで、どんな風に味と香りを引き出すか、というとても奥深い仕事だと木下さんは語ります。

この日用意されたのは、タイプの違う、5本の日本酒。
Lewin Terrace の新海広行ヘッドシェフがペアリングを考えて生み出した、和の食材を生かした料理の数々が、テイスティングポーションで提供されました。


 

1本目は、天吹 純米大吟醸 りんご酵母

 

皆で、「どんな料理と合わせたいか」「買うとしたらいくらで買うか」などのフィードバックを書き込みながらの試飲となりました。

こちらは、酒米ではなく、ご飯にして食べる「飯米」であるヒノヒカリを使った日本酒で、後味に梅やりんごのようなフルーティーな香りがあります。

 

そんなすっきりとしたフルーティーな日本酒に新海シェフが合わせたのは、すっきりとした生姜のオイルが隠し味の甘エビとウニのタルタル。滑らかで甘い食感の甘エビとウニを重ね、廿日大根と薔薇胡椒でアクセントをつけています。

 

 

2本目は、天吹 裏大吟醸 愛山

 

 

日本でも30ほどの酒蔵しか使っていないという、高価で希少な酒米、愛山を使った大吟醸で、日本の新酒鑑評会で金賞を取った日本酒と同じレシピで作られているのだとか。大吟醸の繊細な風味を損なわないよう、5度の冷蔵庫で2年間熟成させ、独特の丸みを生み出しています。

 

水のようにスイスイ飲めてしまう、柔らかい丸みのある日本酒に合わせたのは、同じく優しいトーンの日本の出汁が寄り添う「フォワグラ大根」。フォワグラのコクに、セロリリーフのアクセント。

 

 

3本目は、天吹 大吟醸 40

 

贈答用ではなく、家飲みで楽しめる大吟醸、というコンセプトで作られた日本酒で、しっかりとした米の旨味が感じられます。こちらも酒米はヒノヒカリ、酵母はアベリア酵母です。酸味や甘みのバランスがよく、白ワインのような感覚でも使えそうな印象です。

 

 

こちらには、アマダイの松笠焼き。カリカリに焼かれた鱗の食感と相まって、甲殻類のような香りのあるアマダイに、相性の良いトマト仕立てのリゾット、青海苔のソースを添えて。アマダイの程よい味のボリューム感が、大吟醸にぴったり。

 

4本目は、天吹 山廃 純米 雄町

 

 

高い技術が要求される、山廃で作られた日本酒。酒米は雄町を使い、マリーゴールドの酵母を使っています。こちらは、火入れをしてから20度で2年間熟成しています。山廃ならではの旨味とふくよかさのある日本酒には、新海シェフが働いていた銀座の名店、ロオジエのジャック・ボリーシェフ直伝の一皿、丁寧に火入れした滑らかな鴨とネギの和を感じるコンビネーション。鴨の表面を塩麹でマリネすることで、日本酒の味わいとのマリアージュの完成度を高めています。

 

 

5本目は、天吹 純米吟醸 いちご酵母 生

 

 

その名の通り、いちご酵母を使った生酒。生酒ならではのフルーティーで華やかな香りで、最後にいちごのようでもあり、少しカカオバターのような香りが残るのですが、それの香りも生かした、デザートのペアリング。こちらの日本酒は、食後酒にも良さそうです。

フレッシュないちごとチョコレート、ヘーゼルナッツのデザートに。程よいナッツやチョコレートのコク、甘酸っぱいいちご。日本酒とフレンチのデザート、普段はあまりやらない組み合わせですが、この日一番気に入ったペアリングでした。

 

 

ルウィンテラスでは現在、この天吹の日本酒のプロモーションを展開中(2月末まで)。

それぞれ、グラス(100ml)での提供で、

前菜に合う、天吹 純米大吟醸 りんご酵母(S$26)

魚料理と合わせるのがオススメの、天吹 山廃 純米 雄町(S$28)

メイン料理に合う、天吹 大吟醸 40(S$18)

となっています。

この三種類の日本酒がそれぞれ 50ml ずつ楽しめる、利き酒セット(S$35)も用意されています。

 

 

進化を続ける日本酒、ぜひ楽しんでみてくださいね!

 


<DATA>
Lewin Terrace (ルウィンテラス)
営業時間:ランチ 12:00~15:00、ディナー 18:30~23:00 (無休)
住所:21 Lewin Terrace Singapore, Singapore 179290(Coleman Street の消防署とプラナカン博物館の間から入ります)
電話: +65 6333 9905
アクセス:MRTシティーホール駅から徒歩10分ほど