D.Bespokeの2周年を記念しての、Restaurant Andreとのイベントにお邪魔してきました! D.Bespokeのオーナーバーテンダー、金高大輝さんがRestaurant AndreのAndre Chiangオーナーシェフと友人同士ということもあって、去年の1周年に続いて行われた特別なコラボレーション。

 

 

今回は、Waku Ghinのヘッドバーテンダー、地井和広さんにお招きいただいて、名バーテンダーのカクテルを名バーテンダーの隣で楽しめるという貴重な機会。 地井さんは横浜市出身で、関内のバー「クライスラー」で働いていたこともあり、仲良くさせていただいています。

 

 

一つ一つ、お茶のカクテルか日本酒のペアリングが選べるのですが、せっかくなら、と全部カクテルに。金高さんは北京にもバーを持っていて、アンティークの砂岩で作った貴重な中国茶器を集めたりと、かなりの中国茶通。

 

 

そんな金高さんが淹れるお茶を使ったカクテル、ちなみに、茶葉は茶淵からのものだそうです。

 

 

「もちろん、お茶の渋みなどは、ミルクや卵白を使った清澄方法『ミルクウォッシング』や『エッグウォッシング』で整えて、カクテルに合うように調整していますよ」と金高さん。

 

 

まずは、 Sea urchin green pea tart / fish & chips

 

 

ペアリングは、普洱茶とシャンパン、なのですが、普洱茶をまずシャンパンで(!)淹れてから作ったシロップを、更にシャンパンで割って。シャンパンは、アカデミー賞公式シャンパンにもなった、Thienot(ティエノ)のBrut。普洱茶も20年ものの熟茶を使っているそうで、フローラルな香りの後に、しっかりとしたコクが残ります。

 

 

お料理は、グリーンピースの瑞々しさにミントの葉がすっきりとした印象を加え、美味しい昆布を食べて育ったんだろうな、と感じるウニのクリーム。下にはサクサクのタルト生地。 そして、最初ベニエのように見えたのは、カダイフを巻いた小さなワカサギのフライで、ほんのり酸味を感じるビネガーパウダーをまとっています。パウダーにすることで、サクサクとしたアンチョビの食感を損なうことなく、酸味をプラスしています。 グリーンピースソースのフィッシュ&チップスは時々見かけますが、それをさらに洗練させたような一皿です。

 

Dry-aged sea scallop / Mushroom floss / Kombucha granite

 

 

ペアリングは、中国を代表する緑茶の銘茶、西湖龍井(ロンジン)茶。「あえて渋みを残した龍井茶を、青森のシードルで割っています」と金高さん。ふんわりと広がる、中国緑茶ならではのフローラルな香りに、林檎とレモンの清々しさが加わったカクテル。最後に残る渋みが、林檎の皮の部分の渋みの印象とも重なり、また、甘すぎない印象に仕上げています。地井さんも、「ホワイトエールみたいな味のバランス」とのこと。

 

 

そこに、合わせたのは、ドライエイジングした帆立の貝柱。中はしっとりとした生の食感を残しています。

 

 

「この一皿のテーマは旨味」とAndreシェフ。Zor Tan ヘッドシェフが最後に何かをすりおろしてひとかけ。

 

 

実は、こちらは日本の豆腐を乾燥させたものだそう。麩のような、独特の植物性のたんぱく質の香り。海の一皿に、軽やかに寄り添います。帆立の上には、旨味たっぷりのえのき茸を並べ、表面を焦がしています。焦げてキャラメリゼされた部分のえのき茸の旨味と、キャラメリゼした玉ねぎのソース、緑のネギのオイル。そして、発酵ジュースペアリングを提供していて注目のAndreシェフならではの、すっきりとした酸味のコンブチャ(紅茶キノコ)を使ったグラニテ。その下には細かく刻んだ塩昆布と和えた、フレッシュな玉ねぎのサラダ。フレッシュさを生かしつつ、どうやって旨味を出していくか。そんな構築の仕方を感じる一皿に、林檎のフレッシュさが帆立に寄り添い、龍井茶の渋みが焦げた香りにアクセントを加えるカクテルはとてもよく合います。

 

3皿目は、Welsh lamb carpaccio / Watercress salad / Belper knolle cheese

 

 

こちらには、ジャスミン茶に、Kenzo Estateの白ワイン、朝露、日本酒、ベルモットを加えて。温度を低くしすぎないバランスで作ったという一品。「ぶどうエッセンス」と言いたくなるような、キャンディーのような甘い香りがありながらも、日本酒のコク、そして後味にベルモットの苦味が残るカクテル。

 

 

お料理は、たたきのように表面を軽く炙ったラム肉をカルパッチョ仕立てに。クレソンのサラダには、トリュフオイルとトリュフのパウダーのドレッシング、そして上からは白トリュフ?と思ったら、Andreシェフが、「トリュフだと思ったでしょう?」とニッコリ。

 

 

実は中はスイスのチーズで、牛のミルクで作ったチーズをヒマラヤの塩と胡椒でくるみ、2年間熟成させて作ったというBelper knolle cheese。ミルクのフレッシュな香りがあり、口溶けがよいので、ラム肉にミルクの香りをプラス。柔らかい印象をより引き立てています。「トリュフみたいな」チーズだけでなく、本物の白トリュフと黒トリュフをみじん切りにしたものがソースには入っていて、トリュフの香りも味も楽しめ、なんだか不思議な感覚。そこに、ラム肉にベリーのソースを合わせるようなイメージで、このカクテルのフルーティーさが加わります。

 

 

料理が穏やかで素直な味で、カクテルの印象を引き立ているような組み合わせだと感じました。

 

4皿目は、Ocean trout confit / Radish salad / Fromage blanc

 

 

こちらには、鉄観音に、フレッシュなマスカットと、日本酒の仙禽雄町を使ったカクテル。すりおろし林檎のようなカクテルのテクスチャーと、オーシャントラウトのテクスチャーがぴったり重なる印象。黒大根と緑大根のサラダには胡麻油でコクを出し、オキザリスが飾られて酸味をプラス、ほのかにアジアな雰囲気と日本酒の米の香りが合います。

 

 

どこかカルピスを思わせるような甘さと酸味のバランスのカクテルで、後味のシェリー酒の苦味と、烏龍茶の爽やかさが、トラウトに添えられたサワークリームのコクの切れ味をよくしています。

 

 

5皿目は、Wild mushroom spaghetti

 

 

こちらは、季節のウィンタートリュフがたっぷりと乗ったスパゲッティ。トリュフのフォームの下には、凝縮したやや甘めのトリュフのソースを纏った、もっちりとしたやや太麺のスパゲッティ。

 

 

お料理も後半に向けて、味のボリューム感も増してきている印象。 そこに、白牡丹茶を使ったカクテル。花のニュアンスを持つモダン仙禽の無垢に、白牡丹茶のシロップ、レモンジュースに卵白を加えて、ふんわりとした泡の層を持つカクテル。泡に泡、テクスチャーもマッチしています。日本酒の米のコクと香りが残り、リッチなパスタのソースのボティ感に負けません。

 

6皿目は、Warm foie gras jelly / Black truffle coulis

 

 

Andreシェフが1997年から20年近く作り続けているという、Memory、記憶というテーマの一皿。フォワグラのフランの上に黒トリュフのソース。 こちらには、Andreシェフの出身地でもある、台湾のお茶、台湾高山茶を合わせて。

 

 

仙禽の伝統的な手法で作られた日本酒、Nature six(ナチュール・シス)に台湾高山茶を漬け込み、さらに、濃縮した台湾高山茶(リダクション)とカルヴァドスを加えたというカクテル。濃厚なアルコール度と共に、一気に食後酒的なバランスに。 フォワグラの温かいフランに、トリュフ。カクテルからは、「芋のような香り」と金高さんが表現する中国茶の香り、程よいふくらみのあるアルコール感と、後味に残るカルヴァドスの林檎の香りが、コクのある一皿にぴったりのバランス。

 

7皿目は、Charcoal dough baked Poulet de Bresse / Leek flower / silky potato

 

 

キッチンから漂ってくる干し草のスモークの香りが気になっていたら、竹炭を練り込んだパンで包んだブレス産の鶏。鶏肉を葡萄の葉で包んでから焼いているので、ほのかな酸味と植物の香りがします。優しい味わいながら、しっかりと旨味のあるブレス産の鶏肉のサイドには、酢と醤油で味をつけた、新鮮な卵黄で作ったもっちりとした麺がアクセントになっています。ネギの蕾のついた茎のソテーは、どこかアジアな味わい。発酵バターで味をつけたシルキーなマッシュポテトも絶品でした。

 

 

こちらに合わせたのは、正山小種茶を漬け込んだウィスキーと、スイート・ベルモット、ベネディクティンD.O.M.を合わせたカクテル。スモーキーな正山小種茶、ハーブの香り豊かなベルモット、スパイシーさも併せ持つベネディクティン。鶏肉の自然な味わいにスモーキーさを加えた一皿に、ハーブの香りを添えています。正山小種茶のスモーキーさの奥にあるアジアな香りも、卵黄の麺やネギのソテーのニュアンスと良く合っていました。

 

 

 

8皿目は、Strawberry amazake short cake / Vanilla ice cream

 

 

デザートは、甘酒を使った苺のショートケーキとバニラのアイスクリーム。甘酒を使ったクリームをまとった繊細なスポンジは数ミリの層にも分かれて間にクリームが挟み込まれていて、とろけるような口当たり。 ペアリングは、武夷肉桂茶をダーク・ラムに漬け込み、アルマニャックとガリアーノ、そしてココナッツミルクと合わせたカクテル。どこか杏仁豆腐のようなアジア感、武夷肉桂茶のシナモンの香り、そして、ガリアーノのバニラや、アルマニャックのアーモンドの甘い香りがつなぎ役になっているのか、甘酒とココナッツ、異なる植物系のコクが意外にマッチすることにびっくり。

 

 

シンガポール国内のレストランやバーではほとんどコラボレーションを行わないAndreシェフと、金高さんとのコラボレーション、お互いを認め合う友情から生まれたペアリング、来年の予定はまだ決まっていないそうですが、D.Bespokeの定番のイベントになりそうで、とっても楽しみです!

 

<DATA>

■D.Bespoke 2nd Anniversary Special Dinner with Restaurant Andre

会場:D.Bespoke(ディー・ビスポーク)

日時:2016年11月12日、13日 19:00~

住所:2 Bukit Pasoh Road, Singapore 089816

電話: +65 8141 5741

アクセス:MRTアウトラムパーク駅徒歩4分