以前一緒にシンガポールのグルメ雑誌、Cuisine & Wine Asiaのテイスターをやったことがきっかけで仲良くなった、Pierluigi Ferrariさんのお誘いで、イタリアンワインのSartori(サルトーリ)の4代目、Andrea Sartoriさんを招いてのテイスティングに行ってきました!
 
 
1898年に、Andreaさんの曽祖父で、ホテル経営者だったPietro(ピエトロ)さんが、自分のホテルの為に良質のワインを作ろうと、Valpolicella(ヴァルポリチェッラ)の名産地であるVeneto州にあるブドウ畑とセラーを買ったのがきっかけで始まったのが、Sartoriの始まり。
 
AndreaさんとPierluigiさん(写真右)
ブドウを乾燥させてから絞ってワイン造りを行う、アマローネ。伝統的なアマローネづくりを行う中で、2000年にAndreaさんが思いついたのが、赤ブドウのValpolicellaでなく、地元の特産の白ブドウ、Garganega(ガルガネガ)を使ってのアマローネ造り。3年の研究を経て、2003年に完成しました。1ヶ月以上の乾燥の工程を経るため、ブドウの品質がとても重要。手摘みしたGarganegaを更に選別し、少しでも傷んでいるものは取り除きます。手のかかるこの工程も、一度カビが生えてしまうと同じ乾燥棚に入っている全部のぶどうがだめになってしまうため、欠かせないものだといいます。
 
Bianco Veronese ”Marani” IGT 2014。祖母の名前を冠したこの白ワイン、2014年のものを試飲しました。フレッシュなピーチや少し青い香りのある生のアーモンドのような香り。口当たりもすっきりしています。
 
 
元々Garganegaは長期熟成に耐えるタイプのワインですが、Andreaさんは、ぶどうのピュアな香りや味を楽しみたいので、個人的には熟成せずに飲むが好きなのだとか。樽の香りはさほど強くないので、お聞きすると、「個人的には、ワインを飲んで樽の木の香りしか感じないのはあまり好きではないんだ。樽の香りや高いアルコール度、糖分の添加などで味を覆い隠さずに、むしろ、ブドウ本来の味を楽しんでもらいたい」とのこと。和食にも合いそうなすっきりとしたワインでした。
Garganegaにした理由は、アロマが豊かで、乾燥に耐えうる皮の厚み、味わいがドライなワインが出来上がること、そして地元のブドウであり、偶然ながらアマローネづくりに完璧なブドウだったからだとか。
会場のシチリア料理店、Gattopardo(ガットパルド)特製の、トマトクリームソースのモッツァレラチーズと共にいただきました。
 
続いては、Valpolicella Classico DOC 2015
 
 
地元特産のValpolicellaを100%使ったワイン。現在、使っているブドウの80%が自社の畑のブドウで、今回頂いたのはすべて自社ブドウで造られたものだとか。
「意識したのは、ボジョレーヌーボーのような軽やかで飲みやすいワイン。サラダワイン、なんて僕は呼んだりもするよ」とAndreaさん。
 
確かに、チェリーのような、赤いフルーツや、ほんの少しキャンディのようなフレッシュな香りが楽しめ、飲み口も軽やか。お昼に少しだけワインを楽しむ、またはシャンパンの代わりに、パーティの初めの一杯などにもぴったり。Andreaさんお勧めのペアリングは、モッツァレラチーズや軽いソースの魚料理だとか。
こちらは、バターとトリュフをたっぷり使った小さい粒のパスタと一緒にいただきました。
 
3本目は、100%Corvina(コルヴィーナ)種を使い、リパッソ製法で醸したワイン。
 
 
アマローネの生産者しか作れない、リパッソ製法のワイン。その理由は、アマローネを作る際に出る搾りかすの上からCorvinaのワインを入れ、再度発酵させるという手法のため。アマローネならではの凝縮した香りが移り、深みのある赤ワインになるという仕組み。
 
軍人だった祖父のRegoloさんが、第二次世界大戦後にワイン造りを始めたのが、本格的なワイナリーとしてのスタートだとか。残念ながらRegoloさんは1952年に54歳の若さで亡くなってしまい、Andreaさんは実際に会ったことはないのだとか。ワイン造りに人生をささげた祖父へのオマージュとして造られたのが、このRegolo。
アマローネと比べればお手頃な価格帯のワインとなるものの、アマローネ由来の香りと味わいを保つため、量産はせず、アマローネ2に対してリパッソ製法のワインは1という比率になるようにしているのだとか。
 
味わいは、フルーツの濃厚な香りがさらに増して、チェリーのジャムのような、果実味が豊かにあります。それでも、口当たりは甘すぎず、きりりとした味わいでした。
 
そして、ここからがアマローネの登場です。
Amarone della Valpolicella DOCG2012。
 
 
アマローネ独特のレーズンを更に甘くしたような凝縮した香りがあり、ほんの少しだけレザーのようなニュアンスもあります。口当たりはとてもまろやかでほんのり甘い。アマローネの中でも、フレッシュな果実の生き生きとした印象を生かしたアマローネでした。
 
Amarone della Valpolicella Classico Corte Bra'DOC 2009
 
 
 
そしてこちらは、それよりも少し前のヴィンテージ、2009年のもの。香りの甘さは残りつつ、味は引き締まった印象。チェリーをベースに、白檀のような香りも少しだけあります。
「少しだけ、タバコや木、リコリスのような香りがするけれど、ほのかに感じるだけでしょう?」とAndreaさん。「お気に入りの時間の過ごし方は、ソファにゆったりと腰かけて、このワインと、36か月熟成の上質のパルミジャーノチーズ、一切れのパンと共に過ごすこと、他は何もいらないと思うんだ」とのこと。肉料理などにも合いそうです。
甘いワインだと、食事中に飲むとどうしてもそれだけでおなかがいっぱいになってしまいますが、こちらはアマローネならではの果実味たっぷりの香りと、まろやかな口当たり、それでも甘くないので、食事にぴったりのワインです。感じたのは、Andreaさんのワインは、とってもおなかが空くワイン。食事に合わせるのにぴったりです。
 
そして、2012年はDOCGなのに、2009年がDOCの理由は、この地域がDOCGに認定されたのが2012年から、というだけで、そもそも同じ製法で造られているのだそう。
 
そして、Andreaさんにとって自分の子どものような存在、というのは、I Saltari Amarone della Valpolicella DOC 2008。
 
 
エイジングしたチーズのような動物性の熟成の香りがあり、さらに凝縮した印象です。こちらは、ジビエのような野性味あふれる肉に合わせるのがぴったりなのだとか。「一つ前のワインよりも、さらに熟成したチーズに合わせたいワイン」と、Andreaさん。
確かに、干したイチジクのような味わいもあり、食事の後のチーズにぴったりです。
 
6種類のワインを頂いてみて、この流れでそのまま食事のコースができそうな、素敵な構成でした。また、香りが甘く、タンニンはまろやかで飲み口は優しいのに、味に甘さがさほどないので、食事が進むワインなのは間違いありません。
 
4代目のAndreaさん、現在、ひとり息子は24歳なのだとか。ファミリービジネスとしてやってきて、次の世代に何かをプラスして残してやりたい。現在、輸出が80%とメインではあるけれども、大量生産のワインと違う、自分たちのやり方を理解してくれる相手と取引をしていきたいのだといいます。
現在シンガポールでは、GattopardoやGaribaldi、Mozza、Zafferano、Etnaなどの地元の人気イタリアンレストランで飲めるのだとか。興味のある方は是非お試しを。
 
 
 
最後に全員で写真を
 
 
ワイン文化広めるために頑張っている人たちの姿を撮りたい、という、カメラマンで、いつも裏方で写真を撮ってくれる(ので、映っている写真が少ない)Morgun Pathiさんと。
 
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楽しい出会いがいっぱいの会でした!