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左から、Mattシェフ、OdetteのSteve Mansonマネージャー、会場となったJaanのKirkシェフ、もうすぐオープンのbeniの山中シェフ、OdetteのVincent Tanソムリエ。本当はこの日はLewin Terraceの松本シェフも一緒に来る予定だったのですが、残念ながら体調不良で来られず、こんな感じのメンバーでわいわいと。
まずは熊本産とい小ぶりの牡蠣で。
ヨーロッパ産のものに比べて、塩分が控えめでデリケートな味が、海水のみずみずしさのあるアイスプラントにぴったり。上の粒は、ホースラディッシュのクリーム。すっきりとした印象、そして日本の牡蠣にヨーロッパらしさを与えています。
半熟のウズラの卵に、トリュフのマヨネーズ、カリカリベーコンの衣。ベーコンエッグの再構築のような一皿。
薄くスライスした大根にはブラウンバター、キャラメリゼしたバターを添えて。香ばしいバターと、すっきりとした大根の組み合わせが面白かったです。先端には酸味のあるカタバミの葉。
ビートルートのマカロンに、ゴーとチーズのクリームをはさんで。マカロンは甘いのですが、ゴートチーズの塩気とのバランスで、ちゃんと食事メニューの味になっています。チーズのおかげで、ワインのすすむ味です。
Mattシェフの大好物のリエット。
自宅でもよく作るそうで、9キログラムの豚肉で作って、数日で平らげてしまうほど大好きなんだとか。バターたっぷりで、ほろほろと崩れるくらい繊細なサクサクのサブレに乗せて。
続いての蟹の一皿は、上にバニラの効いたミルクのアイスクリーム。
脱水したタラゴンを添えて。サイドには、先ほども登場したブラウンバター。
ひんやりとしたミルクのアイスクリームがしっかりと甘く、濃厚なブラウンバターのコクと合います。タラゴンがさっぱりとしたキレを与えています。甘い輪郭をタラゴンとアイスの冷たさですっきりとさせている印象。カニの身の甘さが際立ちます。
グリーンピースのピュレを敷いた上にゆでたグリーンピース、イクラ、トラウトの卵、キャビアと、様々な種類の卵。最後にはJAANのシグネチャーの、ドライアイスのスモークが立ち上る巣からは、60℃で16分加熱したという卵黄。
グリーンピースのたんぱく質系のコクに、様々な卵のコクを 重層的に重ねる印象でした。
そして、面白かったのがラクサ。
カスタードのような印象のクリームに、個人的にも大好きだという、ラクサの味を加えて、なんと麺の代わりにアワビと合わせています。海の旨味にコクのあるソースを合わせる意外性、ニュージーランド人のMattシェフ。基本は素材の味を生かした料理だけれど、NZの料理はとても自由なんだ、と話します。
実は、2011年に仕事でマレーシアを訪れたことがあり、イポーやマラッカなど、食の都を回った際に食べて知ったのだとか。シンガポールは2度目、ワンパオのホッケンミーや、チョンバルのバーベキューチキンウィングなども気に入っているそう。
このメニューは、NYの人たちはラクサの味を知らないから、出すのは迷っていたのだけれど、ここに住んでいる人たちにとってなじみのあ る味。だから、多くの人に受け入れてもらえると思ってメニューに加えたんだ」とのこと。赤いものは酢漬けのもやし。ブラックフットアバロンと呼ばれるアワビは、ニュージーランド産。通常はラクサにはコックルという濃厚なうまみの貝と合わせますが、アワビと合わせることで、上品な味わいに変身します。細かく刻んだラクサリーフやコリアンダーの芽も添えられていて、東南アジアのハーブが香る本格派です。
スコットランド産のホタテの貝柱は、濃厚な甘みと柔らかいけれども、もっちりとした肉質、そこに、Joselito Hamのクリアな出汁をプラス。
クリアながら、スモーキーな香りがはっきりとあって、ここまでの旨味の流れをいったんリセットするような印象。海の幸のホ タテと山の幸のハムの競演。海藻が海のシャキシャキ感を、そして同じくシャキシャキの食感で山の幸でありながら海水のイメージのアイスプラントがブリッジ のような役割を果たします。そして、シーレタスが、レタスの苦みをぐっと強くしたような印象です。
そして、年中夏のシンガポールでも、秋の季節を視覚からも味わってほしいという、
フォワグラのフランの表面に、オーブンで焦がしたグラニースミスの粉、リンゴを飴状にしたもの、ごくごく薄い、カリカリのライブレッド で作った木の枝。
シロップに漬けこんだ生のグラニースミスが、果樹園のリンゴの実をイメージ。一瞬、オーセンティックな表面をキャラメリゼしたものかと思 わせておいて、その実はフルーツの粉という組み合わせ。フルーティーな味わいと絶妙な甘さのバランスです。
ドライエイジングした、ブラックオニキスビーフに、焦がしたナスのソース。
実は、小さなガスオーブンしかないというThe Musket Room。
木や薪のオーブンのようなスモークした香りを出すために考案した、苦心の作だとか。
滑らかな独特のとろみのあるテクスチャーのケールのピュレ、鮮やかな色の理由をお聞きすると、色止めのためにベーキングパウダーを使っているそう。蒸し煮とグリル、両方の牛肉で、食感の違いが楽しめます。そして、スウィートブレッドとは、リードボー(仔牛ののどの腺)のこと。ブイヨンで3時間煮込んで、からつぶし、米粉を付けてから揚げ てあるので、カリカリの食感が楽しめます。そして、出汁にはリードボーの香りがたっぷり。NZの郷土料理の一つで、大好物だというミートパイをイメージし たのだとか。
デザートは、凍らせたレモンの器にレモンバーベナやタイムの香るゼリー、その上に滑らかなレモンシャーベットを乗せて。
そして、その次もさっぱりと。
フルーティーで、どこか凝縮したシナモンのような甘味と刺激を感じるマダガスカル・ペッパー、甘酢に塩気を加えたシロップに漬けこんだ Cantaloupeメロン、サワークリームにライムとミント。メロンのシャーベットが中央にあり、サイドのメロンも甘いのを予想したら、ピクルスのような印象で、想定外に塩と酢が効いていてびっくり。スイカに塩をつける感覚に近いものを感じました。
普通、プレデザートは軽めに、そしてデザートはチョコレートなど、どっしりしたものでしめることが多いもの。でも、食事の最後は軽くしめるのがMattシェフ流なんだとか。「味の構成は、ピュアでクリーンなものを心掛けている。デザートが重すぎると、眠くなっちゃうでしょ」とのこと。
小菓子は、ニュージーランド人の別称でもある、「キウイ」から、キウイフルーツのパート・ド・フリュイ、個人的に大好きだというパッションフルーツのパート・ド・フリュイ、バターの香るサクサクの生地が魅力のパッションフルーツのタルト、レモンカスタードの入ったホワイトチョコトリュフ、ドライベーコンの入ったダークチョコレートトリュフという組み合わせでした。
NZ・ウエストオークランド出身のシェフ。家族に飲食関係の人はいなかったものの、子どものころからなりたかった仕事はシェフ。11歳頃からは、飲食店に行っては「手伝いをさせて」というような子供だったのだとか。14歳から本格的に仕事をはじめ、わずか20歳で、両親の支援を受けて、 ムール貝やリゾットなど、自ら腕をふるうカフェを立ち上げますが、「野心だけが先走ってしまった」というように、残念ながら2年で店をたたむことになりま す。一念発起してテレビ出演でも知られるNZの最高のシェフ、Micheal Meredithシェフの下で5年間修業を積みます。
店の前のガーデンで、ハーブや花などは育てているけれど、シェフならファーマーでなくて、料理で勝負するシェフであるべき、という考えから、ファームトゥーテーブルという言葉は好きではないのだとか。
これからも、手に入る最上の食材を使って、自分らしい料理を作っていきたい、という事でした。