2年に一度、フランス・リヨンで開催される、世界最高峰のフランス料理のコンクール、Bocuse d'or(ボキューズ・ドール).。次回は2017年1月24日・25日に開催予定。

その、アジアパシフィック地域の名誉会長でもあり、シンガポール・シェフズ・アソシエーションの名誉会長でもあるOtto Weibel(オットー・ウェイベル)シェフが、カジュアルなデリスタイルのレストランをきょう19日からオープンさせるということで、一足早くお邪魔してきました!

 

 

スイス、チューリッヒ郊外出身。両親が農場を併設したレストランを営んでいたことから、幼いころから自然に手伝いをしていたそう。「肉と野菜の煮込みだとか、典型的なスイス料理を提供するレストランだった。広い庭があって、屋外には、200席、屋内には80席の大型レストランで、雨が降ったらお客はとっても少ない代わりに、天気がいいと大混雑。10歳頃から、野菜を刻んだり、基本的な料理を少しずつ学んでいったな。」

 

母親の作る仔牛のカツレツチューリッヒ風、Emince de veau "Zurichoise"Style、スライスした仔羊のクリーム煮に、マッシュポテトの表面をカリッと焼いた料理が一番ほっとする料理なのだそう。

 

17歳で料理学校で本格的に料理を学んだあと、スイス各地で、冬はスキー場、夏はイタリア国境のスイス南部などでシェフとして働いた後、22歳でロンドンへ。Moevenpick(モーベンピック)系列のホテルで働いたあと、「世界を見たい」と豪華客船で働き、世界を2周。「旅行はしたいけれど、料理もしたい。そんな自分にぴったりの仕事だったよ」と笑います。 さらにカリブ海で1年働いたのち、1973年にShangri-Laホテルのフレンチレストランのスーシェフとして、シンガポールへ。3年間を過ごし、エグゼクティブスーシェフとなったのち、1976年にはマルコス大統領時代のフィリピン・マニラへ。Westin(ウェスティン)ホテルのオープンにかかわります。1981年以降はWestinのコーポレートシェフとして、香港、上海、日本など、アジア圏のWestinホテルの立ち上げに関わります。1985年には、現在のSwissotel The Stamford(スイソテル・スタンフォード)、当時のThe Westin Stamford Singaporeの立ち上げでシンガポールに戻り、以来2011年までの26年間、ホテルのキッチンの責任者として働いたほか、World Assosiation Cooks Societyからは、2014年にLifetime Awardを受賞しています。

 

 

現在は、先日地球の歩き方でご紹介した、ミシュラン一ツ星のScott Websterシェフと共に、会社を立ち上げています。そんなOttoシェフの哲学とは、新鮮な素材をシンプルに調理すること。「フュージョン料理は、時に、食べている人を混乱(コンフュージョン)させることになる」と、茶目っ気たっぷりに笑います。「料理には、その土地その土地に根差した正しい作り方や下ごしらえの方法がある。それにのっとって、本物の味を作ることが大切。そして、あくまでも主役はメインとなる食材。今のシェフはあまりソースを使わないけれど、やっぱり丁寧に作ったソースと一緒に食べると、素材のおいしさは引き立つと思う。付け合わせは、メインの食材の味を損なわないように、でもクリエイティビティを使う。何を食べているかわからない料理は作りたくない。自分が目指すのは、一生に一回来ればいい、というレストランではなく、何度も食べに帰ってきたくなる料理」なのだといいます。

 

日本も何度も訪れて、日本のシンプルな料理が大好きだというOttoシェフ。

「鉄板焼き、焼き鳥、衣の軽い上質な天ぷらが好き」なのだとか。

 

今回はカジュアルなレストランの展開ですが、「もちろん、ファインダイニングとカジュアルレストランでは、素材は違う。でも、どんな素材も、おいしく調理してもらう権利を持っている」。両親が農場を営んでいたというだけあって、その言葉には説得力があります。

 

「大切にしているのは、シンプルでほっとする味の料理を、手ごろな価格で提供すること。たとえば、肉やチーズ、牡蠣や魚などのテイクアウトもやっているけれども、プラス料金を払えば、好きな肉を選んで、店内で食べることもできる」のだとか。

 

シンガポールのシェフアソシエーションの名誉会長を務めるだけあって、こういった業態の店の背景には、若いシェフたちにもっと本物の料理を知ってほしいという思いもあるのだとか。

 

「今は調理器具が進化していて、何度で何分、とセットすれば、全部機械がやってくれる。でも、本来料理はそういうものじゃない。自分が料理をしていて一番楽しいのは、素材と触れている時。人間に個性があるように、素材だってそれぞれ違った味わい、個性がある。それを、触れながら確認して、その個性に合わせて料理をする、その大切さを伝えたい」

 

ドリンクは、手作りのレモネード。「個人的に、食事は酸味のあるものでスタートするのが好き。食欲が増すでしょう?」とOttoシェフ。

 

まずは、マッシュルームのスープから。(Button mushroom soup with Toasted brioche、S$8.5)

 

 

1から手作業で、丁寧に玉ねぎを炒めて甘味を引き出し、マッシュルームを加えてから、野菜の自然な出汁で伸ばし、ドライポルチーニの粉などと共に、ミキサーにかけたもの。ブリオッシュのトーストとともにいただきます。


タコのサラダ(Octopus Salad、S$17)

 


タコはしっかりとした歯ごたえで、リンゴの入った甘めの味。シンプルなヴィネグレットのドレッシング。


豚肉のバーガー(Pulled Pork Burger served with fries & condiments、S$19)

 

 

豚頬肉を低温調理で5時間調理した後、細かく裂いて自家製のバーベキューソースと共に。

柚子で香りをつけたキャベツと、自家製のピクルス、ロケットの葉がほろ苦さを与えています。

たっぷりのフレンチフライと、三種のソースを添えて。

 

 

アイダホ産のポテトを切って作ったフライドポテト。「ちゃんとジャガイモの味がするでしょう?ファストフードはもちろん、カジュアルなレストランのポテトは、ジャガイモの粉で作ったものが実は多くて、油と調味料の味しかしない。細かい部分だけど、本物のジャガイモの味を感じるものを提供したい」とOttoシェフ。ほくほくで、ジャガイモの香りと甘みがあります。

バーベキューソースに、明太子マヨネーズ、そしてSalted Egg yolkと呼ばれる、塩漬け卵黄にカレーリーフを混ぜたもの。個人的にはこの塩漬け卵黄のソースがとっても好みでした。

(以降、☆印のものには、このフレンチフライが付いてきます。)

 

☆ビーフステーキのチャバタ

(Press beef steak Ciabatta, served fries & condiments、S$20)

 

 

イタリアのブレサオラ産の牛肉の生ハムに、スイスらしいグリュイエールチーズが入ったチャバタサンドイッチ。カリカリの、サクサクのパンが香ばしく、とろけるチーズと牛肉の旨味に、自家製ピクルスの酸味やロケットの苦みが合わさった、ちょっと大人味のサンドイッチ。ワインなどのお供にもよさそう。

 
☆今度は豚頬肉を揚げたものを入れたチャバタ。(Fried pork cheek Ciabatta, served fries & condiments、S$20)
蒸煮にしてから揚げた豚の頬肉、スペイン産のイベリコハムとトマト、チェダーチーズとロケット、グリルしたパプリカと合わせています。

 

ビーフストロガノフのフェットチーネ(Beef Stroganoff Fettuccine、S$17)

 

 

こちらは、上に乗せたグリルした牛肉のハラミと、その出汁を使ったマッシュルームとサワークリームのソースをパスタと和えています。
 

クリーミーな明太子パスタ、(Norwegian Salmon Cappellini、S$16)

 


は、油と一緒に真空パックに入れ、42℃で低温調理したサーモンと共に。クリームはベーコンとスモークサーモンを漬け込んで香りを移しています。クリームベースの明太子パスタに近い感じですが、エンジェルヘアと呼ばれる極細パスタと合わせているのが面白いです。


南オーストラリア産の純血の和牛のグリル、(Limestone ridge full blood wagyu beef rump MB 4 - 150g、

S$32)

 

 

脂が少なくヘルシーな和牛をシンプルにグリルしています。断面は綺麗なロゼ色。素材の味をそのまま味わう一皿です。自家製バーべーキューソースとロケットとトマトのサラダと共に。


和牛と同じく、日本の黒豚も今では海外で生産されるようになっています。(Heritage US Kurobuta pork rack 300g、S$39)

 


あばら肉の部分を、同じく塩のみでグリルに。とても柔らかかったので、Ottoシェフに、低温調理ですか?とお聞きすると、「とんでもない!硬い肉なら低温調理する意味があるけれど、良い肉はそのままグリルするのが一番!」との返事が。なるべくシンプルに、伝統的な調理法で。そんなメッセージが感じられます。

 

デザートは、バナナをそのままオーブンで焼いたものとピーナッツバターが乗った、迫力満点のワッフル。
Burnt banana waffles、S$11.5

 

 

バニラのジェラートとベリーのコンポートが乗った定番のスタイルのワッフル。

Berries Waffles、S$11.5

 

 

表面がパリパリで中がトロトロの、クリームブリュレ。
(Crème Brulee、S$8.5)

 


カスタードの部分は、伝統的な蒸し焼きの手法で焼き上げ、パイナップルのとラム酒のコンポートと共に提供されます。

 

Ottoシェフが普段甘いものは食べない、というだけあって、シンガポールにしては、どのスイーツも甘さ控えめなので、シンガポールのクリームたっぷり、甘すぎるデザートが苦手という方にも楽しんでもらえそう。

 

10月21日からドイツ・エアフルト市で開催される、第24回世界料理オリンピックの審査員として出発するOttoシェフ。そんなシェフの元に集まった若手シェフたちが、腕をふるうデリ。

 

通し営業でベビーチェアも完備、子連れでもカフェ感覚でのんびりできそう。

Ottoシェフが世界を旅して見つけた、「自分のキッチンに置きたい調味料」などもそろっています。近くを通りかかったら、気軽に訪れてみてくださいね!

 

<DATA>
■ Otto's Deli Fresh(オットーズ・デリ・フレッシュ) 

営業時間:11:00~22:00(無休)

住所:118 Holland Avenue #02-01, Raffles@Holland Village Singapore 278990
電話: +65 6694 3291 
アクセス:MRTホランドビレッジ駅徒歩1分