本格的なフレンチのコースが、お手頃価格で食べられると、シンガポール在住フランス人に大人気のお店、Chez West。儲けは考えていないので、ほぼ使っている食材の値段のみしかとらないというレストラン、その理由は、ここが学校だから。

{FF82B66A-BD1B-4FC9-8E01-B9091461B947}


政府が設立した工科大学の一つITE、イースト校は看護、セントラル校はメディア、そしてこのウエスト校はホスピタリティーに特化しています。
7000人の生徒を抱える大きな学校ですが、その中で500人が料理コースをとっています。
中学を卒業後、2年の授業を受けるのが基本的なコースですが、その中でも成績が優秀で、かつ面接を突破したトップ20人が参加できる、スペシャルコースが2011年に設立されました。
食を大事にする国、シンガポール。とはいえ、若いシンガポール人のシェフがなかなか育たないという問題がありました。この問題を解決すべく、リヨンにあるポール・ボキューズの料理学校、Institut Paul Bocuseと提携して生まれたこのコースは、2年半のコースを修了すると、ポール・ボキューズの料理学校の学位だけでなく、フランス政府公認の学位がもらえるという、本当にスペシャルな内容。
更にその中から優秀な4人の生徒が選ばれ、各一名ずつ、ミシュラン二つ星の La Pyramide Restaurant(ラ・ピラミッド・レストラン)、Maison Lameloise (メゾン・ラムロワーズ) 、Guy Lassausaie (ギ・ラソゼ)、三ツ星のAnne Sophie Pic (アンヌ・ソフィー・ピック)、などの、フランスの星付きレストランでの研修が受けられるなど、まさにエリート養成コース。

そして、そんな生徒たちの実習の場として設立されたのがこのレストラン、Chez West(シェ・ウエスト)という訳なのです。

{0B1D673D-6629-4BA8-BFF8-3352B964D890}



未来のスターシェフをサポートしながら、美味しい料理がお手頃価格で食べられます。
ちなみに、サービススタッフも、ホスピタリティー専攻の学生たちで、とても丁寧な接客が受けられます。皆、学ぶという意識で臨んでいるせいか、町のカジュアルなレストランよりもはるかに居心地が良いかも。

{76F434C0-F712-46EE-9FED-10F6EC964D6F}

(帰り際に撮ったので席は空いていますが、フランス人グループや家族連れで満席でした)

年に4回、フランスから著名なシェフを招いて、生徒たちと一緒に料理をしたメニューを提供するイベントが行われていますが、今回は、5月19日、20日と、 La Pyramideの料理長、Christian Nee シェフを招き、特別なランチ・ディナーメニューが提供されているということでお邪魔してきました!


初日には、シンガポールのOng Ye Kung教育相代理もやってきて食事を楽しんだとか。

{1174C3A0-755D-4E54-B3D7-07FBEF1FCAC0}

(左端がOng氏)

まずは、アミューズ。
Braised Australia Bone Marrow, Spring Vegetables, Botanical Fruit, Toasted Brioche

トーストしたブリオッシュに、ボーンマローと野菜が乗った軽やかな前菜。

そして、前菜は、La Pyramideのシグネチャーでもある、Garden USA Asparagus, Boiled Corn Polenta, Edible Spring Flowers, Cheese Perfume

シンガポールでは、本来使うリゴットチーズが手に入らないため、フロマージュブランで代用したということですが、シャキシャキしたアスパラガスは、オリーブオイルの緑の香りをまとい、ふんわりとしたチーズのムース、そして上からかけられたパルメザンチーズが

すっきりとした印象です。

続いては、魚のメインディッシュ、Norwegian Langoustine, Spring Garden Vegetables, Slow Cooked Risotto, Crustacean Perfume。ロブスターとタラのムースをドーム状にして、ソラマメを添え、黒米のパフを散らし、ラングスティーヌ(手長海老)を乗せた一皿。

ロブスターの風味が濃厚なソースには、フランスではなかなか手に入らないという、新鮮な生姜に感動したというChristianシェフが、レモングラスと共に隠し味として入れていて、

気づくか気づかないか程度の甘くさわやかな香りが、ラングスティーヌの甘さを強調していました。

肉のメインディッシュは、New Zealand Farmed Venison, Wilted Lettuce, Charred White Onion, Glazed Baby Carrot, Potato Gratin, Valrhona Chocolate jus


ニュージーランドで飼育された鹿肉に、レタス、玉ねぎ、にんじんなどの付け合わせ、ジャガイモのグラタン、そしてヴァローナチョコレートでアクセントをつけた肉汁。


鹿肉ならではのしっとりとした食感はそのままに、チョコレートのカカオの甘い香りをまとったすっきりとした肉汁、そしてカリカリに表面を焼き上げたグラタンなど。

デザートは、Duo of Hazelnut, Chocolate Soil, Spring Berries, Crispy Streusel, Raspberry Jelly, Amareto Ice Cream

ラズベリーのゼリーを乗せたチョコレートムース、アーモンドのお酒、アマレットのソルベ、カリカリのミルフィーユ。


Christianシェフはフランス語しか話さないということで、フランス語がペラペラの生徒がインタビューの通訳をしてくれました。
リヨンの南に位置するレストラン、La Pyramide(ラ・ピラミッド)。日本でもパレスホテルのレストランの料理の技術顧問をしているということで、何度も東京に行ったことがあり、寿司が大好きなんだとか。

モダンな料理が流行っているパリに対して、伝統的な料理が生きているリヨン。
Christianシェフの料理でも、東京で見つけた鰹節を使ったりはしますが、あくまでもアミューズなどの、本格的な食事の前の軽いものに加えるだけ。メインディッシュなどに加えることはないといいます。また、エスプーマなどを使うことはあっても、あくまでも繊細で上質なフランスの伝統料理に、独自のモダンな解釈を加えたもの。




「料理で大切なのは、素材の質と、味のバランスの精密さ、そして野菜をどのように切るかなどの、根本的な技術」と語るChristianシェフ。
日本の生徒は、休みを取らずに料理のみに集中するけれど、シンガポールの生徒は、オンオフの切り替えがしっかりしている。どちらがいいとは言えないけれど、違ったキャラクターを持っている。

今は大雑把な傾向について話したけれど、シンガポールの生徒でも、様々な個性があるから、それに合わせた指導を知るように心掛けているよ。これからの料理の世界は、どんどん進化してきている。例えば、テクノロジーが進んで、昔は細かく火加減を調節していた低温調理が、真空調理機の登場で、ボタンを押せばできるようになった。こういった進化で、料理自体は簡単になったり、早くできるようになるかもしれない。もしかしたら、食材に触らなくても、料理ができるようになるかもしれない。それでも、料理というのは、やはり人の手で作るもの。伝統的な手法と、現代的な手法、両方のバランスを考えていくことが必要だと思う。と話していました。


1964年生まれ、現在52歳のChristianシェフ。もうMOF(国家最優秀料理人)も2004年に取ったし、フランスでは、リタイヤしてもいい年齢なんだ。だけれども、
La Pyramideを三ツ星にするまでは、リタイヤできないと思っている。まだまだ頑張っていくよ、と話してくれたChristianシェフ。

7月には東京のパレスホテルで、Christianシェフによる特別なイベントも予定しているのだとか。

そして、このITEでは、年4回、今回のように、Christianシェフのような著名なシェフと生徒たちによるダイニングイベントを予定しているのだとか。

特別なイベントも、アミューズ、前菜、魚、肉、デザートという5コースで、70シンガポール(税・サービス料込)というお得な価格。(通常は35シンガポールドル程度)
ワインはボトルで25シンガポールドル程度からそろっているということで、美味しい料理をお手頃に楽しみたいという方、特にウエストエリアに住んでいる方にはおすすめです!


■Chez West(シェ・ウエスト)

住所:ITE College West Block 2 Level 3, 1 Choa Chu Kang Grove, Singapore 688236

電話:6411 1332
Email:Rajeev_saxena@ite.edu.sg

営業時間:12:00~14:30(ランチ)、18:00~20:30(ディナー)、不定休(事前予約がおすすめです)