ギリシャ神話のパンドラの箱の物語で、最後まで箱の中にとりのこされた”Hope”、がタイトルの由来でありそのストーリーをヒントに作った曲です。2004年の作品。

遠い昔の、災いも病気も争いも何もない幸せな平和なある日、パンドラという美しい女性が、巨人プロメテウスが人間に火をもたらした代償として、ゼウスによって人間界に送り込まれるんですよね。

パンドラはプロメテウスの弟のエピメテウスと結婚して幸せに暮らすのだけれど、そこで、プロメテウスが残した黄金の箱に出会うのです。エピメテウスに、この箱は決してあけちゃいけない、といわれて最初は忠実に守っていたものの、ある日どうしても我慢できなくなって空けちゃう。そして、箱に入っていた、病気、憎しみ、争い、犯罪、悲嘆などなど、ありとあらゆる悪が人の世に飛び出してしまうのですが、パンドラが慌てて蓋をしめたために、希望だけが箱にとりのこされてしまう。プロメテウスがもしものために箱の中に忍ばせておいたらしい、希望。その、希望が、箱の中から、”わたしも外にだしてください”ってパンドラに御願いして、パンドラが再び箱を開けて、希望が世界に飛び出して。

だから私たち人間は、生きててどんな辛い悲しい事があっても、決して希望を失わないでいられるのです。

という、ハッピーなのかどうなのか、正直よくわからない複雑な心境になってしまう、パンドラボックスストーリーをベースに。なにも憂いごとのない平和で穏やかな世界を象徴したイントロから一変して、トランペットソロではゼウスの陰謀によってパンドラが人間界に送り込まれるなんとも不穏な空気が漂い、アルトサックスフィーチャリングソロでは、パンドラが箱を開けるに至る心の葛藤を、そして、ドラムスのソロのところで、箱を空けた後に様々な災いと、最後に希望が飛び出す、そんな、情景なり心の動きなりを音楽に載せてみました。フリージャズの影響もそこそこ濃いかなと思います、電気もつかってみたりします。

願わくば、物語を頭に描きながら聴いて頂きたいものです。

佐藤恭子