Forme d'amour 

~アイノカタチ~② Orion 




 ベルサイユのばら 2次創作現代小説 

 第2段です。 



 設定、全て前作とは違います〰️。(当たり前だ(笑)) 



 ↓このメッセージは、この小説を書いた、だいたい今頃(2023年10月)に書いたものです。


 ↓ 


 ベルばら現代創作小説がお好きでない方は、読まないで下さいね( ̄▽ ̄;)


 18世紀ものは、また、たまにチビチビ書きます〰️💦


 さて、この連載、いつまで続くか、書いてる本人もわからないです!(笑) 




 この小説は、中島美嘉さんの、ORION、will をイメージしながら書きました。


 合わせて聴いてみて下さいませ。

 彼女のバラードは切なく美しい。 



 ~🌹~🌹~🌹~🌹~🌹~🌹 ~🌹 



某年 


12月。



 年末に近づくにつれ、広告代理店は忙しくなる。



 各企業や、イベント会社との共同企画で、ノエルのイベント企画を毎年いつくも抱えている。


 その構想は春から始まる。



 夏までには企画の内容を全てを決め、次は会場設営の打ち合わせとなり、11月に入ると一気に全ての設営が始まる。 



 もちろんレニエ広告代理店も、大小様々なイベント会場の設営をスタッフが見て回りながら、細部まで施工業者と現場でディスカッションしてゆく。


 専務取締役のオスカルでさえ、3つのイベント会場のノエルイベント企画を任され、

アンドレが補佐をしていた。 



 今日は、某デパートの閉店後、1階吹き抜けフロアでのノエルのイベント企画と、広いフロア全てのイルミネーションの飾り付けを、細かくチェックしている。 







 「オスカル、少しは施工業者を信用しろよ?お前が全てをチェックする必要はないと思うよ」


 「ああ。わかってる」

 そう言いながら、設営図面から目を離さない。


 「あらかたチェックは済ませたよ、そこは。さっき施工業者とライトの点検もした」

 「そうなのか?…早いな。ありがとう」


 アンドレは、スターバックスのカップをオスカルに渡した。 


 「閉店後のデパートは暖房もつかないからな、寒いだろう?お前の好きなソイ・ラテを買ってきた。あったかいうちに…」 

「うん…。ありがとう…あたたかいな」

 一口飲むと、吐く息が店内なのに白くなった。アンドレはカフェオレを飲みながら時計を見る。 


 「12時までには終わるな。これ飲んだら俺は最終チェックをしていくから、2階から確認してくれるか?」 

「わかった」

 じゃあ、と手を上げるとアンドレは、施工業者が集まっている所へ走っていった。


 オスカルがその後ろ姿を静かに眼で追う。


 その時、


頭がクラクラ回るような感覚と、

急に腹痛がした。 


 身体がかなり冷えている。と、自分でも気がついた。


 あと1時間でここのデパートのノエルデコレーションも終わる。 



 「……お腹が冷えたのかな…少し休憩しよう」

 螺旋階段で、2階にゆっくりと上がり、フロアにある店内の隅に置かれた椅子に腰掛け吹き抜けの1階を手すりの隙間から覗いた。


 最終チェックが終わり、オスカルのオッケーがおりると、ここのデパートのノエルデコレーションは完了した。 



 アンドレは螺旋階段を駆け上がり、2階にいるオスカルのいる場所へと向かっていった。 



 「オスカル、良かったな。完成だ………オスカル?」


 見ると長椅子に横たわるオスカル。 


 「ああ。大丈夫だ。身体が冷えたみたいで、少しお腹が痛いだけだ」 


 「大丈夫な顔じゃないぞ。真っ青だ。とにかくここを出よう。もう警備員が鍵を閉めるから」


 「…わかった…」

 が、身体に力が入らない。

 それを見たアンドレは、オスカルを抱き上げ、螺旋階段を降りると、警備員に挨拶をし 

すぐさまデパートから出た。



 夜、12時半になっていた。 


 タクシーを呼び、オスカルを先に乗せ、横にアンドレが乗ると彼女の肩を抱き寄せた。 


 「病院に行くか?」 


「いや…違うんだ。病院はいい。ホテルに帰る」


 オスカルはすぐ側にあるアンドレに耳打ちした。直ぐ理解したアンドレがインターコンチネンタル ・ル・グラン・ホテルへと運転手に伝えた。


 オスカルを抱き上げたまま、ホテルのプライベートルームに入ると、彼女をベッドに下ろし


 「バスルームに湯を入れてくる」と、

アンドレはスーツのジャケットを脱ぎながらオスカルに言った。


 「アンドレ、そんなに慌てなくていい。たかが生理痛だ。病気じゃない」 

 「でも、生理痛でも…そんなお前の顔色、見た事がないよ。真っ青だ」 

 バスルームに湯を入れて戻ってきたアンドレが、ベッドの傍の椅子に腰掛けた。 


 「大丈夫だ。たまたま生理痛が酷いのと、身体が冷えきっただけだから」

 安心させるようにオスカルが呟く。


 アンドレは幼い頃から、オスカルの傍にいて、彼女が初潮を迎えた時も、その理由をおばあちゃんや、メイドからちゃんと教わっていた。


 (一番傍にいるのはお前だから、オスカル様の身体の変化も管理もしなくればならないよ。

その為に、お前も、ちゃんと勉強や色んな事をオスカル様と一緒に学ばさせて頂いているんだから) 


 おばあちゃんから、オスカルの初潮の時に言われた言葉だ。 


 だから、オスカルもアンドレだけには、伝えている。 


 アメリカから帰ってきた後も、オスカルは躊躇なくアンドレだけには教えた。


 昔からの習慣がまだオスカルの中に残っていたのか、それとも言える人が他にはいないのか…。 



 「とにかく、身体を温めて。バスルームまで連れて行くから」 


 「アンドレ…」 


「ん?」

 アンドレは湯がたまったのを確認すると、オスカルを抱き上げた。 


 「俺はバスルームの直ぐ外で待機してる。めまいとかしたらすぐ呼んでくれ」 


 「そこまでしなくても…」 


 「駄目だよ、オスカル。この所、お前は休んでないし、酷い生理痛で立ちくらみする位だぞ?…いいから、ゆっくり入ってて」


 「わかった…」


 オスカルはバスルームに入って、服を脱ぐと、ちょうどいい湯加減の湯船に浸かった。


 外から 

「オスカル、痛み止めを用意してくる。少し離れるぞ」とアンドレの声に 

「うん…わかった」と小さく答える。



 オスカルは思う。 

昔から、私の事に関しては、全てを把握してくれていて、アメリカから帰ってきた後も、体調管理も、何もかもしてくれている。

 不思議な位に、自分を大切にしてくれる。


 幼なじみ、だからか? 


私が社長の娘、だからか? 


 ………他に……期待している自分がいる。


 「ふふ……。あり得ない…」 


 オスカルは、湯船に浸かり、顔を沈めて流れた涙を、湯に掻き消した。



 「オスカル、大丈夫か?」

 外からアンドレの声が聞こえた。

 「ありがとう。温まったよ。そろそろ出る」

 と、立ち上がろうとした途端、目が、頭が、ぐるりと回り湯船に、バシャン!と沈み込んだ。

 その音に反応して 


「オスカル!?大丈夫か!?開けるぞ!!」

 と、バスタオルを手に入って来た。 

 「あ!アンドレ…」 

私は裸だぞ?と、言おうとしたが、目がまわり言葉にならない。 

 アンドレは素早くバスタブからオスカルを抱き上げると、バスタオルで身体を包み、リビングの大きなソファーに横たわらせた。


 部屋は暖房がかなり効いていてあたたかくなっていた。


 「待ってろ。もう何枚かバスタオルと、バスローブを持ってくる。……必要なら医者を呼ぶよ?」 

 オスカルの為に色々とテキパキ準備をしながら話す声に 

「医者はいらない。先日、貧血気味だと言われた。多分それだから、いらない」

 「でも…」 

アンドレは、オスカルの濡れた髪を柔らかなバスタオルで丁寧に水滴を取りながら、彼女の顔を心配そうに覗き込む。 

 「大丈夫だから…」 

 間近に、目が合う…。 

 オスカルは慌てて、顔を背けた。


 「バスローブを…。自分で着る」


 「…わかった…。後ろを向いてるよ」 

 アンドレは、オスカルに背中を向けた。



 めまいでうまく袖が入らない。 

 早く着ないと…。と、オスカルは気持ちが焦る。



 暫くして。 


 「すまない。アンドレ。うまく着れない。着せてくれ」

 「え!?」 

「幼い頃は一緒に風呂にも入った仲だ。今さら私の肌を見られても、構わない」 

「しかし…」 

 オスカルは、くしゅん!とくしゃみをした。慌ててアンドレは身体を向きなおし、バスタオルがはだけたオスカルの白い身体が視界に入った。

 自力で着るのを諦めたバスローブが、片方だけ手が入った状態で、オスカルの形よい胸が露になっている。


 アンドレは 

「……ごめんよ。俺が目を閉じたら着せられないから……見たくて見てるんじゃないぞ」と、言いながらバスローブを着せた。


 その言い回しに、オスカルはフッと微笑んだ。(お前らしい、言い方だ…別に、見られても構わないのに。お前なら…) 

 ちゃんと着せると、アンドレは再び抱き上げ、ベッドへ下ろした。


 「痛み止めの薬だから、空きっ腹は良くない。冷蔵庫に何か入ってる?」

 「……多分…」 

 「じゃあ、すぐあたたかいスープを作ってくるから。待ってて」 

 毛布をオスカルの首まで引き上げ、アンドレはキッチンへと向かった。


 暫くすると。


 卵とクルトンのコンソメスープを作って来た。ベッドのサイドテーブルにスープカップが置かれる。


 テーブルには伏せられた写真立てがあったが、アンドレは気にも止めなかった。



 「美味しそうな匂い…。アンドレ、料理が作れるんだな」 


 「IT会社で働いてた時に自炊してたから。料理はなんでも作れるよ。じゃあ、ゆっくり飲んで。次はお腹を温めるものを用意してくるから」 

 アンドレはオスカルの少し乾いた髪をクシャッと撫でると、一旦、隣の自分の部屋へと戻って行った。


 まだ少しめまいがするが、身体が次第に温まると、少し楽になったような気がした。 



 「お待たせ。これ、小さいのはお腹の上に。あと大きいのは足元に入れてみて」 

 タオルでぐるぐるに巻かれたタンクみたいな物を2つ抱えて戻ってきた。


 「スープ、ご馳走さま。薬はいま飲んだ」 

と言いながら、そのタンクを受けとる。 


 「アンドレ、これは何だ?」

 「これはね、IT会社で日本に出張してた時に、勧められて買ってみたんだ。すごい画期的なものなんだ」 

そう言いながらオスカルを横たわらせると、小さいタンクはお腹の上に、大きいタンクは足元に置いた。


 「……あ……あったかい…これはなんだ?」


 「yutanpo(湯たんぽ)って言うんだ。アルミタンクにお湯を入れて、直接身体に当てないようにタオルを巻いて使うんだ。どう?お腹もぽかぽかになるだろう?」


 湯たんぽをお腹に乗せて毛布を掛けている姿を自分で見て、オスカルは笑った。


 「あたたかいけど…毛布を掛けたら奇妙だな。なんだか妊婦みたいに見える。お腹が膨らんでるから」 

 「…ほんとだ。ごめん」 

 「どうして謝る?これはお腹があったかくて気持ちがいい…足元もあたたかい…。何だか…眠くなってきた」


 時計を見れば午前2時を過ぎている。

 体調を良くして、眠らせてあげたい。

 アンドレはそう思った。


 「オスカル、明日は午後から仕事が入ってるけど、体調があまり変わらなければ、代理で俺がやるから。とにかく今夜はぐっすり寝てくれ」


 心配そうにベッドの傍で言うアンドレに、オスカルは毛布から手を出した。


 「私が眠るまで…傍にいてくれないか…」「え……?」

 差し出された、その白く細い手を、アンドレは優しく握りしめた。 

 「わかった…。ここにいる。安心しろ」 

 「ありがとう、アンドレ…。子供の頃を思い出す…」 


 オスカルは、安心仕切ったように目蓋を閉じて暫くすると、小さな寝息を立て始めた。 


 「良かった…。今日は大変だったな、オスカル…ずっと我慢してたんだろう…。」


 すっかり眠りに入ったオスカルの素顔を間近で見つめる。




 世間では、

 世界に影響を与える美しい女性100人の、トップになった事もあるオスカル。


 美しいが、性格がたくましくて、強いイメージがあるかも知れない。 



 だがいま目の前で眠る彼女の素顔は、まるで少女の時と変わらない。 

 切れ長の睫毛に、細い鼻筋。 


 そして、天然のクルリと巻く、美しいブロンド。

 顔色は先ほどより遥かに良くなり、頬に紅をさしたようにピンク色になっていた。

 顔が小さいのでパーツ全てが小さいが、瞳と唇だけは、大人びていて、少年のアンドレはドキドキした事も度々あった事を思い出す。 



 そういえば…。 

 さっき見てしまった、彼女の白い胸の膨らみ…。


 あのときは慌てていたが、今、思い返すと、鼓動がドクドクと早鐘を打つ。


 オスカルも、今年のノエルで28歳になる。

 白い手をゆっくりと撫でながら、アンドレはオスカルの寝顔に近づいた。 



 すー、すー、と可愛い寝息を立てている。


 暫くその女神のような寝顔を眺めたあと 

 アンドレは、



そっと彼女の唇に、口づけた。



 「おやすみ、オスカル。しばらくはこうさせてくれ」




 そういって、



もう一度、彼女の唇に、静かに口づける。




 窓の外に大きく光る満月を見上げた。











 ③に続く