Les roses que nous rencontrons~


 巡り逢う薔薇たち⑥ 



 🟣If...もしも…。




🟣オスカルがあの日、死ぬ事なく現代にタイムスリップしたら。

 生まれ変わっていたアンドレと再会したら…?


 とある方の言葉をヒントに物語をかいて見ました。 




 🔴6月25日アメブロ アニメ・マンガレビューランキングにて、2位になってしまいました( ̄▽ ̄;)ありがとうございます!!



🔴6月28日

アメブロ 人気記事ランキング1位

に、なりました😭

ありがとうございます(._.)

びっくりしました( ̄▽ ̄;)💦




🔴2024年6月 28日 


 第6話目 書き下ろし 




 ~🌹~🌹~🌹~🌹~🌹~🌹~🌹~🌹~🌹




 アラスに着いた。 



 ナビは正確にジャルジェ家一族の墓地を示した。 



 丘の麓でアンドレが先に降り、助手席のオスカルに手を差しのべエスコートする。 


 「ありがとう、アンドレ」 

 花刺繍たっぷりの美しい白いロングワンピースのスリットから、白い足、そしてシースルーの今流行りの白いブーツを履いて、車から降りた。 


 足を踏み出す度に、みずみずしい、シロツメクサの草原が、なんとも言えぬ夏らしい丘の香りを放つ。 





 手を繋いだ2人は、ゆっくりと丘を登った。「多分、あそこだ、アンドレ」 


指差す方向に、墓碑がならんでいる。



 花束をたくさん抱えていたアンドレは、坂道の丘で何度か滑りそうになった。 


オスカルが手をギュッと握り、2人は笑いながら手を繋いで丘を上がってゆく。


 一番高い丘に着くと、

 まず、歴代のジャルジェ家の墓碑がある。 


 オスカルは、すこし奥まで入り込み、一番古いご先祖様の墓碑に花束を手向け、十字を切り、祈りを捧げた。 



 次に。愛しい夫、アンドレにグランディエの墓を見つけ、オスカルは静かに跪(ひざまづ)き、涙をこぼしながら、愛しそうに墓碑に手を添え…しばらくの間、

墓碑に彫られた夫の…年月で削られた、かすれた名前を見てどれだけの年月が流れてしまったのかと 

名前の所を静かに撫でた後… 






 バッグに入れていたあの手紙を出した。



 彼女の瞳が、(読んでいいか?)と、アンドレを見つめる。 


アンドレは、直ぐ側で跪き、


 目を閉じ、墓碑に祈りを捧げた。


 オスカルがひと呼吸すると、手紙を開いた。







 我が夫、アンドレ・グランディエへ 


 私が貴方と逢うのは、昨日の事のように思えるが、実際は、既に235年も経過している。



 アンドレ…お前が先に逝ってしまって。



 絶望の中、信じられないまま、あのバスティーユ牢獄を攻撃した。 




だが、戦さの大煙に私は意識を無くし、

 気がつけば私はここにいる。 


 アンドレ…。どうして先に死んだのだ?


 どうして私を連れて行ってくれなかったのか?


 私は気がつけば235年後お前と同じ名前のアンドレ・グランディエが、私を助けてくれていた。 


私の部下、そしてお前の友人でもある、アランとも再会したぞ。


 未来のお前の親族である、

お前の血も流れている彼が、今、私の傍にいる。 


 お前は235年後のアンドレに私を託したのか…? 

お前は先に死んでしまったから…。


 だから、235年後に私は来たのだろう?

 私にはそれが判る。 



 235年後のアンドレ…


私の隣にいる、彼はお前と同じ、優しい匂いがする。声も姿も、何もかも…お前にそっくりだ。 

そっくり過ぎて、生き返ったのだと最初、信じた位だよ…。 



 我が夫、アンドレ・グランディエ。


 お前の横に眠る私の墓は、私の身代わりかも知れない。お前はよく言っていた。 


「武官はどんな時も感情的に行動するものじゃない」…。



恥ずかしいが、私はその言葉を守れただろうか…。

いつも感情的で…。





私はフランス革命から235年後にいる。


 私は…戦いから逃げたのだろうか…?

 隣に眠る階級章は、

本当は、アンドレ…お前にふさわしい。


 私は感情的だからな。


 でも。私は今の数奇な運命にはもう逆らわない。そう決めた。 


 オスカルの声が小さく掠れた。


 頬にはもう、涙はなかった。 




 「私は……私は…隣に居るお前の血を引くアンドレを……」 





 その時。 

 オスカルの肩を抱いて、だまってオスカルのメッセージを聞いていたアンドレが小さな声で歌い出した。 








 ときは、めぐりめぐるとも…


 いのち謳うものすべて懐かしきかの人に… 


 終わりなき、我が想いをはこべ


 我が想いを…はこべ… 



 ああ、その青い瞳はその姿は… 


 さながら、天に吼(ほ)ゆるペガサスの心震わす翼にも似て… 



 ブロンドの髪… 

 ひるがえし… 

 ひるがえし… 








「アンドレ……!?」 

 オスカルは手紙を落とし、隣のアンドレを見上げた。


 「そ、その歌は……何故…お前が……」

 アンドレは静かに微笑み、彼女の両肩に手を添えた。 


 「オスカル……。思い出した……あの時の記憶を…お前と生きてきた記憶ごと…全てを…」


 「……アンドレ……」 


 「ここにきてわかった…。俺は…お前の為に生まれ変わっていたんだ…。今…いま、それを全て思い出した…。あのセーヌ川で小舟に乗って気を失っていたお前を見た時から…もしかしたら、少しずつ思い出していたのかも知れない」


 オスカルは大粒の涙をポロポロとこぼしながら、並んだ2つの墓の前で、アンドレに抱きついた。 


 「アンドレ…私のアンドレ…。もう何も2人を分かつものはない。私を待っていてくれていたのだな…アンドレ…」 


 「ああ。ずっと…。ずっと、待っていたんだよ、オスカル…あの時は、先に死んですまなかった…」 


 オスカルは涙を拭いながら、顔を上げて言う。「本当だ!ばか野郎!」


 その彼女の声を吸い取る様に 

 アンドレはピンク色をしたオスカルの柔らかな唇に、自分の唇を重ねた。 


 次第にその2つの唇が熱く熱を持ち深く深く絡まってゆく。 



 心も、そして互いの身体中も。 


 唇を離すと、2つの唇は微笑んだ。 


 「アンドレ…」 

 「ん?」 

 「約束だ。235年待たせた。もう、戦いはない。平和なフランスだ……わたしと…結婚してくれるか?」 


 「オスカル…もちろんだよ…」




 「愛している…永遠に。ずっと…ずっと…」 



オスカルはそう囁き、アンドレの首に白い腕を絡みつけ、もう一度、口づけた。

 アンドレの強い腕が、オスカルの背中とほっそりとした腰に回る。 




 「オスカル……俺も…愛して…」

 と、その時。 



 アンドレの携帯が静かな丘に鳴り響く。


 アンドレは、オスカルにごめん、

と言って携帯に出た。



 (アンドレか?) 


 「アラン!?」


 (ああ、俺だよ!オスカルがそこにいるなら、伝えてくれるか?旅行から帰ったら、定期検診がある事を伝え忘れた!) 


 「アラン…わかった。伝える。じゃあな」


 オスカルがアンドレに抱きついたまま、急に笑いだした。 


「アラン…この世でも、変わらないなあの性格は」 

 「まったくだ。ロマンチックが台無しだよ」




 2人は抱き合い、

オスカルを姫抱きし墓の前で回った。


 「アンドレ、神聖な墓の前で…」 


「でも、たまらなく嬉しいんだ」


 そして、2人の唇は何度も互いの熱い唇を奪い合い、嬉しくて…嬉しくて。涙が止まらなかった。 



 せっかくアラスに来たのだから、と、

アンドレは急遽、アラスでメルキュール アラス サントル ガール ホテルをリザーブした。

メルキュール アラス サントル ガール人気の高いホテルだ。何度か出張で宿泊した事があるが、オスカルと2人で過ごす、大切な今夜。


 一番高い部屋を選び、夜景を見ながら夕食を楽しんだ。 



 「…で?アランが言ってた、定期検診って?」


 風呂に入り、ベッドの中で、久しぶり…235年ぶりに、裸で抱き合う彼女に聞いた。


 「ああ…。頭の外傷が少しあったから、とりあえずは、脳の検診を暫くしなければならないらしい。あと、今の時代は、予防接種とかもあるようで、麻疹(はしか)と脳炎の予防接種を、今の体調で受けれるかを調べてみるから、血液検査もする、と言われた」


 「それ…内科の検診じゃない?アランのやつ、オスカルに惚れてたから、何かにつけて病院に来させようとしてるな」 


 「まあ、アランもいいやつだ。あ、でもお前には負けるぞ、アンドレ」 

シーツの中で、オスカルが軽くアンドレに口づけた。

 「アンドレ…」 


「なに?」 


「8月26日、お前の誕生日に結婚式を挙げよう」 


「え!?もう、10日もないじゃないか」 


「2人だけで、小さな教会ですればいい。ささやかな式がいいんだ」 


「2人だけ…で、いいのか?」 


「ドレス姿をアランに見せるのは、一番恥ずかしいからな」 


アンドレの腕の中で、オスカルは、悪戯声で、クスクスと笑った。


 そして、 

 8月26日前日、


パリに戻り。 



 アンドレの誕生日の26日。


 2人だけの結婚式を挙げた。


 パリ市中心部を流れるセーヌ川のほとりに 佇むアメリカンチャーチと言う教会。 






 1931年に建てられた教会の外観は ゴシック様式のなかでも特に 「フランボワイヤン(燃えるような)様式」 と呼ばれる炎のような装飾が ひときわ美しく、重厚な雰囲気を醸し出す。 




 ウエディングドレスは、アンドレのタキシードも含めて、アンドレの取引先のウエディングファッションデザイン製作会社が、急遽、一式用意してくれた。








 真っ白な細身のドレスに、布で薔薇のモチーフがあちこちにちりばめられ、スワロフスキーもドレス全体に飾られた。ウエストのラインを強調した、細身のオスカルがまるで、白薔薇になったような目映いばかりの美しさだった。 


 ブーケと、発注していた結婚指輪も前日、


アパルトマンに届いた。




2人だけの結婚式。



 それは荘厳で、静かで、煌びやかな式となった。 



結婚式が済んで数日あと、



 オスカルは、アランのいる病院へ定期検診に向かった。 


 「ええ!?結婚式を挙げたあ!?」 


 とオスカルの告白に動揺しながらも、ぶつぶつ言いながら検診前の、問診をする。 

 「愛し合った2人が結婚して、何が悪い?」

 オスカルはパソコンから目を離さないアランに、不満そうに言う。 


「いや、悪くはないと思うんですけどね……出逢って1ヶ月ちょっとで?結婚?そりゃ、誰でもビックリしますよ」 

 「出逢って1ヶ月ちょっとではない。長い間、この時を待っていたんだ」

 「あー、はいはい。生まれ変わりの話、ですね」


 「アラン!こっちは真剣に言っている」

 低い声でオスカルはアランに言うがアランの方は、ヒュー♪と口を鳴らすが、

目はパソコンから離れない。 




 (何て言い方だ!アラン!昔の私なら椅子を蹴飛ばしてたぞ!)


 「で?体調はいかがですか?マダム」 


 オスカルは、昨日辺りから、身体が少しだるく、熱もある、と白衣のアランに告げると、血液検査と、MRI検査を勧めてくれて、その結果が出るのを控え室でじっと待っていた。 





 後から遅れてアンドレも病院にやってきた。「どう?結果は?」 

 「まだ。今から結果が出ると思うが…たいした事はないだろう」 

 待ち合い室で2人座っていたが、看護師が現れ、こちらにどうぞ、と2人を促した。



 「お!旦那も一緒か?アンドレ」 

「久しぶりだな。この前の電話のタイミングにはビックリしたよ」 

「はあ?何が?」 

「いや、何でもない。こっちの話」 

 アランは、何だよ?と言いながら 

「ちょっと計算が合わないんだけどなー…」


 と、オスカルのMRI画像と、エコー写真を見せた。



「オスカルさん。妊娠していますよ」


 「……え……?」 


 「まだ人間の姿形もしていないけど、妊娠7週目に入っています」 



 オスカルも驚いたが、アンドレも驚いた。この時代に入ってオスカルと寝所を共にしたのは、アラスのホテルだ。 


あれから、毎晩一緒に寝てはいるが、

 妊娠するには早い。




 オスカルには、覚えがあった。


 1789年7月12日…。


 出撃前夜、アンドレの妻にと告げて、


 2人は結ばれた。 





 「オスカルさん。妊娠がわかったからには、予防接種も出来ません。……そして。ご懐妊、おめでとうございます。次は産婦人科に行って下さいね。詳しくはこちらに産婦人科医を呼びますので、通院などの話を伺って下さい。マダム・グランディエ」 


 「……あ…。ありがとう。アラン…」

 「おい!アンドレ!最初に会った時に、やったのか?酷いヤツだ!手が早いなあ」

 「何でだよ!?違う!違う!違うんだ!」 

「でも、マダムは妊娠してるじゃないか。おめでとさん!お二人さん。じゃあ、次の患者がいるから、またな」 

「あ、ああ。今度、夜、飲みに行こう、アラン。俺のおごりだ」 

「あたりめーだ!じゃあな」 

 2人の様子を呆然と眺めていたオスカルは、 


ようやくアンドレの差し出された手が目の前に来て、我に返った。

 

「帰ろう。オスカル。妊娠おめでとう!俺、凄く嬉しいよ!」 


 「その事だが…アンドレ、話があるんだ」 


 アンドレにエスコートされて、病院をでた。 






 「え?俺の前世のアンドレの子供…!?」


 自宅のアパルトマンに帰った後、


 ティータイムで、オスカルは告げた。 


 「ああ。出撃前夜…。

1789年7月12日。私とアンドレは、もう出撃したら死ぬかも知れないと、身体を重ねた。お前の前世だ」 


 「覚えてるよ。あの夜の事は………そうか…235年経って、あの日、結ばれた生命が誕生するんだな…」 


 「これは…奇跡だろうか…」 


オスカルがじっと、サファイアの美しい瞳で夫を見た。 


涙が溢れそうだった。 


 アンドレは微笑みを携え、ゆっくり頷いた。そして、白いロングワンピースの可憐な彼女を後ろから抱きしめる。


 「奇跡なのかな…。俺たちと、お腹のbebe、3人が奇跡じゃないのかな…。

神様が下さったプレゼントだ。

平和なフランスで幸せになるように、と」 


 腕の中でオスカルは、うんうんと小さく頷く。


 「私は……ようやく、女として、母として生きれる。戦争もない、平和なフランスで……。それがどれだけ嬉しいか、アンドレ…判るか……?」


 抱き締められたオスカルが、サファイアの瞳に再び涙を集め、そう夫に言う。 


 「俺が…。俺が、2024年に来たことを後悔させないように、ずっとずっとお前を愛し続けるよ…とこしえに…」 




 今は満月の夜。 


 時空を超えた愛に、


立ち塞がる物は、なに1つもなかった…。











 番外編 へと続く