Les roses que nous rencontrons~
巡り逢う薔薇たち⑤
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🔴こちらは、加筆訂正版です‼️🔴
6月25日
加筆訂正しています。
こちらをお読みくださいませ💖
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2024年 。
8月16日。
仕事が落ち着いたアンドレは、休日を利用し、オスカルと共に
アランが調べてくれたアラス地方へと車で向かった。
車でだいたい2時間はかからない。
真っ赤な、シトロエンでアラスへと車を走らせる。
「私は馬でしか行った事がない。そんなに簡単に行ける世の中になったのだな。早くて心臓がドキドキするぞ」と、
助手席で外の風景ばかり眺めていた。
「オスカル、どう?昔とは違う?景色」
アンドレは安全運転で走りながら彼女に聞いた。
「変わった。街から街の間には、森や草原しかなかったから。今もその景色は残っている所もあるが、馬や馬車が走ってないのが不思議だ」
「そうか…。馬車はもう、80年以上前には使わなくなったかな…。俺の祖母の時代位まで走ってたと思うよ」
オスカルは、彼の祖母、と聞いてこの名前ももしかして同じなのかも、とアンドレにおもむろに聞いてみた。
「アンドレ、お前の祖母の名は、マロン・グラッセというのか?」
「え…!?……そうだけど…え!?それも同じなのか?もしかして」
オスカルはアンドレを笑いながら見つめ
「私の乳母だったんだ」と告げた。
「そして、私が7歳の時、ばあやは8歳のアンドレを、南プロヴァンスから我が屋敷に連れてきたんだ。両親を亡くして、身寄りがばあやしかいないという話だった……。
アンドレ。お前のばあや…いや、祖母はどうしている?」
アンドレは少し黙っていたが、重く口を開いた。
「おばあちゃんは、4年前に亡くなったんだ。両親も早くに亡くした。みんな故居の南プロヴァンスに眠ってるよ」
「……え……。そ…う、なの……か……?」
「そう。一生懸命、俺が大学を卒業するまで働いて支援してくれたんだ。大学院を卒業した時に…不思議な事を言われた」
もうすぐ、休憩地点のロワ、という街に着くと、ナビが知らせた。
「アンドレ。ロワで花束を買ってもいいか?お墓に手向けたい」
「了解!ランチタイムにもなるし、軽く食べようか」
オスカルは1つ頷いた。
ロワはアラスに向かう手前にある街。
観光客が多いのか、可愛い雑貨屋も結構ある。
そんな景色を2人で少し歩き、小さなレストランに着いた。
オスカルの席の隣には、
ジャルジェ家一族用のピンクの薔薇の花束、
夫のアンドレ用の黄色の薔薇の花束、
そして、空墓になっている自分の墓用の白い薔薇の花束も買っていた。
それぞれ、イメージの色が違う。
オスカル自身の墓の花束…?
アンドレが不思議がると、
「眠るアンドレが寂しがらないように、私の墓にも手向けたい。2人は互いに半身同士だったから…だけど…私だけこうなってしまったが…」
と、視線を下に向け、小さく憂いを含んで微笑んだ。
ひとしきり食事を終え、オスカルが初めて見た美しい、薔薇のデコレーションをしたマカロンのデザートも食べると、
オスカルが聞きたい事がある。と彼に言う。
「さっき途中で話が終わったが…お前が大学を卒業した時にばあやから不思議話を聞いた、という所だけれど…」
ああ、とアンドレはミネラルウォーターのグラスを飲み干すと、思い出すように上を見上げた。
「俺が大学を卒業して直ぐに、おばあちゃんから、代々受け継ぐ土地などがあるから、継承して欲しいって言われたんだ。俺の家は昔で言う平民だけど、フランス革命後に当時先祖が勤めていた大貴族の主が、うちの親戚筋を捜し出して、功労に感謝したいと、極秘に色々な遺産を継承したとかで、その継承した土地や、遺産をずっと守ってきていたんだ。
それを俺が大学卒業の時に、将来やりたい事の為に使いなさいと、継承して…不動産会社と輸入品会社を立ち上げたんだよ。
でも、その大貴族、というのが詳しくわからなくて…。わかっているのは、この紋章だけなんだ」
と、アンドレは携帯の写真を見せた。
その写真を覗き込んだ時、
あ!っとオスカルは声を上げてしまった。
「どうした?オスカル」
「これ……。剣を持った青獅子の紋章……」
「ああ。そうなんだよ」
「それは……我が、ジャルジェ家の紋章だ」
「え!?…じゃあ……俺のご先祖が奉公していた大貴族というのは…」
オスカルは、紋章を見つめながら、涙を溢した。
「ばあやに親族がいたのだな…。そして…アンドレ…。お前は私の夫、アンドレ・グランディエの子孫だ。…どうりでそっくりだと思った…」
アンドレからハンカチを受けとると、目頭を拭いた。
「俺が、オスカルの夫の子孫…」
「アンドレ、正直に私は嬉しい。何故この時代に来たのか判らなかったが、私はお前に会えて本当に嬉しい…先に亡くなったアンドレが、
お前と出会わせる為に、私をこの21世紀に連れてきたのかも知れない…」
「オスカル。でも、俺は子孫と言うだけで、この先オスカルを幸せに出きるかどうかは自信がない」
「はは、それはそうだ。血は繋がっていても、顔が似ていても…みな人生は違う。そうだろう?」
オスカルは寂しそうに呟いた。
「では、アラスでお前のご先祖様のお墓参りが出来るな、アンドレも。
私の大切な、代えがたい愛する夫だ。
優しくて、包容力があって…。
それを思えば、お前に似ている。
いや、そっくりだアンドレ」
「そう…かな…?」
「ちなみに聞くが、お前の誕生日は?」
「1990年8月26日」
オスカルはプッと吹き出し、大笑いをした。
「な、なに?」
「そこまで同じとはな…夫と。では今月で34歳か」
「誕生日まで同じなのか?」
オスカルは笑いながら頷く。
「もう…何が起きても驚かない。アンドレ。2024年に来て良かった…。さあ、私の夫のお墓参りに行こう。きっと導かれて私たちはアラスに行くんだ」
アンドレが選んでくれた、裾の長い立体的花刺繍をたっぷり縫い付けた、夏らしいドレスを着たオスカルが立ち上がり、彼を促した。
こんな女性らしいドレスを着たのは、あの舞踏会以来だな。
そう、懐かしく思い出しながら、自然とアンドレの手に手を添えて彼にエスコートされながら、
オスカルは不思議な感覚に包まれて…
2人は真っ赤な、シトロエンに乗り、
アラスへと向かって行った。
続く
2024年6月23日書き下ろし
2024年6月25日修正加筆済み