Soufflé par le vent de Provence~プロバンスの風に吹かれて…③話 最終回



 こちらは↓ 


 改正版 再 連載

 Au-delà de toute la douleur

~いつくもの苦しみを超えて

全7話からの続きのストーリーです。 


 前回の、

改正版 再 連載 Au-delà de toute la douleur

~いつくもの苦しみを超えて全7話からの 

最終回から、その後のお話を書いています。


 小説 プロヴァンスの風に吹かれて
は、


全3話で完結致します

(今回で3話で、最終回です)💖 




 ●バスティーユ戦争の後の、2人を (もしオスカル、アンドレが生き残ったとして…)と、

私なりの物語を妄想してみました。 


 当時のフランス社会は無視してください。 

 オスカルの結核も、アンドレの右目が見えないのも、



この際無し(笑)で、行きます(._.)

ごめんなさい! 

 パラレルです(笑) 


 日本人医師は、あのドラマから来て頂きました!


 南方仁(みなかた じん)jin先生です!


 大好きなドラマでした。 

 もし、先生がフランス革命前後の欧州にタイムスリップしていたら、やはり最新医療を当時の道具で作り出し、最新の技術で人助けをしたんではないかと思いながら 


オスカル、アンドレを託しました。 

 上記の小説の続きです😌💓 

 こちらは3話完結です。


(こちらの小説は、書いた当時に、後日ストーリーのリクエストがあり、もう少し話を書いてみよう、と思い、書きました♥️ラブストーリーです♥️) 



 この作品は、pixivにて2023年9月に書きました。


 アメブロには2024年1月に掲載しました が、

今回、改めて一部訂正、加筆しました。


 2024年3月から、Xや、pixivのDMにて、たくさんの方々からリクエストがあり、

再度、改正版を連載させて頂きます♥️ 



 皆様、誠にありがとうございました♥️




 では、どうぞ〰️✨ 





 ~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~






1793年。




  10月16日午後 



 マリー・アントワネットが処刑されたと、

オスカル、アンドレが住む南プロバンスの小さな港町に伝令が付いたのは、


翌日、朝早くの事。


 


 その前に。 




 ルイ16世の裁判が国民公会で行われ、

死刑判決を経て、 

1793年1月21日にギロチンにて処刑された。 



 一方、アントワネットの裁判は革命裁判所で行われ、死刑判決を経て


 遂に…10月16日に処刑された…。




 アンドレが勤めている新聞社でも号外が発行され、翌朝にはこの小さな街でも、

アントワネットの処刑の話で市民は盛り上がっていた。 






 オスカルは。



 1793年7月14日 


 奇しくもフランス革命と呼ばれる日に、 

アンドレの村で二人目の子を産んだ。


 高齢出産だったが、jinの弟子の医師に付いてもらい、陣痛から数時間で生まれた安産であった。 


 真っ黒なアンドレパパと同じ髪の男の子。 


 オスカルの念願だった黒髪の男の子。


 名前は カミーユ Camilleと名付けられ、

オスカルは溺愛した。 





 話は少し遡る。 

 カミーユが生まれる少し前。


 jin先生が、巡回講演でこの街に再び戻って来た時に、オスカルの父君レニエ・ド・ジャルジェからの手紙を携えていた。


 内容はマリー・アントワネット様の奪還計画を立てたが、アントワネット様ご本人が拒否をされ、最後の王妃として最後まで判決を待つ、と言われ…何も出来ぬまま、アントワネット様は断頭台に立つご覚悟をされておられる。


 と走り書きで書かれていた事と。 


 このフランスではもう、ジャルジェ家はなくなったも同然だ、と書かれていた事と。


 オスカル、アンドレ、孫のミッシェルの肖像画が今は私の家宝だと…。


 孫や、娘達に逢いたい。


 と、弱気な筆跡で手紙が締めくくられていた事…。 


 オスカルは、父上の苦しい胸の内が手に取る様に判り、数日間、気持ちが塞いでしまい、アンドレがずっと傍に付き添ってくれていた。



 その数日後に、

長男カミーユが、あの革命の日に、まるで運命のように産まれたのだ。


 その後の父上の消息は、全く判らなくなった。








 カミーユが生まれて、3ヶ月。



 ミッシェルの時と同じように、村で暫くオスカルと赤子のカミーユと、

3歳半になったおしゃまなミッシェル三人は

村人達の助けを借りながら、子育てをしている。



 結局。 

父上とは、連絡も取れぬまま。


 再会も出来ないままだった。


 今、どちらにおられるのだろう…。


 そのままノルマンディーにおられるのか…。

 姉君夫婦を頼って、海外に向かわれていればいいのだが…。 



 子育てをしていても、ふと、どうしても気になってしまう。


 アンドレも、ノルマンディーに向かった新聞社の記者にそれとなく探してもらっていたが、


 結局…後日わかった事は。 


 ノルマンディーの別荘は、誰もいなかった。


と、言う事だった。






 秋も深まり。 





 もうすぐ冬が来る。





 カミーユの離乳食がそろそろ始まるので、村を下りて、港町で、アンドレ1人にさせているアパルトマンに帰る用意を始めていた。



 アンドレが、2人の子育てをオスカル1人でさせるのは大変だからと、仕事の付き合いで知り合った、職業紹介所から、貴族の屋敷で働いていたと言う侍女経験豊富な女性2人を雇ってくれた。



 初対面の日。


 その女性2人は、オスカル・フランソワの名を聞くと驚き、喜んだ。


 数年前まで、ジャルジェ家に侍女として奉公していた、2人だったからだ。




 フランス革命後に、ジャルジェ将軍から退職金を貰い、2人とも実家が近いこの港町の近隣で、裕福な家庭の侍女として働いていたのだ。



 「エレンと、マリー…。何年ぶりだろうか。まさかこの港町に近い場所にいたとは知らず…」


 オスカルは、慣れた手付きで嬉しそうに身の回りの世話をしてくれる、懐かしい2人に呟いた。


 エレンが 


「1789年7月13日に、オスカル様とアンドレがお屋敷を出られて、フランス革命が起きて、お二人の行方が判らなくなって…

もう…あの時は私達は悲しみに暮れました。

まさかアンドレ…いえ、アンドレ様とご結婚なされて、南プロバンスにお住まいだったとは知らず…。私達も驚きました!」 


 「すまないエレン、マリー。私たちは、国王派を裏切り、市民側に付いて戦って、2人とも大怪我をしていたので匿われていたんだよ。

傷が癒えた後、アンドレの故郷に来て、ここで結婚式を挙げたんだ。

今は私は貴族でもなんでもない。

ただの市民として静かに暮らしているよ」


 「そうだったのですね…。ああ!でもお子様もお産まれで!ミッシェル様はオスカル様にそっくりで美しく…。カミーユ様はアンドレ様に本当にそっくりで…」 

少し涙ぐむマリーを見て、微笑む。


 「もう、子供にまで様は付けないで。貴族じゃないから。お願いするよ?」 


「畏まりました。でもご主人のオスカル様とアンドレ…は、様をお付けしてお呼びさせて頂きます」


 侍女2人は深々とオスカルに挨拶をした。


 2人は、フランス革命の数ヶ月後に屋敷を出て、プロバンスに戻ってきていた。



 離乳食になってから、カミーユの世話を出来るだけ自分が行い、助けを借りるときは、侍女達に任せ、

オスカルは家庭教師と、バイオリン講師に専念をする事が出来た。


 マリー、エレンのお陰だ。


 じっとしていれば、断頭台に立たれた王后陛下マリーアントワネット様をどうしても思い出してしまう。 


新聞に描かれていたあの残酷な風刺絵を…。


 それがオスカルには苦し過ぎた。 


 彼女のため息の数が増えたのを、アンドレは知っていた。 


顔もいくぶん暗くなっているのが気がかりだった。 






 「オスカル…」 


 「ん…?」 


 昼間のあの窓辺で、美しいプロバンスの海を眺めていたオスカルに声を掛ける。


 「馬を借りて、あの海岸沿いを走らないか?久しぶりに」 

オスカルは、驚いた顔で夫を見上げた。


 「ちゃんとお医者様からオスカルの身体の事は許可を頂いたよ。思い切り走らなければ大丈夫だって」 


 「アンドレ…」


 「何年ぶりかな?海辺で馬を走らせるのは。ノルマンディーで早駆けをした以来だな。馬にはしょっちゅう乗るけど、ゆっくりだし…」


 「ありがとう、アンドレ」


 「よし、そう決まったら今から行こう!」 


 アンドレはオスカルに男装の服一式と、シルクのコートを渡した。







 ここプロバンスに来て、いつも遠くながめていた海が、目の前にある。





 雲間から太陽の光の橋が数本海に下りていて、幻想的な美しさ。 


 そして。


 潮の香りは、昔を思い出しとても懐かしい。


 「あまり早く走らせるなよ、オスカル」 


 「わかってる…はっ!」

 馬の腹を軽く蹴り、オスカルは少し早足で馬を走らせた。


 走らせながら、今までの自分の人生が走馬灯のように眼前に現れる気がした。





 幼い頃に2人は出会い。 


 色んな悪戯や、一緒に勉強した事。


 近衛隊に入り、貴族社会の腐敗も知り。


 フェルゼンに恋をして、想いを断ち切る為にドレスを着た事。


 アンドレの左目を失わせた事。 


 ずっと傍にいて自分を愛してくれていたアンドレに気づかず、彼を苦しめた事。


 父上に刃を向けられた時、アンドレが必死に自分を守ってくれた事。


 ようやく自分がアンドレに深い愛情を持っている事に気がつき…結ばれた。



 パリへの出動命令が出た夜2人は夫婦になると誓い、翌朝、出撃し、アンドレが撃たれ… 


 翌日、自分も何発も銃弾を浴び…


 私もアンドレも、奇跡に導かれ命を救われた。



 そして。 




 貴族を棄て、愛するアンドレと一生涯生きると決めた。 



 プロバンスに来て愛する子供たちにも恵まれ…。







 そしてぷつりと、脳裏に浮かんでいた映像は消えた。 





 「アンドレ…アンドレ…!!」 



 海岸沿いを走るオスカルは、馬を止めた。 



 すぐ後ろで走っていたアンドレの耳に、彼女が自分の名を呼ぶ声が微かに聞こえて、

 馬から降りて、馬上のオスカルに近づく。 



 「どうした?オスカル?」 


 オスカルは顔を上げ、涙を流していた。 


後から後から、

蒼く美しい眼に涙が溢れていた。


 「オスカル…」


 「アンドレ……。私は幸せになってもいいのだろうか…」


 「…え?…」

 オスカルは馬上で天空を見上げながら呟く。



 「国王陛下も王后陛下もお亡くなりになられ…。母上も亡くなられ…。父上は行方知れず…姉上たちは海外に逃亡せざるを得なくなり…。衛兵隊の部下たちも大勢死んだ。

アランもいまどうなっているか…。

皆、苦しみの中にいるのに…

私は…私は……私だけ…幸せになってもいいのだろうか……」


 アンドレは、馬上で泣いているオスカルに両手を広げ


 「降りておいで」 

と促した。


 「アンドレ…」

 飛び降りるようにオスカルはアンドレの腕の中に入り込み、

嗚咽をあげて泣いた。


 「オスカル…俺たちも充分苦しんだろう?あんな銃弾を浴びて、何ヵ月も痛い思いをして。苦しみのない人生なんて、あるもんか」 

涙で潤んだオスカルの瞳を、頬を持って覗き込みアンドレは静かに優しく口づけた。

 まるで安心させるように。


 「アンドレ…」


 「馬を走らせてたら、色んな事を思い出して、辛くなったんだろう?ん?」


 「……そうだ……」 


 「オスカル、人生の苦しみを全て分かち合う。そう結婚式の時に誓ったよな?」

 オスカルは、一つ頷いた。 


 「俺たちは逃げたんじゃない。生かされたこの命を全うする為に、この南プロバンスに来たんだ。いいか?オスカル…自分を責めてはだめだ。お前は小さな時から、我慢強い女の子、そして女性だった。それが俺には眩しかった…」


 「生かされた命…」 


 「そうだよ。生かされ、そしてミッシェルと言う天使が舞い降りた。カミーユだってそうだ」


 「私たちの子供達…」 


オスカルはアンドレの背中に腕を回し、きつく抱き締める。

 温かい夫の胸…。 

広くて…たくましくて…。


 いつも私を包んでくれる……生涯の夫…… 


 アンドレはオスカルの呟きをずっと聞いていた。 


 「オスカル…俺たちは幸せになっていいんだ。子供たちと一緒に、家族4人で、俺たちなりの幸せな生き方を見つけていこう」 


 「………」 

抱きついているブロンドがプロバンスの海風に揺れている。


 オスカルの美しいブロンドは腰の辺りまで伸びている。


その長く陽に煌めく髪は、

まるで絵画に描かれた神話の女神のように風に流されている。


 「わかった?オスカル。返事をしろ」


 顔をあげた妻は、もう泣いてはいなかった。

 それは未来を見据える瞳。


 過去はこの海風に流されていったような、まるで。決意をしたようなオスカルの瞳。



 「アンドレ…」 


 「うん?」 


 「お前となら、いや。お前と子供たちと…私は幸せに生きる。……生きたい…」 


 その台詞に、アンドレは笑った。


 「だったら、もう俺たちは幸せになってるよ。そうだろう?」

 オスカルの耳元で囁きオスカルが、ふっと笑ったその唇に、そっと口づけた。


 「お前の不安は、俺が全て引き受ける。これから先も、だ。わかった?」


 「………アンドレ、ありがとう。…私の優しい夫………」 

 今度はオスカルから口づけてきた。


 「さあ、帰ろう。もうすぐ夕刻だ。今日は、子供たちと、エレンとマリーも一緒に夕食をしよう。今年のノエルの飾り付けの話をみんなで決めようと思ってたんだ」


 「ノエルの飾り付け?楽しそうだな。お前は楽しい事を考えると止まらないからな、昔から」


 そういってオスカルは馬に乗った。


 アンドレも馬に乗り、 

 「だんだん、冷えてきた。今夜の夕食は何かな?さあ、帰るぞ、オスカル」


 「ああ」 


 2人は、馬を走らせ、家路に向かっていった。










 その後。



  ミッシェルは、17歳でイタリアの大学に入り、 

医師ではなく、画家兼、独特で洗練されたファッションデザイナーとして独立し、

父、アンドレのような男性と結婚をし、3人の子供を授かった。 



 カミーユは、プロバンスで大学を出た後、アンドレが勤めていた新聞社に入社した。 


そして、アンドレが生まれた村の娘と結婚をし、1人娘を授かり、それはそれはオスカルにそっくりな美しい娘だった。


 オスカルとアンドレ。


 50歳を過ぎても、いつまでも若々しく、

プロバンスに来た時と全く変わらず、人が羨む程の美男美女の夫婦として、時折来る孫達の世話を楽しそうにしていた。



 端から見れば、孫ではなく、


 お子様ですか?なんて可愛らしい!

と、言われアンドレとオスカルは、嬉しそうに微笑みを絶やさなかった。


 もう2人には、苦しみも辛さもない。



 美しい南プロバンスの陽気な明るさの中で優しい海風に吹かれながら笑顔でずっと生きていく。




 この先も愛を育みながらずっと二人で……。





 愛する2人で……









 fin