~いつくもの苦しみを超えて①…~
リクエストありがとうございます!
改正版 再連載致します!♥️
バスティーユ戦争の後の、2人を
(もしオスカル、アンドレが生き残ったとして)
これは、私の願望ですが。
私なりの物語を妄想してみました。
なんか無性に書きたくなり…。
一話では終わりそうにないので、連載中の小説と平行して、少しずつ書いていこうと思います。
当時のフランス社会は無視してください。
オスカルの結核も、アンドレの右目が見えないのも、
この際無し(笑)
で、行きます(._.)
ごめんなさい!
パラレルです(笑)
日本人医師は、あのドラマから来て頂きました!
注)
この小説は2023年9月にpixivにて、連載した小説です。
また、アメブロでは2024年1月18日からショートストーリーとして、連載させて頂きました。
2024年3月…から、ちらほらと
なんと
Xや、pixivのDMから、
もう一度、読みたいんです‼️という、たくさんのメールを頂きましたので、
改めて、アメブロにこの物語に関連する小説を、連載させて頂きますね✨
ありがとうございます♥️
では♥️ どうぞ〰️✨♥️
~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨
右肩の激痛で目が覚めたのは、あの日から4日後の事。
それは7月18日。
あの日。
7月14日。
バスティーユ攻撃中にオスカルは右肩と腹部左側を撃たれ、身を挺してオスカルをかばったアランも左腕に深手を負った。
オスカルは撃たれた後、激しい痛みに意識を失い
ベルナール、ロザリーに匿われた。
そして。
オスカルの隣のベッドには、
左肩と腕を撃たれ、一時出血多量で危篤まで陥ったアンドレが少し青白い顔で寝ている。
オスカルもアンドレ、アランも、
たまたまオランダから私用でパリに来ていたと言う外科の名医と、その弟子の東洋人の医師が、
体内の銃弾を抜く外科手術をし、3人とも一命を取り戻した。
撃たれた直後にその医師たちは、ベルナール達によって運ばれた、とあるアパルトマンで
被弾したアンドレ、そして翌日にはオスカルとアランの最新の技術的な手術を成功させて、命を救ったのだ。
そのお陰で、
アランは、8月初めには動けるようになり、
国王派に反旗を翻し、謀反人扱いとなってしまったオスカルの意思を継ぐように
新たに作られた、
フランス国民衛兵部隊に入隊した。
オスカルは7月18日に激痛で意識を回復し、
ベルナールやロザリーから事情を聞いた。
オランダから外遊に来ていた医師 、
オランダではかなりの名医と言われている、
マールテン・ホッタイン先生と言う方とその弟子が、最新技術で、3人の外科手術を行い、成功した事。
また、しばらくはオスカルとアンドレの治療を行ってくれる事を。
「アンドレは…」
目覚めたあの日。
真っ先に口に出た言葉。
アンドレが撃たれた後、オスカルは、ベルナール達に彼を戦地から離して、どんなに酷くても
怪我の治療をして欲しい。
アンドレの命を頼む。
そう、涙ながらに懇願し、残された隊員達と翌日
あのバスティーユ攻撃をしたのだった。
横並びの簡易ベッドで2人は治療をされていた。
特にアンドレは、撃たれただけではなく、弾が腕の骨を砕いた為、2人の医師から、骨折の手術もされていた。
そして、オスカルとアンドレが治るまで、治療を続けてくれると約束してくれた。
「アンドレ…」
先に治療を終えて、まだ痛む右肩を支えながら、
ロザリーが用意してくれた簡素なパリの女性の服に着替え、まだ身動きし辛いアンドレの腕、胸に巻かれた包帯にゆっくりと指を添えた。
アンドレがうっすら意識を取り戻したのは、
8月の半ばに近かった。
「アンドレ…!」
オスカルは、彼の黒曜石のような瞳をじっと見つめ、涙が止まらなかった。
「アンドレ…良かった…ああ…良かった…」
「…スカル……?」
オスカルは、右肩の痛みも忘れ、目覚めたアンドレにしがみついた。
様子を見ていたロザリーが、アパルトマンの3階に仮に宿泊しているマールテン・ホッタイン医師達に、アンドレが目覚めた事を知らせに向かい、
医師達は降りてきて、アンドレの診察を始める。
不安で胸いっぱいのオスカルが、終始様子を見ていた。
「先生…アンドレは…」
「ふむ……外科手術は成功しています。消毒も毎日欠かさずしましたので、感染症もありません。が、人間、寝たきりを1ヶ月以上続けますと、足の筋肉が衰えますのでまずは、少しずつ歩く事。そして食べる事。これが優先順位です。ロザリーさん」
「は、はい」
「お願い出来ますか?」
「はい!畏まりました」
「アンドレ…もう大丈夫だ…」
「オスカル…。その腕は…?」
「お前が撃たれた翌日に、バスティーユ攻撃で私も撃たれた。でも大丈夫だ。お前ほどじゃない」
「本当か?」
「本当だ」
オスカルは、ロザリーが剃ってくれたアンドレのツルツルした頬を撫で、口づけた。
「不躾だが、お二方は軍人ですか?」
医師が問う。
「はい。私は女性ですが軍人の父の意向で男性として育てられ、軍人となりました。オスカル・フランソワと申します。この者は、私と幼い頃から一緒に育った従僕…いや。今は夫の、アンドレと申します」
「…そうですか…。そしてあなた方は市民側につき、撃たれた…」
「はい…」
医師は2人のそれ以上の事は聞かなかった。
見ればわかる。
軍人貴族の令嬢と、従僕が愛し合い、反旗を翻して市民達と共に戦い、
そしていま
ここに居るのだと。
「先生…私達の治療費をお支払いしなければなりません」
オスカルがそう言うが、戦地で負傷している自分の手元にはお金もない事に気がついた。
ロザリーが慌ててオスカルに告げる。
「オスカル様。先日、私、オスカル様とアンドレの事を伝える為にお屋敷に向かいました」
「…え…!?皆、無事なのか?」
「はい。ただ…」
「どうした?」
「パリでの戦闘の話が7月14日の夕刻には、お屋敷に伝わって、オスカル様とアンドレが戦闘の最中、行方不明になって、どうなったのかわからない事に心傷めたアンドレのお婆様が…既に急死されたと伺いました」
「お…おばあちゃんが…!?」
「はい…。そして私は、執事様とジャルジェ婦人にお会いしまして、お二人の状況をお話致しました。
その時に、ジャルジェ婦人から受け取ったものと、執事様から預かったものがありました…」
ロザリーは、2つの大きめなトランクをベッドの傍に置き、封筒をオスカルに渡した。
2つのトランクは、オスカルとアンドレの為に用意された、最低限の必要な衣類と、身分証明書、婦人からの託された金塊、お金、懐中時計、
そして。2人分の指輪と、お揃いのクロスと、真鍮のマグダラ・マリアのペンダントが2人分。
2人への御守りとして…と、婦人からの思いがひしひしと伝わる贈り物だった。
そして
オスカルが近衛時代から貯めていたお金を母親に預けていた、その銀行への母からの証明書とサイン。
空欄には、オスカルのサインをするように、とメモ書きで記されていた。
この時代。
銀行が果たして機能しているのかどうかもわからない。
だが、ジョルジェット婦人は、出来るだけ早くオスカルとアンドレの手元に
何処かへ行くならその支度金をと、必死に動いてくれていた。
ロザリーは続けた。
「婦人は、オスカル様とアンドレのご結婚を早くして欲しいと…。2人とも生きているなら、必ずそうして欲しいと…。これは、旦那様も同意されたそうです」
「父上が…?まさか」
「旦那様は、2人はもう行方不明と言う事にして、安全な場所まで行って欲しいと。それが、両親としての最後の願いだと。もう、貴族も平民も関係ない世の中になる日も近いだろうから…と…」
「旦那さまが…!?」
そして、ロザリーは、この動乱の中、ジャルジェ家と取り引きをしている銀行に出向き
オスカル様が身動き出来るようになったら、
避難しているこのアパルトマンまで来て頂き、
オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェの口座の確認をして欲しいと銀行の支配人に事情を話し、頼んだ事を、
オスカルに伝えた。
「オスカル・フランソワ様」
マールテン・ホッタイン医師が口を開いた。
「貴女は…いえ、あなた方はフランスの英雄です。そんな方に、治療費を頂く訳にはまいりません」
「ですが…」
「ここにいる、私の弟子として一緒に動いていてくれている東洋人の医師が、素晴らしい技術を私に教えてくれているんです。私は彼の医療技術を広める為に外遊しているだけなのです。お礼ならお言葉だけで充分です。彼に労いの言葉をかけてあげて下さい」
オスカルと同じ位の身長の東洋人医師が、頭を下げた。
「ムッシュー。フランス語はお分かりか?」
オスカルが訪ねると、屈託のない笑顔で
「私はフランス語、オランダ語、ドイツ語、英語は話せます。あと母国の日本語も」
「…日本…?あの極東の?」
オスカルは西洋の服を着こなしている日本人医師をしげしげと見つめた。
アンドレと同じ、黒い髪、黒い瞳。
だが、何かの絵で見たような「髷」と呼ばれる髪型ではなく、髪はアンドレより短い。
「ムッシュー…私たちや、アランを助けて頂いて本当にありがとうございます。心よりお礼を申し上げます」
「いえ、もう少し遅かったら、お二人の命は本当に助かりませんでした。生きたいと言うお二人の思いが、あなた方の命を救ったんです。私はそれに協力したまでです」
日本人医師は、にこにこと笑い、頭を掻いた。
マールテン・ホッタイン先生が続けた。
「あと、3ヶ月くらいは様子を見た方がよいとの彼の見立てもありますので、私たちは、フランスにしばらく滞在し、戦争の怪我人の治療もしたいと思います。もちろんお二人も看させて頂き、完治をしましたら、次の国へと外遊に回ろうと思っています」
「本当ですか!?先生…」
ロザリーは涙を流し、感謝を述べた。
「アンドレ…良かったな…。まだまだやらなければならない事はたくさんあるが、私たちが完治するまで看て下さる。私は本当に嬉しい。お前が前の様に身体が戻ったら………私はお前と教会で結婚式をあげたい…」
「ああ…。約束だからな…」
オスカルは静かに日本人医師に手を差し出した。
「右手は三角巾をしている。左手ですまないが、お礼の握手をしたい…」
「もちろんです。オスカル様」
医師はオスカルと固く手を握った。
「ところで…貴殿のお名前は…」
医師はニコリと笑い
「南方仁……jin-minakata …と、申します」
そういって、マールテン・ホッタイン先生と部屋を出ていった。
②に続く